妊娠中のロイコトリエン受容体拮抗薬の使用と子孫の精神神経系イベントとの関連性は?(台湾データベース研究; JAMA Netw Open. 2023)

person holding baby s hand 01_中枢神経系
Photo by Lisa Fotios on Pexels.com
この記事は約4分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

ロイコトリエン受容体拮抗薬による精神神経系イベントのリスクはどのくらいか?

ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)は、喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性気道疾患の治療に使用される薬剤の一種です(PMID: 10023966)。米国食品医薬品局(FDA)は、長年にわたり、LTRAの最初の薬剤であるモンテルカストに関連する精神神経系イベントの潜在的な害に関する市販後データを監視し、2020年にモンテルカストの使用に関連する深刻なNEに関する枠付き警告を発表しました(PMID: 34659626)。しかし、LTRAに関連する精神神経系イベントのリスクに関するエビデンスは相反するものでした(PMID: 29076063PMID: 35608857PMID: 35595323)。

そこで今回は、妊娠中のLTRAsへの曝露と子孫の精神神経系イベント発生リスクとの関連性を報告した台湾のデータベース研究の結果をご紹介します。

本試験では、台湾の2009年から2019年までの妊婦とその子孫を特定するために、国民健康保険研究データベース全体のデータが使用されました。本研究は、コホート研究の報告ガイドラインであるStrengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology(STROBE)に従い行われました。組入基準は、喘息またはアレルギー性鼻炎の診断を受けた妊婦で、多胎でなく、先天性奇形のない子孫でした。曝露は、妊娠中にLTRAsの処方箋が調剤されたことと定義され、LTRA使用者と非使用者の間のベースラインでの系統的な差異をコントロールするために傾向スコアマッチングが適用されました。

本試験の主要アウトカムは、子孫の注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、トゥレット症候群の主要診断でした。

試験結果から明らかになったことは?

元の研究集団では、合計576,157組の母子(1,995例のLTRA被曝児と574,162例の非被曝児)が確認されました。傾向スコアマッチングの結果、1,988例のLTRA被曝児と19,863例の非被曝児がその後の解析に含まれました。

出生前のLTRA曝露と各アウトカムの調整後ハザード比 AHR
ADHDAHR 1.03(95%CI 0.79~1.35
ASDAHR 1.01(95%CI 0.65~1.59
トゥレット症候群AHR 0.63(95%CI 0.29~1.36

小児において、出生前のLTRA曝露とADHD(調整ハザード比[AHR] 1.03、95%CI 0.79~1.35)、ASD(AHR 1.01、95%CI 0.65~1.59)、トゥレット症候群(AHR 0.63、95%CI 0.29~1.36)間に有意差は見られませんでした。

LTRAの使用期間(1~4週間 vs. >4週間)およびLTRAの累積投与量(1~170mg vs. >170mg)は、子孫のADHD、ASDおよびトゥレット症候群と有意な関連はありませんでした。

コメント

ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカスト、プランルカスト)のうち、米国でのファーストインクラスはモンテルカストでした。モンテルカストは出生後の精神神経系イベントのリスクに懸念があるため、米国の添付文書では注意喚起がなされています。しかし、その後の調査結果では、相反する結果であることから更なる検証が求められていました。

さて、本試験結果によれば、台湾のデータベース研究において、出生前のロイコトリエン受容体拮抗薬の曝露は、小児のADHD、ASD、トゥレット症候群のリスク上昇と関連しないことが明らかとなりました。あくまでも相関関係が示されたにすぎませんが、台湾人においては、妊娠期におけるロイコトリエン受容体拮抗薬の使用と、出生時の精神神経系イベントのリスクとは関連がないようです。

続報に期待。

toddler in yellow top and hat holding fruit

☑まとめ☑ 台湾のデータベース研究の結果、出生前のロイコトリエン受容体拮抗薬の曝露は、子孫のADHD、ASD、トゥレット症候群のリスク上昇と関連しないことが明らかとなった。

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました