健康効果を得るための運動は毎日した方が良いのか?週末だけでも良いのか?
ガイドラインでは、全体的な健康効果を得るために週150分以上の中等度〜強度の身体活動(MVPA)を推奨していますが、集中的な活動とより均等に分散した活動の相対的な効果は不明です。
そこで今回は、週の運動頻度と心血管イベントの発症リスクとの関連性について検証したコホート研究の結果をご紹介します。具体的には、2013年6月8日~2015年12月30日に1週間分の加速度計ベースの身体活動データを提供したUK Biobankコホート研究参加者のレトロスペクティブ解析です。
本試験では、加速度計から得られた「週末戦士」パターン(すなわち、1~2日間で達成した中等度〜強度の身体活動が最も多い)と、より均等に分散した中等度〜強度の身体活動とで心血管イベントの発症リスクとの関連性に差があるのか検討しました。
以下3つのMVPAパターンが比較され、さらに同パターンについて、標本の中央値である週230.4分以上の中等度〜強度の身体活動のしきい値を用いた場合についても評価されました。
1)アクティブな週末戦士(アクティブWW群:150分以上で1~2日で総MVPAの50%以上を達成)
2)アクティブな定期群(150分以上でアクティブWWのステータスを満たさない)
3)非アクティブ群(150分未満)
主要アウトカムは、活動パターンと心房細動、心筋梗塞、心不全、脳卒中の発症との関連であり、Cox比例ハザード回帰を用いて評価され、年齢、性別、人種・民族的背景、タバコ使用、アルコール摂取、Townsend Deprivation Index、雇用状況、自己報告による健康状態、食事の質で調整されました。
試験結果から明らかになったことは?
(合計89,573例) | 例数(%) |
アクティブなWW群 | 37,872例(42.2%) |
アクティブな定期群 | 21,473例(24.0%) |
非アクティブ群 | 30,228例(33.7%) |
加速度計を受けた合計89,573例(平均年齢 62[SD 7.8]歳;女性 56%)が解析に組み入れられました。週150分以上の中等度〜強度の身体活動の閾値で層別化すると、合計37,872例がアクティブなWW群(42.2%)、21,473例がアクティブな定期群(24.0%)、30,228例が非アクティブ群(33.7%)でした。
アクティブなWW群 | アクティブな定期群 | 非アクティブ群 | |
心房細動 | HR 0.78、95%CI 0.74〜0.83 | HR 0.81、95%CI 0.74〜0.88 | HR 1.00、95%CI 0.94〜1.07 |
心筋梗塞 | HR 0.73、95%CI 0.67〜0.80 | HR 0.65、95%CI 0.57〜0.74 | HR 1.00、95%CI 0.91〜1.10 |
心不全 | HR 0.62、95%CI 0.56〜0.68 | HR 0.64、95%CI 0.56〜0.73 | HR 1.00、95%CI 0.92〜1.09 |
脳卒中 | HR 0.79、95%CI 0.71〜0.88 | HR 0.83、95%CI 0.72〜0.97 | HR 1.00、95%CI 0.90〜1.11 |
多変量調整モデルでは、いずれの活動パターンも心血管アウトカムの発症リスクを同様に低下させました。
MVPAを週230.4分以上行うという閾値の中央値において、脳卒中との関連について有意ではありませんでしたが(アクティブなWW群:0.89、95% CI 0.79〜1.02;アクティブな定期群:0.87、95%CI 0.74〜1.02;非アクティブ群:1.00、95%CI 0.90〜1.11)、他の結果は一貫していました。
コメント
定期的な運動は心血管イベントの発生リスクを低減させることが報告されています。しかし、週の運動頻度の比較についてはエビデンスが充分ではありません。
さて、UK Biobankコホート研究参加者のレトロスペクティブ解析の結果、週1~2日以内の集中した身体活動は、より均等に分散した活動と同様に心血管転帰のリスク低下と関連していました。
あくまでも関連性が示された結果ではありますが、これまでの報告結果と大きな乖離はありません。
ガイドラインで推奨されているように運動量は週に150分以上おこなった方が良さそうです。一方、週の運動頻度は、1〜2日以内の週末戦士と3日以上に分散させた場合とで差がないことから、個々人の生活習慣に合わせた選択が可能であると考えられます。
