サクビトリル/バルサルタンの関連有害事象と投与中止との関連性は?(日本コホート研究; REVIEW-HF登録; J Cardiol. 2023)

photo of houses 02_循環器系
Photo by Evgeny Tchebotarev on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

日本人におけるサクビトリル/バルサルタンによる有害事象の発生頻度は?

サクビトリル/バルサルタンを投与された心不全患者の特徴、忍容性、転帰について、日本人におけるデータは不充分であり、未だ不明な点が多い。

そこで今回は、サクビトリル/バルサルタンを心不全治療薬として新規に処方された患者の特徴と転帰を評価するために実施された全国規模の多施設共同研究(REVIEW-HF)の結果をご紹介します。

3ヵ月後のサクビトリル/バルサルタンに関連する有害事象(AE)が解析されました。有害事象は低血圧、腎機能悪化、高カリウム血症、血管浮腫と定義されました。さらに、有害事象と転帰との関連についても検討されました。

試験結果から明らかになったことは?

993例中、平均年齢は70歳で、291例(29.3%)が女性であり、22.8%が左室駆出率≧50%でした。このうち、20.8%が収縮期血圧<100mmHg、19.5%がベースライン時の推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/min/1.73m2であり、これらはランドマーク試験の対象から除外された集団でした。

サクビトリル/バルサルタンに関連した有害事象は3ヵ月時点で22.5%の患者に認められました。全体として22.6%の患者がサクビトリル/バルサルタンを中止し、低血圧が薬剤中止の原因となった最も一般的なイベントでした。

調整後、心不全の症状が悪化した患者(NYHA IIIまたはIV)、収縮機血圧<100mmHg、eGFR<30ml/min/1.73m2の患者はサクビトリル/バルサルタンに関連した有害事象のリスクが高いことが示されました。さらに、有害事象を経験した患者は、有害事象を経験しなかった患者よりも心血管死やHF入院のリスクが高いことも明らかとなりました。

コメント

高血圧、心不全治療薬の中では比較的新しい薬剤サクビトリル/バルサルタンの実臨床データは充分ではありません。

さて、日本のコホート研究の結果、サクビトリル/バルサルタンはランドマーク試験に適格でない患者(収縮期血圧<100mmHg、eGFR<30ml/min/1.73m2)にも処方されており、投与開始直後から比較的高い確率で有害事象が観察されました。また、相関関係が示されたに過ぎませんが、心不全の症状が悪化した患者(NYHA IIIまたはIV)、収縮機血圧<100mmHg、eGFR<30ml/min/1.73m2の患者においては、サクビトリル/バルサルタンに関連した有害事象のリスクが高く、さらに有害事象を経験した患者では、有害事象を経験しなかった患者よりも心血管死やHF入院のリスクが高いことも明らかとなりました。

心不全治療において、多くの薬剤が使用できることから、どのような患者でサクビトリル/バルサルタンのリスク・ベネフィットが最大化するのか、他の交絡因子として何が挙げられるのかなど、更なる検証が求められます。

続報に期待。

concept image with a question on a sticky note against green hedge

まとめ:日本のコホート研究の結果、サクビトリル/バルサルタンはランドマーク試験に適格でない患者にも処方されており、投与開始直後から比較的高い確率で有害事象が観察された。

根拠となった試験の抄録

背景:サクビトリル/バルサルタンを投与された心不全患者の特徴、忍容性、転帰について、日本では未だ不明な点が多い。

方法:サクビトリル/バルサルタンを心不全治療薬として新規に処方された患者の特徴と転帰を評価するため、全国規模の多施設共同研究を実施した。3ヵ月後のサクビトリル/バルサルタンに関連する有害事象(AE)を解析した。有害事象は低血圧、腎機能悪化、高カリウム血症、血管浮腫と定義した。さらに、有害事象と転帰との関連を検討した。

結果:993例中、平均年齢は70歳で、291例(29.3%)が女性であり、22.8%が左室駆出率≧50%であった。このうち、20.8%が収縮期血圧(sBP)<100mmHg、19.5%がベースライン時の推算糸球体濾過量(eGFR)<30ml/min/1.73m2であり、これらはランドマーク試験の対象から除外された集団であった。サクビトリル/バルサルタンに関連したAEは3ヵ月時点で22.5%の患者に認められた。全体として22.6%の患者がサクビトリル/バルサルタンを中止し、低血圧が薬剤中止の原因となった最も一般的なイベントであった。調整後、HFの症状が悪化した患者(NYHA IIIまたはIV)、収縮機血圧<100mmHg、eGFR<30ml/min/1.73m2の患者はサクビトリル/バルサルタンに関連したAEのリスクが高かった。さらに、AEを経験した患者は経験しなかった患者よりも心血管死やHF入院のリスクが高かった。

結論:日本では、サクビトリル/バルサルタンはランドマーク試験に適格でない患者にも処方されており、投与開始直後から比較的高い確率でAEが観察された。医師は、特にAEリスクが高いと予想される患者において、これらの事象について患者を注意深く監視すべきである。

キーワード:有害事象、アジア、駆出率維持心不全、駆出率低下心不全、サクビトリル/バルサルタン

引用文献

Relevant adverse events and drug discontinuation of Sacubitril/valsartan in a real-world Japanese cohort: REVIEW-HF registry
Shingo Matsumoto et al. PMID: 38000538 DOI: 10.1016/j.jjcc.2023.11.005
J Cardiol. 2023 Nov 22:S0914-5087(23)00276-9. doi: 10.1016/j.jjcc.2023.11.005.Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38000538/

コメント

タイトルとURLをコピーしました