小児の尿路感染症に対する抗菌薬投与は5日と10日どちらが良いのか?(非劣性RCT; SCOUT試験; JAMA Pediatr. 2023)

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小児の尿路感染症における抗菌薬の治療期間はどのくらいが良いのか?

小児の尿路感染症(UTI)における治療期間推奨の指針となる小児特有の比較データは乏しいことから、エビデンスの創出が求められています。

そこで今回は、小児の尿路感染症に対する抗菌薬の標準コース療法(10日間)と短期コース療法(5日間)の有効性を比較したSCOUT(Short Course Therapy for Urinary Tract Infections)試験の結果をご紹介します。

本試験はランダム化臨床非劣性試験であり、2012年5月から2019年8月まで、2つの小児病院の外来および救急部で実施されました。データは2020年1月から2023年2月まで解析されました。試験の対象は、5日間の抗菌薬投与後に臨床的改善がみられた生後2ヵ月から10歳までの尿路結石症の小児でした。

試験対象者は、さらに5日間の抗菌薬投与(標準コース療法)または5日間のプラセボ投与(短期コース療法)にランダムに割り付けられました。

本試験の主要アウトカムは治療失敗でした。治療失敗は初回フォローアップ受診時(11~14日目)以前の症候性尿路結石と定義されました。副次的アウトカムは、初回フォローアップ受診後の尿路結石、無症候性細菌尿、尿培養陽性、および耐性菌による消化管コロニー形成でした。

試験結果から明らかになったことは?

主要転帰の解析対象は、ランダム化された小児664例(女性639人[96%];年齢中央値4歳)でした。

標準コース療法短期コース療法絶対差
(95%信頼区間の上限)
治療失敗328例中2例(0.6%)336例中14例(4.2%)絶対差 3.6%
(95%信頼区間の上限 5.5%

主要転帰の評価が可能な小児のうち、標準コースに割り付けられた328例中2例(0.6%)、短期コースに割り付けられた336例中14例(4.2%)に治療失敗が認められました(絶対差 3.6%、95%信頼区間の上限 5.5%)。

短期コース治療を受けた小児は、初回フォローアップ診察時またはそれまでに無症候性細菌尿あるいは尿培養陽性を示す可能性が高かいことが明らかとなりました。

最初の追跡調査後の尿路結石症の発生率、有害事象の発生率、耐性菌による消化管コロニー形成の発生率に群間差はみられませんでした。

コメント

小児の尿路感染症における治療期間についてはエビデンスが充分ではありません。

さて、ランダム化比較試験の結果、尿路感染症の小児に対する抗菌薬投与の期間は、標準コース療法(10日間)の方が、短期コース療法(5日間)よりも治療失敗率が低いことが明らかとなりました。しかし、尿路結石症の発生率、有害事象の発生率、耐性菌による消化管コロニー形成の発生率に群間差がないこと、短期コースの治療失敗率が全体的に4.2%と低いことから、5日間の抗菌薬投与で臨床的改善がみられた小児に対しては、短期コースを妥当な選択肢として考慮できると考えられます。どのような小児患者に対して、5日間の投与が優れているのかさらなる検証が求められます。

続報に期待。

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✅まとめ✅ ランダム化比較試験の結果、尿路感染症の小児に対する抗菌薬投与の期間は、標準コース療法の方が、短期コース療法よりも治療失敗率が低かった。しかし、短期コースの治療失敗率が低いことから、5日間の抗菌薬投与で臨床的改善がみられた小児に対しては、短期コースを妥当な選択肢として考慮できる可能性が示唆された。

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