✅まとめ✅ 週1~2日以内の集中した身体活動は、より均等に分散した活動と同様に心血管転帰のリスク低下と関連していた。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:ガイドラインでは、全体的な健康効果を得るために週150分以上の中等度〜強度の身体活動(MVPA)を推奨しているが、集中的な活動とより均等に分散した活動の相対的な効果は不明である。
目的:加速度計から得られた「週末戦士」パターン(すなわち、1~2日間で達成したMVPAが最も多い)と、より均等に分散したMVPAとの心血管イベント発症リスクとの関連を検討すること。
試験デザイン、設定、参加者: 2013年6月8日~2015年12月30日に1週間分の加速度計ベースの身体活動データを提供したUK Biobankコホート研究参加者のレトロスペクティブ解析。
曝露:以下3つのMVPAパターンを比較した。
1)アクティブな週末戦士(アクティブWW群:150分以上で1~2日で総MVPAの50%以上を達成)
2)アクティブな定期群(150分以上でアクティブWWのステータスを満たさない)
3)非アクティブ群(150分未満)
同じパターンを、標本の中央値である週230.4分以上のMVPAのしきい値を用いて評価した。
主要アウトカムと評価基準:活動パターンと心房細動、心筋梗塞、心不全、脳卒中の発症との関連をCox比例ハザード回帰を用いて評価し、年齢、性別、人種・民族的背景、タバコ使用、アルコール摂取、Townsend Deprivation Index、雇用状況、自己報告による健康状態、食事の質で調整した。
結果:合計89,573例(平均年齢 62[SD 7.8]歳;女性 56%)が加速度計を受けた。週150分以上のMVPAの閾値で層別化すると、合計37,872例がアクティブなWW群(42.2%)、21,473例がアクティブな定期群(24.0%)、30,228例が非アクティブ群(33.7%)であった。多変量調整モデルでは、いずれの活動パターンも心房細動(アクティブなWW群:ハザード比[HR] 0.78、95%CI 0.74〜0.83;アクティブな定期群:HR 0.81、95%CI 0.74〜0.88);非アクティブ群:HR 1.00、95%CI 0.94〜1.07)、心筋梗塞(アクティブなWW群:0.73、95%CI 0.67〜0.80;アクティブな定期群:0.65、95%CI 0.57〜0.74;非アクティブ群:1.00、95%CI 0.91〜1.10)、心不全(アクティブなWW群:0.62、95%CI 0.56〜0.68;アクティブな定期群:0.64、95%CI 0.56〜0.73;非アクティブ群:1.00、95%CI 0.92〜1.09)、および脳卒中(アクティブなWW群:0.79、95%CI 0.71〜0.88;アクティブな定期群:0.83、95%CI 0.72〜0.97;非アクティブ群:1.00、95%CI 0.90〜1.11)の発症リスクを同様に低下させた。脳卒中との関連について有意ではなかったが、MVPAを週230.4分以上行うという閾値の中央値では、結果は一貫していた(アクティブなWW群:0.89、95% CI 0.79〜1.02;アクティブな定期群:0.87、95%CI 0.74〜1.02;非アクティブ群:1.00、95%CI 0.90〜1.11)。
結論と関連性:1~2日以内の集中した身体活動は、より均等に分散した活動と同様に心血管転帰のリスク低下と関連していた。
引用文献
Accelerometer-Derived “Weekend Warrior” Physical Activity and Incident Cardiovascular Disease
Shaan Khurshid et al. PMID: 37462704 PMCID: PMC10354673 (available on 2024-01-18) DOI: 10.1001/jama.2023.10875
JAMA. 2023 Jul 18;330(3):247-252. doi: 10.1001/jama.2023.10875.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37462704/
コメント