重症SARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーになる?(集団ベース研究; Sci Rep. 2023)

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重症SARS-CoV-2感染と未診断がんとの関連性は?

SARS-CoV-2感染者において、罹患後にがん発症リスクが増加する可能性が報告されています。しかし、重症SARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーとなるかどうかを検討した研究はありません。

そこで今回は、SNDSデータベースを用いて、2020年2月15日から2021年8月31日までに、SARS-CoV-2で集中治療室に入院した41,302例(ICU-gr)と、SARS-CoV-2で入院していない713,670例(C-gr)を同定し、重症SARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーとなるかどうかを検討した集団ベース研究の結果をご紹介します。

出生年、性別、フランスの診療科でマッチさせました。追跡期間中(指標日~12/31/2021)のがん罹患率を、マッチング変数、社会経済的特性、併存疾患で調整したCox比例ハザードモデルを用いて両群で比較しました。

試験結果から明らかになったことは?

SARS-CoV-2で集中治療室に入院した(ICU-gr)群では2.2%(n=897)がその後数ヵ月間にがんと診断されたのに対し、SARS-CoV-2で入院していない(C-gr)群では1.5%(n=10,944)でした。

調整ハザード比 aHR
ICU-gr群 vs. C-gr群
退院後にがんと診断されるリスクaHR 1.31
(95%CI 1.22〜1.41
退院後にがんと診断されるリスク
(死亡の競合リスクを考慮した場合)
aHR 1.25
(95%CI 1.16〜1.34
 腎臓がんaHR 3.16
(95%CI 2.33〜4.27
 血液がんaHR 2.54
(95%CI 2.07〜3.12
 結腸がんaHR 1.72
(95%CI 1.34〜2.21
 肺がんaHR 1.70
(95%CI 1.39〜2.08

ICU-gr群ではC-gr群に比べて退院後にがんと診断されるリスクが1.31高いことが示されました(aHR 1.31、95%CI 1.22〜1.41)。死亡の競合リスクを考慮しても、全体的に同様の傾向がみられました(aHR 1.25、95%CI 1.16〜1.34)。

腎臓がん(aHR 3.16、95%CI 2.33〜4.27)、血液がん(aHR 2.54、95%CI 2.07〜3.12)、結腸がん(aHR 1.72、95%CI 1.34〜2.21)、肺がん(aHR 1.70、95%CI 1.39〜2.08)に関しては、有意に高いリスクが認められました。

コメント

SARS-CoV-2感染と、がん発症リスクとの関連性が報告されています。重症SARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーとなる可能性が報告されています。

さて、集団ベース研究の結果、重症SARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーである可能性が示唆されました。特に腎臓がん、血液がん、結腸がん、肺がんについては、有意に高いリスクが示されました。

ただし、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。そもそも、未診断のがん患者でSARS-CoV-2感染後に重症化しやすい可能性もあります。また、ワクチン接種により、がん発症リスクが低下するのかについても不明であることから、更なる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 集団ベース研究の結果、重症SARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーである可能性が示唆している。

根拠となった試験の抄録

背景:重症のSARS-CoV-2感染が未診断がんのマーカーとなるかどうかを検討した研究はまだない。

方法:この集団ベースの研究では、SNDSデータベースを用いて、2020年2月15日から2021年8月31日までに、SARS-CoV-2で集中治療室に入院した41,302例(ICU-gr)と、SARS-CoV-2で入院していない713,670例(C-gr)を同定した。出生年、性別、フランスの診療科でマッチさせた。追跡期間中(指標日~12/31/2021)のがん罹患率を、マッチング変数、社会経済的特性、併存疾患で調整したCox比例ハザードモデルを用いて両群で比較した。

結果:ICU-gr群では2.2%(n=897)がその後数ヵ月間にがんと診断されたのに対し、C-gr群では1.5%(n=10,944)であった。ICU-gr群ではC-gr群に比べて退院後にがんと診断されるリスクが1.31高かった(aHR 1.31、95%CI 1.22〜1.41)。死亡の競合リスクを考慮しても、全体的に同様の傾向がみられた(aHR 1.25、95%CI 1.16〜1.34)。腎臓がん(aHR 3.16、95%CI 2.33〜4.27)、血液がん(aHR 2.54、95%CI 2.07〜3.12)、結腸がん(aHR 1.72、95%CI 1.34〜2.21)、肺がん(aHR 1.70、95%CI 1.39〜2.08)に関しては、有意に高いリスクが認められた。

結論:このことは、重症のSARS-CoV-2感染が、診断されていないがんのマーカーである可能性を示唆している。

引用文献

Severe SARS-CoV-2 infection as a marker of undiagnosed cancer: a population-based study
Adeline Dugerdil et al. PMID: 37253848 PMCID: PMC10227779 DOI: 10.1038/s41598-023-36013-7
Sci Rep. 2023 May 30;13(1):8729. doi: 10.1038/s41598-023-36013-7.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37253848/

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