心房細動患者の腎関連アウトカムに対するDOAC vs. ワルファリン
非弁膜症性心房細動患者の脳卒中予防には、ビタミンK拮抗薬(VKA)に代わって直接経口抗凝固薬(DOAC)が徐々に使用されるようになってきました。VKAと比較して、DOACは出血性合併症の発生が少ないことが報告されています。しかし、その他の利点、特に腎臓の転帰に関連する利点については、まだ結論が出ていません。
そこで今回は、非弁膜症性心房細動に対するDOACおよびVKA投与後の慢性腎臓病(CKD)進行および急性腎障害(AKI)のリスクについて検討したレトロスペクティブ・コホート研究の結果をご紹介します。
本試験は、2011~2018年に非弁膜症性AFと診断され、ストックホルム・クレアチニン測定(SCREAM)プロジェクトに登録されたスウェーデンの患者を対象としたコホート研究です。主要アウトカムは、CKD進行(推定糸球体濾過量[eGFR]低下が30%以上および腎不全の複合)およびAKI(診断またはKDIGO定義の一過性クレアチニン上昇による)でした。副次的アウトカムは、死亡、大出血、脳卒中と全身性塞栓症の複合でした。
試験結果から明らかになったことは?
32,699例の患者(56%がDOACを開始)を対象に、中央値3.8年間観察しました。年齢中央値は75歳、45%が女性、27%がeGFR<60mL/min/1.73m2でした。
調整済みHR(95%CI) | |
CKD進行リスク | 0.87(0.78〜0.98) |
AKI | 0.88(0.80〜0.97) |
大出血 | 0.77(0.67〜0.89) |
脳卒中と全身性塞栓症の複合 | 0.93(0.78〜1.11) |
死亡 | 1.04(0.95〜1.14) |
DOACとVKAの調整済みHRは、CKD進行リスクが0.87(95%CI 0.78〜0.98)、AKIが0.88(95%CI 0.80〜0.97)、大出血で0.77(95%CI 0.67〜0.89)、脳卒中と全身性塞栓症の複合で0.93(95%CI 0.78〜1.11)、死亡で1.04(95%CI 0.95〜1.14)でした。
血栓塞栓症のリスクが高い患者に限定した場合、また治療中止や抗凝固療法の種類変更で追跡調査を打ち切った場合、年齢、性別、ベースラインeGFRのサブグループ間で結果は同様でした。
コメント
DOACは腎機能低下(<eGFR60mL)時に減量あるいは禁忌となります。腎関連アウトカムに対するDOACの有効性・安全性については充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、日常診療で治療を受けている非弁膜症性心房細動患者において、DOACの使用はVKAの使用と比較して、CKD進行、AKI、大出血のリスクが低いことと関連していました。一方、脳卒中および全身性塞栓症の複合リスク、死亡については同程度でした。
本試験の対象はスウェーデンの患者であることから、結果の一般化や日本人への外挿性については制限があります。また、調整しきれていない交絡因子の影響、出血リスクが低い患者や腎予後が悪化しにくい患者においてDOACが使用されていた可能性も考えられます。他の研究結果も参照する必要があります。
続報に期待。
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