より集中的な降圧により脳卒中の再発リスクを低減できるのか?
高血圧は脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントを引き起こすことから、血圧コントロールが求められます。特に脳卒中の二次予防においては、より集中的に血圧を下げることが、一般的に血圧を下げることよりもどの程度優れているかは明らかにされていません。
そこで今回は、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)患者において、差分血圧降下の大きさと脳卒中再発の関連を評価するために、標準メタ解析とランダム化臨床試験のメタ回帰を実施した試験の結果をご紹介します。
本試験では、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.govが1980年1月1日から2022年6月30日まで検索されました。脳卒中またはTIA患者において、より集中的に血圧を下げる場合とそれほど集中的に下げない場合を比較し、脳卒中の再発という転帰を記録したランダム化臨床試験が対象となりました。
単変量メタ回帰分析は、収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)の差圧の大きさが、脳卒中再発および主要な心血管イベントに対する調節効果の可能性を評価するために行われました。
本試験の主要アウトカムは脳卒中再発、副次評価項目は主要な心血管イベントです。
試験結果から明らかになったことは?
脳卒中またはTIAの患者40,710例(女性 13,752例[34%]、平均年齢 65歳)からなる10件のランダム化臨床試験が解析の対象とされました。平均追跡期間は2.8年(範囲:1~4年)でした。
(脳卒中またはTIA患者) | より集中的な降圧 | 集中的でない降圧 | リスク比 RR |
脳卒中の再発リスク | 8.4% | 10.1% | RR 0.83 (95%CI 0.78〜0.88) |
プールの結果、脳卒中またはTIA患者において、より集中的な治療がより集中的でない治療と比較して、脳卒中の再発リスクの低減と関連することが示されました(絶対リスク 8.4% vs. 10.1%、RR 0.83、95%CI 0.78〜0.88)。メタ回帰では、SBPとDBPの差分減少の大きさは、対数線形で脳卒中またはTIA患者の脳卒中再発リスクの低下と関連していました(SBP:回帰傾斜 -0.06、95%CI -0.08 ~ -0.03、DBP:回帰傾斜 -0.17、95%CI -0.26 ~ -0.08)。
差分血圧低下と主要な心血管イベントとの関連でも同様の結果が得られました。
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心血管イベントの発症リスクの高い集団においては、LDLコレステロールや血圧の治療目標値を、より厳格に行った方が予後が良好であることが示されています。しかし、相反する研究結果も示されていることから、網羅的に関連する研究を集め、統合結果を示す必要があります。
さて、本試験結果によれば、より集中的な血圧低下療法は、脳卒中および主要な心血管イベントの再発リスクの低減と関連するかもしれないことが示されました。組み入れられた参加者は年齢60歳以上、男性が60〜70%を占め、平均追跡期間が2.8年です。したがって、これらの特徴に近い背景を有する高血圧患者集団においては、より積極的な降圧を行った方が良いのかもしれません。
組み入れられた研究数は10件であり、意外と少ない印象です。今後の研究によっては、結果が覆る可能性があります。続報に期待。
ちなみに、メタ分析とメタ回帰の違いは、方法論的異質性と統計学的異質性が研究間で同様か否かに基づいています。解析方法の違いですので、どちらがより優れているということではありません。
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