うつ病の女性に対する運動の効果はどのくらい?(メタ解析; Medicine (Baltimore). 2021)

women wearing spaghetti strap top doing arm stretching 01_中枢神経系
Photo by Liliana Drew on Pexels.com
この記事は約8分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

うつ病に対する運動の効果とは?

うつ病は、精神障害として現れる一般的な病気です。世界保健機関の統計によると、2030年には、うつ病が世界の疾病負担原因のトップになると予想され(WHO)、毎年80万人近くがうつ病で死亡しています(WHO Depression)。うつ病発症時には、気分の低下、興味の喪失、エネルギーの欠如がみられると同時に、不安、睡眠障害、食欲不振、自責の念、不注意、病状の直接的な影響ではない抑うつ症状も伴います。心理的な要因だけでなく、社会的、生理的な要因もさまざまな側面でうつ病に影響を及ぼします。生活に多大なストレスや機能障害がある人は、うつ病になりやすいと言われています。しかし、心血管疾患、糖尿病、癌などの一連の疾患も、うつ病の重要な原因となっています。

現在、うつ病の臨床治療は、まだ心理学と抗うつ剤に焦点が当てられています。しかし、心理療法も薬物療法も、患者の回復において早急なニーズに応えることはできません。そのため、薬物以外の治療法に注目し、生活行動の変化がうつ病患者の回復に役立つことを認識する研究者が増えています(PMID: 31389872)。多くの研究により、運動がうつ病に大きな影響を与えることが示されていますが、運動の種類によって結果が異なっています。メタ解析(PMID: 27253219)の結果では、治療としての運動はうつ病患者に対して中程度から有意な効果があることが示されています。しかし、これはあくまでも単独療法としての運動と従来ケアとの比較であり、心理療法や薬物療法と比較した場合、効果にほとんど差はありません。

女性のうつ病の有病率は男性よりも高く、女性特有の月経周期やホルモン分泌が関係していると考えられます(PMID: 27823736PMID: 15457812)。Gongらのメタ解析(PMID: 25652267)では、介入治療としてのヨガと対照群(妊婦ケア、妊婦エクササイズ、ソーシャルサポートなど)を比較し、妊婦のうつ病に対するヨガの有効性を支持する結果が示されていますが、結果の公表から新たなエビデンスが増えていることから、情報の更新が求められます。うつ病の影響力の増大とデータベースの集積不足、両方を考慮すると、女性のうつ病に対する運動の効果に関する内容を更新することが必要であると考えられます。

そこで今回は、女性のうつ病に対する治療法としての運動の効果を検証したメタ解析の結果をご紹介します。本研究では、さまざまな運動の効果と、女性におけるうつ病の種類(産前、産後、更年期、乳がんなど)別の効果、および女性におけるタイプ別のうつ病に対する運動の効果を評価しています。

試験結果から明らかになったことは?

標準平均差(95%CI)
運動 vs. 対照-0.64(-0.89 〜 -0.39)
Z=4.99
P<0.001
I2=85%

25報の異なる論文に合計2,294例の患者が含まれていました。メタ分析の結果、対照群と比較して、運動は女性のうつ病を緩和できることが示されました(標準平均差[95%信頼区間、CI] -0.64 [-0.89 〜 -0.39]、Z=4.99、P<0.001、I2 = 85%)。

サブグループ分析では、異なる種類の運動がうつ病症状の改善に有意な効果を示すことが示されました。運動療法は、生理的あるいは疾患によって誘発されたうつ病患者に対して、通常のうつ病患者よりも優れた効果を示しました。

コメント

女性のうつ病患者に対する運動の効果を検証したメタ解析の結果、対照群と比較して、うつ病を緩和できることが示されました。うつ病の評価指標としては、CES-D、Perceived Stress Scalem、EPDS、HADS、BDIが用いられていたようで、そのためか統合解析におけるI2 = 85%と異質性が高めです。またバイアスリスクは低いと考えられますが、出版バイアスがやや高いと考えられます(原著論文を参照)。とはいえ、心理療法や薬物療法だけでなく、運動による抑うつ症状の緩和が引き続き示されたことは有益な結果であると考えられます。

運動が女性の抑うつ症状を緩和できる可能性は高いですが、どのような患者で、どのような運動を実施するとより得られる益が多くなるのかについては明らかになっていませんので、追試が求められます。

続報に期待。

woman surrounded by sunflowers

✅まとめ✅ 運動は女性の抑うつ症状を有意に改善することが示された。有酸素運動とその他の運動による有効性に差はなかった。

根拠となった試験の抄録

背景:うつ病では、男性よりも女性の割合が高い。これは、特に思春期、月経、妊娠、更年期など、女性の生理的調節が男性とは異なることが主な原因である。したがって、うつ病の女性を治療することは、依然として健康上の課題である。その上、最近の運動療法の研究は、特に薬物療法や心理療法とは対照的に、うつ病の治療においてより優れた性能を発揮している。その主な利点は、利便性、迅速性、副作用の少なさ、リアルタイム性、長期的な有効性である。

目的:本研究の目的は、うつ症状を有する女性に対する運動の臨床的有効性を系統的に検討することであった。

方法:PubMed、The Cochrane Library、Embase の各データベースを検索し、うつ病の女性に対する治療としての運動に関するランダム化対照試験を収集した。文献スクリーニング、データ抽出、文献の品質評価を行った後、RevMan5.3 ソフトウェアを用いて収集データのメタアナリシスを実施した。

結果:25報の異なる論文に合計2,294例の患者が含まれていた。メタ分析の結果、対照群と比較して、運動は女性のうつ病を緩和(標準平均差[95%信頼区間、CI] -0.64 [-0.89 〜 -0.39]、Z=4.99、P<0.001)できることが示された。サブグループ分析では、異なる種類の運動がうつ病症状の改善に有意な効果を示すことが示された。運動療法は、生理的あるいは疾患によって誘発されたうつ病患者に対して、通常のうつ病患者よりも優れた効果を示した。

結論:運動は女性の抑うつ症状を有意に改善することができる。

引用文献

Multidimensional analyses of the effect of exercise on women with depression: A meta-analysis
Lin-Bo Yan et al. PMID: 34414936 PMCID: PMC8382388 DOI: 10.1097/MD.0000000000026858
Medicine (Baltimore). 2021 Aug 20;100(33):e26858. doi: 10.1097/MD.0000000000026858.— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34414936/

関連記事

【大うつ病または双極性障害の退役軍人における自殺関連の反復予防のためのリチウム治療は有効か?(DB-RCT; Li+ plus試験; JAMA Psychiatry. 2021)】

【女性における抗うつ薬抵抗性大うつ病性障害に対する低用量テストステロン増強療法の効果はどのくらいですか?(RCT; Am J Psychiatry. 2020)】

【アメリカの女性労働者では休暇取得により うつ病が減るかもしれない(アメリカ人口ベース縦断研究; Scand Work Environ Health 2019)】

【精神的に健康な集団は?LINE vs. Facebook vs. Twitter vs. Instagram(日本のSNS利用者のメンタルヘルス・プロファイル; PLoS One. 2021)】

【米国成人におけるソーシャルメディア利用と自己申告によるうつ病症状との関連性は?(前向き研究; JAMA Netw Open. 2021)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました