根拠となった試験の抄録
試験の重要性:出血リスクの高い非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対しては、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与が承認されているが、特に腎機能障害患者における投与量の正確性についてはほとんど知られていない。
目的:DOACの過少投与が長期的な抗凝固療法アドヒアランスと関連するかどうかを明らかにすること。
試験デザイン、設定、参加者:このレトロスペクティブコホート解析では、Symphony Health請求データセットのデータを使用した。この全国的な医療・処方データセットは、米国の2億8,000万人の患者と180万人の処方者から構成されている。対象患者は、2015年1月~2017年12月の間にNVAFに関する請求が2件以上あった。本論文の解析対象期間は2021年2月~2022年7月である。
曝露:本試験では、CHA2DS2-VAScスコアが2以上の患者で、DOACの投与量を減量した患者と減量しなかった患者のうち、承認時(ラベル)に指定された基準を満たした患者と満たさない患者を対象とした。
主要アウトカムと評価基準:ロジスティック回帰モデルにより、適応外投与(すなわち、米国食品医薬品局(FDA)の添付文書で推奨されていない投与)に関連する因子、クレアチニンクリアランスと推奨DOAC投与量との関連、DOACの過少投与および過剰投与と1年間のアドヒアランスとの関連を検討した。
結果:対象となった患者86,919例(年齢中央値 74[IQR 67〜80]歳;男性 43,724例[50.3%];白人 82,389例[94.8%])のうち、7,335例(8.4%)が適切な減量を受け、10,964例(12.6%)がFDAの推奨と一致しない過少用量を受け、減量を受けた患者の59.9%(18,299例中10,964例)が不適切な用量を受けたことになる。適応外用量のDOACを投与された患者は、適切な用量(FDAの添付文書で推奨されている用量)を投与された患者と比較して、年齢が高く(年齢中央値 79[IQR 73〜85]歳 vs. 73[66〜79]歳)、CHA2DS2-VAScスコアが高かった(中央値 5[IQR 4〜6] vs. 4[IQR 3〜6])。腎機能障害、年齢、心不全、および処方した臨床医が外科専門医であることは、FDAの添付文書で推奨されていない投与量と関連していた。クレアチニンクリアランスが毎分60mL未満のDOAC服用患者(9,792例[31.9%])のほぼ3分の1は、FDAの推奨に合致しない過小投与または過剰投与を受けていた。クレアチニンクリアランスが10単位低下するごとに、患者が適切な用量のDOACを投与される確率は21%低下した。過少用量のDOACは服薬アドヒアランスの低さと関連し(調整オッズ比 0.88、95%CI 0.83〜0.94)、1年後までに抗凝固療法を中止するリスクが高かった(調整オッズ比 1.20、95%CI 1.13〜1.28)。
結論と関連性:経口抗凝固薬の投与用量に関する本試験において、FDAの添付文書勧告に従わないDOACの投与用量は、相当数のNVAF患者で認められ、腎機能の悪い患者ほど頻度が高く、長期抗凝固療法の一貫性の低さと関連していた。これらの結果は、DOACの使用と投与の質を改善する努力の必要性を示唆している。
引用文献
Analysis of Oral Anticoagulant Dosing and Adherence to Therapy Among Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
Jennifer A Rymer et al. PMID: 37285155 PMCID: PMC10248740 DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.17156
JAMA Netw Open. 2023 Jun 1;6(6):e2317156. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2023.17156.
— 読み進める https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37285155/
コメント