根拠となった試験の抄録
背景:血液透析を行うための穿刺時疼痛は主な課題であり、患者の快適性のために疼痛管理技術を必要とする共通の問題である。
目的:本研究は、血液透析患者の穿刺時疼痛に対する冷却スプレーとリドカインスプレーの効果を比較することを目的とした。
方法:このランダム化クロスオーバー臨床試験研究では、血液透析患者を包含基準に従ってコンビニエンスサンプリング*で選択し、ブロックランダム化法を用いて3つの介入群にランダムに割り当てた。各患者はクロスオーバーデザインで3つの介入を受けた: 冷却スプレー、10%リドカインスプレー、プラセボスプレー。各介入の間には、2週間のウォッシュアウトタイムが設けられた。痛みのスコアは、Numerical Rating Scaleにより、各患者について4回測定された。
*コンビニエンスサンプリング(便宜的抽出法):最もアクセスしやすい集団に実施するサンプリング。大抵の場合、最も簡単に実施でき、コストも抑えられる。このような母集団は決してランダムに選ばれてはいないが、調査者が集めたいデータの種類によってはさほど問題ではない。企業が提案された製品の実現可能性や人気を確かめるためのパイロット調査などでよく利用される。ただし、ランダム抽出よりもバイアスが入り込みやすいことは念頭に置きたい。
結果:41例の血液透析患者が対象であった。その結果、時間とグループの間に有意な交互作用が認められたため(p<0.05)、ベースライン値を調整した時間1の観測値のみを用いて、介入の効果を評価した。冷却スプレーを受けた患者は、プラセボと比較して平均で2.29点痛みが少ないと報告した(B -2.29、95%CI -4.17 〜 -0.43; p<0.05); また、冷却スプレーを受けた患者は、リドカインスプレーを受けた患者より1.61点痛みが少なかったがこの差異は統計的に有意ではなかった(95%CI -0.26 〜 3.48; p>0.05)。
結論:冷却スプレーは、血液透析患者における穿刺時疼痛の軽減に有効であった。異なる時間、異なる介入後の痛みスコアを比較することは不可能であったが、本研究結果は、冷却スプレーとリドカインスプレーに関する既存の知識を補足するのに役立つと思われる。
キーワード:クロスオーバーデザイン、血液透析、リドカイン、痛み、バポクーラントスプレー(Vapocoolant Spray, 冷却スプレー)
引用文献
Cooling spray or lidocaine spray and needle insertion pain in hemodialysis patients: an open-label cross-over randomized clinical trial
Armin Khosravi Pour et al. PMID: 36882711 PMCID: PMC9990356 DOI: 10.1186/s12871-023-02028-w
BMC Anesthesiol. 2023 Mar 7;23(1):69. doi: 10.1186/s12871-023-02028-w.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36882711/
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