アントラサイクリン関連心機能障害の発生はアトルバスタチン併用により減少するのか?(DB-RCT; STOP-CA試験; JAMA. 2023)

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アトルバスタチンの併用はアントラサイクリン関連心機能障害のリスクを低減できるのか?

アントラサイクリン系薬剤は広範な癌を治療できることから広く使用されていますが、副作用として新機能障害を引き起こすことが報告されており、治療中のモニタリング項目の一つにあげられています。

基礎データおよびレトロスペクティブな臨床データから、アトルバスタチンの使用がアントラサイクリン系薬剤の使用による心機能障害の軽減に関連する可能性が示唆されているものの、リンパ腫および乳がん患者(ただし、85.3%が乳がん患者)を対象としたPREVENT試験においては、アトルバスタチン40mgの併用により、ドキソルビシン投与2年後の左室駆出率(LVEF)低下に影響を及ぼさなかったことが示されています。

今回ご紹介するのは、アントラサイクリン系薬剤を投与されたリンパ腫患者において、アトルバスタチンが心機能障害を発症する割合の減少に関連するかどうかを検証したランダム化比較試験です。

本試験は、米国とカナダの9つの学術医療センターで、アントラサイクリン系化学療法を受ける予定のリンパ腫患者300例を対象に実施された二重盲検ランダム化比較試験です。被験者登録は2017年1月25日から2021年9月10日の間に行われ、最終追跡は2022年10月10日に行われました。

参加者はアトルバスタチン40mg/日(n=150)またはプラセボ(n=150)を12ヵ月間投与する群にランダムに割り付けられました。

主要アウトカムは、12ヵ月間に左室駆出率(LVEF)が化学療法前から最終値55%未満まで絶対値で10%以上低下した参加者の割合でした。副次的アウトカムは、化学療法前から12ヵ月間のLVEFの絶対値が5%以上低下し、最終値が55%未満となった参加者の割合でした。

試験結果から明らかになったことは?

ランダム化された300例の参加者(平均年齢 50歳[SD 17]、女性 142例[47%])のうち、286例(95%)が試験を完了しました。全コホートにおいて、ベースラインの平均LVEFは63%(SD 4.6%)であり、追跡後のLVEFは58%(SD 5.7%)でした。試験薬のアドヒアランスは参加者の91%に認められました。12ヵ月の追跡調査では、46例(15%)のLVEFが化学療法前より10%以上低下し、最終値は55%未満でした。

アトルバスタチン群プラセボ群オッズ比
(95%CI)
主要エンドポイント9%(13/150例)
P=0.002
22%(33/150例)オッズ比 2.9
1.4〜6.4
主要エンドポイント:12ヵ月間に左室駆出率(LVEF)が化学療法前から最終値55%未満まで絶対値で10%以上低下した参加者の割合

主要エンドポイント(12ヵ月間に左室駆出率(LVEF)が化学療法前から最終値55%未満まで絶対値で10%以上低下した参加者の割合)の発生率はアトルバスタチン群で9%(13/150例)、プラセボ群で22%(33/150例)でした(P=0.002)。アントラサイクリン治療後にLVEFが10%以上低下して最終値が55%未満になる確率は、プラセボ群にランダム化された参加者がアトルバスタチン群にランダム化された参加者の約3倍でした(オッズ比 2.9、95%CI 1.4〜6.4)。

プラセボと比較して、アトルバスタチンは副次的エンドポイント(化学療法前から12ヵ月間のLVEFの絶対値が5%以上低下し、最終値が55%未満となった参加者の割合)の発生率も低下させました(13% vs. 29%;P=0.001)。

24ヵ月の追跡期間中に13例(4%)の心不全イベントが発生しましたが、心不全の発生率は両群間に差はなかった(アトルバスタチン群 3%、プラセボ群 6%;P=0.26)。

