SGLT-2阻害薬とMR拮抗薬の併用療法は単独治療よりも有効なのか?
糖尿病(Diabetes mellitus:DM)は慢性腎臓病の主要な原因であり、特にアルブミン尿を有している場合、心血管死亡のリスク上昇と関連していることが報告されています。
ナトリウム・グルコース共輸送体-2(SGLT-2)阻害薬とミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬は、それぞれアルブミン尿を予防することが報告されていますが、アルブミン尿に対するこれらの併用効果について充分に検証されていません。
そこで今回は、2型DMにおけるSGLT-2阻害薬、MR拮抗薬および、これらの併用によるアルブミン尿に対する効果を調査するために行われたネットワークメタ解析の結果をご紹介します。
本試験では、PubMed、Medline、EMBASE、Cochrane Libraryについて創刊から2022年11月20日まで系統的に検索されました。尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)≧30mg/gクレアチニンの2型DM患者において、MR拮抗薬、SGLT-2阻害薬、MR拮抗薬+SGLT-2阻害薬、またはプラセボを比較したランダム化対照試験とクロスオーバー試験が選択されました。
本試験の主要アウトカムは、UACRの変化でした。
試験結果から明らかになったことは?
本メタ解析では、34,412例の患者を対象とした17件の研究が分析されました。
併用 vs. SGLT-2阻害薬 | 併用 vs. MR拮抗薬 | 併用 vs. プラセボ | |
アルブミン尿の平均差 | -34.19 (95%CI -27.30 ~ -41.08) | -32.25 (95%CI -24.53 ~ -39.97) | -65.22 (95%CI -57.97 ~ -72.47) |
SGLT-2阻害薬 vs. プラセボ | MR拮抗薬 vs. プラセボ | ||
UACRの平均差 | -31.03 (-28.35 ~ -33.72) | -32.97 (-29.68 ~ -36.27) |
SGLT-2阻害薬とMR拮抗薬の併用療法は、SGLT-2阻害薬、MR拮抗薬、またはプラセボの単独療法と比較して、アルブミン尿の低下と関連していました[平均差:それぞれ-34.19(95%CI -27.30 ~ -41.08)、-32.25(-24.53 ~ -39.97) および -65.22(-57.97 ~ -72.47)]。
SGLT-2阻害薬またはMR拮抗薬の単独投与は、プラセボと比較してUACRを有意に低下させた[平均差:それぞれ-31.03(-28.35 ~ -33.72)および-32.97(-29.68 ~ -36.27)]。MRAのUACRに対する効果は、SGLT2-Isの効果と同等でした。
感度分析においても同様の結果が得られました。
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アルブミン尿は予後不良因子であるため、予防作用(腎保護作用)を有する可能性のある薬剤の検証が求められています。SGLT-2阻害薬とMR拮抗薬は、それぞれアルブミン尿を抑制することが示されていますが、これらの併用療法に対する効果については充分に検証されていません。
さて、本試験によれば、ネットワークメタ解析の結果、2型糖尿病患者において、SGLT-2阻害薬とMR拮抗薬の併用療法は、SGLT-2阻害薬またはMR拮抗薬の単剤療法と比較して、アルブミン尿の低下と関連していました。
ただし、主要評価項目である尿中アルブミン-クレアチニン比(UACR)の変化については、併用療法の結果が抄録に示されておらず、さらに結論ではアルブミン尿にのみ触れていることから、やや “Spin(都合のよい解釈)” な表現の論文であると考えられます。クレアチニンの値が知りたいところではありますが、少なくともアルブミン尿を抑制する作用は、それぞれの単独療法よりも併用療法の方が優れていそうです。
より質の高いランダム化比較試験(プラグマティックも含む)での検討結果が待たれます。
続報に期待。
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