更年期女性の血管運動症状に対するニューロキニン3受容体拮抗薬の効果は?
更年期女性の血管運動症状(血管運動神経症状とも:顔のほてり・のぼせ等のホットフラッシュや寝汗、手足の冷え、息切れなど)の治療において、基本的にはホルモン(補充)療法が行われます。しかし、ホルモン療法が実施できない、あるいは実施しない(したくない)場合の選択肢が少ないことから、新たな治療戦略の確立が求められています。
ニューロキニン(NK)3受容体拮抗薬は、非ホルモン療法の可能性がある薬剤です。閉経期女性ではNK3受容体を介するニューロキニンBのシグナル伝達が亢進し、ホットフラッシュ発現の重要なメディエータとなっていことが報告されています。Fezolinetant(フェゾリネタント)は、更年期障害による血管運動症状の治療薬として開発中の最初の非ホルモン性NK3受容体拮抗薬の1つですが、更年期に伴う中等度から重度の血管運動症状に対する安全性と有効性については充分に検討されていません。
そこで今回は、1日平均7回以上の中等度から重度のほてりを有する40~65歳の女性を対象に、1日1回投与の完全一致プラセボ、フェゾリネタント30mg、フェゾリネタント45mgにランダム割付け(1:1:1)したSKYLIGHT 1試験の結果をご紹介します。本試験は、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、12週間の第3相試験で、40週間の積極的治療延長が設定されていました。本試験は、米国、カナダ、チェコ、ハンガリー、ポーランド、スペイン、英国の97施設で行われ、ランダム化はウェブベースの対話型応答システムを用い、治療割り当てについて治験責任医師、プロジェクトチームメンバー、臨床スタッフ、参加者がマスクされました。
主要評価項目は、血管運動症状の頻度と重症度のベースラインから4週目および12週目までの平均変化でした。
試験結果から明らかになったことは?
2019年7月11日から2021年8月11日の間に、2,205例の女性が募集され、そのうち175例がプラセボに、176例がフェゾリネタント30mgに、176例がフェゾリネタント45mgに割り付けられました(プラセボ群175例、フェゾリネタント30mg群174例、フェゾリネタント45mg群173例は少なくとも1回投与を受けた【安全解析セット】)。フェゾリネタント45mgにランダムに割り付けられた参加者1例が誤ってフェゾリネタント30mgを投与されたため、有効性解析セット(フル解析セット)はフェゾリネタント30mg群の173例とフェゾリネタント45mg群の174例で構成されました。
プラセボ群23例、フェゾリネタント30mg群31例、フェゾリネタント45mg群13例が12週目までに治療を中止したが、その多くは有害事象または参加者の脱落によるものでした。
4週目 | 12週目 | |
血管運動症状の頻度 (最小二乗平均の変化量の差) | 【フェゾリネタント30mg】 -1.87(SE 0.42) p<0.001 vs. プラセボ 【フェゾリネタント45mg】 -2.07(SE 0.42) p<0.001 vs. プラセボ | 【フェゾリネタント30mg】 -2.39(SE 0.44) p<0.001 vs. プラセボ 【フェゾリネタント45mg】 -2.55(SE 0.43) p<0.001 vs. プラセボ |
血管運動症状の重症度 | 【フェゾリネタント30mg】 -0.15(0.06) p=0.012 【フェゾリネタント45mg】 -0.19(0.06) p=0.002 | 【フェゾリネタント30mg】 -0.24(0.08) p=0.002 【フェゾリネタント45mg】 -0.20(0.08) p=0.007 |
プラセボと比較して、フェゾリネタント30mgおよびフェゾリネタント45mgは、4週目(最小二乗平均の変化量の差 -1.87[SE 0.42;p<0.001]、-2.07[SE 0.42;p<0.001])および12週目(-2.39[SE 0.44;p<0.001]、-2.55[SE 0.43;p<0.001] )において血管運動症状の頻度を著しく減少させました。フェゾリネタント30mgおよび45mgは、プラセボと比較して、4週目(-0.15 [0.06; p=0.012]、-0.19 [0.06; p=0.002])および12週目(-0.24 [0.08; p=0.002]、-0.20 [0.08; p=0.007])の血管運動症状の重症度を著しく減少させました。血管運動症状の頻度と重症度の改善は、1週間後に観察され、52週間にわたって維持されました。
最初の12週間で、治療上問題となる有害事象は、フェゾリネタント30mg群では174例中65例(37%)、フェゾリネタント45mg群では173例中75例(43%)、プラセボ群では175例中78例(45%)に発現しました。肝酵素上昇の発現率は低く(プラセボ:1、フェゾリネタント30mg:2、フェゾリネタント45mg:0)、これらの事象は一般に無症状で一過性であり、治療中または治療中止後に消失しました。
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更年期女性の血管運動症状(血管運動神経症状とも:顔のほてり・のぼせ等のホットフラッシュや寝汗、手足の冷え、息切れなど)の治療の選択肢は限られており、ホルモン補充療法が主体となっています。しかし、副作用として不正出血、乳房のはり・痛み、吐き気、頭痛などが認められることから、治療を中断あるいは実施しない方もいます。そのための代替療法が求められていました。
さて、二重盲検ランダム化比較試験の結果、更年期に関連する血管運動症状(ほてり)に対して、非ホルモン治療薬であるフェゾリネタントの臨床使用が支持されました。用量依存的な効果が示唆されていますが、統計解析は実施されていないようです。個人的には、有害事象の内訳が気にかかるところです。また今回の検証は12週間までの結果であることから、より長期間における安全性の検証が求められます。
続報に期待。
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