重篤な有害事象の発生数は少なく、両群間に差はありませんでした。

コメント

アントラサイクリン系薬剤による心臓関連有害事象、特に心機能障害が臨床上の課題となっています。

さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、アントラサイクリンベースの化学療法を受けたリンパ腫患者において、アトルバスタチンは心機能障害の発生率を低下させました。乳がん/リンパ腫患者を対象とした過去の試験とは異なる結果が得られたことになります。この要因として、がん種、用いられたアントラサイクリン系薬剤の用量、主要評価項目、試験期間などが挙げられますが、原因を特定することは困難です。

少なくともアントラサイクリンベースの化学療法を受けたリンパ腫患者においては、アトルバスタチン40mg/日の併用を考慮しても良いのかもしれません。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 二重盲検ランダム化比較試験の結果、アントラサイクリンベースの化学療法を受けたリンパ腫患者において、アトルバスタチンは心機能障害の発生率を低下させた。

根拠となった試験の抄録

試験の重要性:アントラサイクリン系薬剤は広範な癌を治療する。基礎データおよびレトロスペクティブな臨床データから、アトルバスタチンの使用がアントラサイクリン系薬剤の使用による心機能障害の軽減に関連する可能性が示唆されている。

目的:アトルバスタチンが、アントラサイクリン系薬剤を投与されたリンパ腫患者で心機能障害を発症する割合の減少に関連するかどうかを検証すること。

試験デザイン、設定、参加者:米国とカナダの9つの学術医療センターで、アントラサイクリン系化学療法を受ける予定のリンパ腫患者300例を対象に実施された二重盲検ランダム化比較試験。登録は2017年1月25日から2021年9月10日の間に行われ、最終追跡は2022年10月10日に行われた。

介入:参加者はアトルバスタチン40mg/日(n=150)またはプラセボ(n=150)を12ヵ月間投与する群にランダムに割り付けられた。

主要アウトカムと評価基準:主要アウトカムは、12ヵ月間に左室駆出率(LVEF)が化学療法前から最終値55%未満まで絶対値で10%以上低下した参加者の割合とした。副次的アウトカムは、化学療法前から12ヵ月間のLVEFの絶対値が5%以上低下し、最終値が55%未満となった参加者の割合とした。

結果:ランダム化された300例の参加者(平均年齢 50歳[SD 17]、女性 142例[47%])のうち、286例(95%)が試験を完了した。全コホートにおいて、ベースラインの平均LVEFは63%(SD 4.6%)であり、追跡後のLVEFは58%(SD 5.7%)であった。試験薬のアドヒアランスは参加者の91%に認められた。12ヵ月の追跡調査では、46例(15%)のLVEFが化学療法前より10%以上低下し、最終値は55%未満であった。主要エンドポイントの発生率はアトルバスタチン群で9%(13/150例)、プラセボ群で22%(33/150例)であった(P=0.002)。アントラサイクリン治療後にLVEFが10%以上低下して最終値が55%未満になる確率は、プラセボ群にランダム化された参加者がアトルバスタチン群にランダム化された参加者の約3倍であった(オッズ比 2.9、95%CI 1.4〜6.4)。プラセボと比較して、アトルバスタチンは副次的エンドポイントの発生率も低下させた(13% vs. 29%;P=0.001)。24ヵ月の追跡期間中に13例(4%)の心不全イベントが発生した。心不全の発生率は両群間に差はなかった(アトルバスタチン群 3%、プラセボ群 6%;P=0.26)。重篤な有害事象の発生数は少なく、両群間に差はなかった。

結論と関連性:アントラサイクリンベースの化学療法を受けたリンパ腫患者において、アトルバスタチンは心機能障害の発生率を低下させた。この所見は、アントラサイクリン使用による心機能障害のリスクが高いリンパ腫患者におけるアトルバスタチンの使用を支持するかもしれない。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier. NCT02943590

引用文献

Atorvastatin for Anthracycline-Associated Cardiac Dysfunction: The STOP-CA Randomized Clinical Trial
Tomas G Neilan et al. PMID: 37552303 PMCID: PMC10410476 (available on 2024-02-08) DOI: 10.1001/jama.2023.11887
JAMA. 2023 Aug 8;330(6):528-536. doi: 10.1001/jama.2023.11887.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37552303/

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