抗利尿ホルモン分泌不全症候群に対する尿素の効果は?(系統的レビュー; JAMA Netw Open. 2023)

sodium chloride next to a pond and a wheelbarrow 07_腎・泌尿器系
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抗利尿ホルモン不適合分泌症候群に対する “尿素” の効果は?

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は、特定の不適切な状況下での下垂体による抗利尿ホルモン(バソプレシン)の放出量が過多となることで体液が保持され、血中ナトリウム濃度が希釈されて低下します。低ナトリウム血症が引き起こされると、動作や反応が緩慢になり、さらには錯乱が現れてしまいます。低ナトリウム血症が進行すると、筋肉のひきつりやけいれん発作が発生して無反応状態に進行してします。

低ナトリウム血症とSIADHは、重大な死亡率と罹患率を伴うことから、迅速な治療が求められます。SIADHに対する経口尿素の効果が報告されていますが、その有効性と安全性については充分に検証されていません。

そこで今回は、SIADHに対する尿素の有効性と安全性を評価するために実施された系統的レビューの結果をご紹介します。

本試験では、成人患者におけるSIADHに対する尿素の対照研究および非対照研究について、MedlineおよびEmbaseの系統的検索が行われました。本試験の主要アウトカムは治療後の血清ナトリウム濃度でした。副次的アウトカムには、浸透圧脱髄症候群(ODS)患者の割合、頭蓋内圧、および入院期間などの資源利用が含まれました。

試験結果から明らかになったことは?

537例のSIADH患者を含む23件の研究が対象となり、そのうち462例が尿素による治療を受けました。プールされたベースライン平均血清ナトリウムは125.0mmol/L(95%CI 122.6〜127.5)でした(基準値:135~150mmol/L)。経口尿素による治療期間の中央値は5日間でした。

血清ナトリウム濃度
全体平均9.6mmol/L(95%CI 7.5〜11.7
 24時間後平均4.9mmol/L(95%CI 0.5〜9.3

尿素は血清ナトリウム濃度を平均9.6mmol/L(95%CI 7.5〜11.7)増加させました。24時間後の血清ナトリウム濃度の上昇は平均4.9mmol/L(95%CI 0.5〜9.3)でした。

有害事象は少なく、主に味覚異常や味覚障害であり、浸透圧脱髄症候群(ODS)の症例は報告されませんでした。

資源利用については、報告頻度が低すぎたため、まとめることができませんでした。

コメント

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は低ナトリウム血症を呈し、死亡リスクの高い疾患です。治療としては、水分摂取の制限やトルバプタンによる低ナトリウム血症の是正ですが、患者負担が少なく、より安価な治療法が求められています。

さて、系統的レビューの結果、SIADHに対する尿素の使用は、血清ナトリウム増加において有効かつ安全である可能性が示唆されました。

より質の高い前向き研究の実施が求められます。

続報に期待。

man drinking on white plastic cup while sitting

✅まとめ✅ 系統的レビューの結果、SIADHにおける尿素の使用は、血清ナトリウム増加において有効かつ安全である可能性が示唆された。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:低ナトリウム血症と抗利尿ホルモン不適正分泌症候群(SIADH)は、重大な死亡率と罹患率を伴う。SIADHに対する経口尿素の有効性と安全性についてはまだ議論がある。

目的:SIADHに対する尿素の有効性と安全性を評価すること。

エビデンスレビュー:成人患者におけるSIADHに対する尿素の対照研究および非対照研究について、MedlineおよびEmbaseの系統的検索を行った。
主要アウトカムは治療後の血清ナトリウム濃度であった。副次的アウトカムには、浸透圧脱髄症候群(ODS)患者の割合、頭蓋内圧、および入院期間などの資源利用が含まれた。

所見:537例のSIADH患者を含む23件の研究が対象となり、そのうち462例が尿素による治療を受けた。プールされたベースライン平均血清ナトリウムは125.0mmol/L(95%CI 122.6〜127.5)であった。経口尿素による治療期間の中央値は5日間であった。尿素は血清ナトリウム濃度を平均9.6mmol/L(95%CI 7.5〜11.7)増加させた。24時間後の血清ナトリウム濃度の上昇は平均4.9mmol/L(95%CI 0.5〜9.3)であった。有害事象は少なく、主に味覚異常や味覚障害であり、ODSの症例は報告されなかった。リソースの使用については、報告頻度が低すぎたため、まとめることができなかった。

結論と関連性:SIADHにおける尿素の使用に関するこの系統的レビューでは、ランダム化臨床試験がないにもかかわらず、尿素が有効で安全かつ安価な治療法である可能性を示唆する質の低いエビデンスが同定され、さらなる検討が必要である。

引用文献

Use of Urea for the Syndrome of Inappropriate Secretion of Antidiuretic Hormone: A Systematic Review
Ralph Wendt et al. PMID: 37902751 PMCID: PMC10616719 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.40313
JAMA Netw Open. 2023 Oct 2;6(10):e2340313. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.40313.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37902751/

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