筋トレの効果が得られる最低限の負荷量はどのくらいか?
以前の研究で、1日1回3秒間の最大エキセントリック(伸張性)筋収縮を週5日、4週間行った場合(5DW)、肘関節屈筋の最大随意収縮(MVC)筋力が10%以上増加することが示されました。しかし、トレーニングの頻度を減らしても同様の効果が得られるのかについては不明です。
そこで今回は、1日1回3秒間の最大エキセントリック(伸張性)筋収縮を週2日または週3日に減らしても筋力が増加するかどうかを検討した研究結果をご紹介します。
本研究では、健康な若年成人26例を募集し、1回3秒間の最大伸張性筋収縮を週2日(2DW)または週3日(3DW)の頻度で行う2群(n=13/群)に分け、4週間のトレーニングを行いました。4週間のトレーニング前後の肘関節屈筋のMVC-等尺性筋収縮、MVC-短縮性筋収縮、MVC-伸張性筋収縮、上腕二頭筋と上腕筋の筋厚(MT)の変化を、2DW群と3DW群間で比較し、さらに前回研究で行った5DW群とも比較しました。
試験結果から明らかになったことは?
2DW群では肘関節屈筋の最大随意収縮に有意な変化は見られませんでした。
肘関節屈筋の最大随意収縮の増加 | MVC-短縮性筋収縮 | MVC-伸張性筋収縮 |
週3日 | 2.5±10.4% (P<0.05) | 3.9±4.9% (P<0.05) |
週2日 | 有意な変化なし | 有意な変化なし |
(以前の研究結果)週5日 | 12.8±9.6% | 12.2±7.8% |
3DW群では、MVC-短縮性筋収縮(2.5±10.4%)およびMVC-伸張性筋収縮(3.9±4.9%)による随時最大筋力の有意な増加が観察されました(P<0.05)。
しかし、いずれも増加の大きさは5DW群(12.8±9.6%、12.2±7.8%)よりも小さいことが示されました(P<0.05)。
上腕二頭筋と上腕筋の筋厚の有意な変化はいずれの群でも認められませんでした。
コメント
筋力トレーニングによる筋肉への負荷を行う際に、最低ラインを把握することは重要な課題です。
さて、健康な若年成人26例を対象とした本試験結果によれば、1日3秒の重りの上げ下げによって筋力増加効果を得るためには、少なくとも週3日のトレーニングが必要であり、1週間当たりのトレーニング日数が多いほど、大きな筋力増加効果が得られることが示唆されました。
ただし、本研究の対象となったのは健康な若年成人26例であることから、他の年齢層への結果の適用は困難です。
少なくとも若年成人においては、週3日以上、可能であれば週5日間、1日3秒の最大エキセントリック(伸張性)筋収縮トレーニングを実施すると筋力増加効果が得られるようです。
続報に期待。
✅まとめ✅ 1日3秒の重りの上げ下げによって筋力増加効果を得るためには、少なくとも週3日のトレーニングが必要であり、1週間当たりのトレーニング日数が多いほど、大きな筋力増加効果が得られることが示唆された。
根拠となった試験の抄録
目的:われわれの以前の研究では、1日1回3秒間の最大エキセントリック収縮を週5日、4週間行った場合(5DW)、肘関節屈筋の最大随意収縮(MVC)筋力が10%以上増加することが示された。本研究では、頻度を週2日または週3日に減らしても筋力が増加するかどうかを検討した。
方法:本研究では、健康な若年成人26例を募集し、1回3秒間の最大エキセントリック収縮を週2日(2DW)または週3日(3DW)の頻度で2群(n=13/群)に分け、4週間行った。4週間のトレーニング前後の肘関節屈筋のMVC-等尺性筋収縮、MVC-短縮性筋収縮、MVC-伸張性筋収縮、上腕二頭筋と上腕筋の筋厚(MT)の変化を、2DW群と3DW群間で比較し、さらに前回の5DW群とも比較した。
結果:2DW群ではMVCトルクに有意な変化は見られなかった。3DW群では、MVC-コンセントリック(2.5±10.4%)およびMVC-エキセントリック(3.9±4.9%)トルクの有意な(P<0.05)増加が観察されたが、その増加の大きさは5DW群のそれ(12.8±9.6%、12.2±7.8%)よりも小さかった(P<0.05)。MTの有意な変化はいずれの群でも認められなかった。
結論:これらの結果は、1回の3秒間の最大エキセントリック収縮が筋力増加に有効であるためには、少なくとも週に3日のセッションが必要であることを示唆しており、1週間のセッションの頻度が高いほど(例えば5日)、より大きな筋力増加を誘導するようである。
キーワード:伸張性収縮、最大随意収縮トルク、筋厚、トレーニング頻度
*MVC=全力の伸張性収縮:ダンベルなどの重りを持ち上げた後ゆっくりと降ろすなどの運動
- コンセントリック収縮(短縮性筋収縮):筋肉が縮みながら収縮し、力を発揮している状態
- エキセントリック収縮(伸張性筋収縮):筋肉が伸びながら収縮し、力を発揮している状態
- アイソメトリック収縮(等尺性筋収縮):筋肉の長さに変化がない状態で収縮し、力を発揮している状態
引用文献
Weekly minimum frequency of one maximal eccentric contraction to increase muscle strength of the elbow flexors
Riku Yoshida et al. PMID: 37505230 DOI: 10.1007/s00421-023-05281-6
Eur J Appl Physiol. 2023 Jul 28. doi: 10.1007/s00421-023-05281-6. Online ahead of print.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37505230/
コメント