プロトンポンプ阻害薬の使用と薬剤耐性腸内細菌の獲得リスクとの関連性は?(コホート内症例対照研究; JAMA Netw Open. 2023)

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PPI使用は薬剤耐性腸内細菌の獲得リスクと関連しているのか?

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、薬剤耐性菌のコロニー形成リスクと関連していることが報告されています。しかし、生活習慣関連因子や疾患の重症度による交絡の可能性があり、この関連性に疑問が持たれています。

そこで今回は、PPI使用と薬剤耐性腸内細菌を獲得するリスクとの関連性を評価し、微生物学的変化をもたらす可能性のある薬剤との相互作用を検討した症例対照研究の結果をご紹介します。

このネステッドケースコントロール研究は、2018年12月31日から2021年1月6日の間にアムステルダム大学医療センターの微生物学研究所データベースから特定された2,239例の入院した成人(18歳以上)患者を対象としました。症例群の患者は、新たに検出された拡張スペクトルβ-ラクタマーゼ(ESBL)産生またはカルバペネマーゼ産生Enterobacterales(臨床検体により特定)を有していました。

リスクセットサンプリングにより、ESBLおよびカルバペネマーゼ産生Enterobacteralesが陰性であった患者を対照群に割り付け、年齢および培養日により症例群の患者と5:1の割合でマッチングさせました。

2つ目の検証ケースコントロール研究では、前向きに登録された患者のマッチングペア(1:1比、各群94例)が対象となりました。

曝露は培養の30日前(一次曝露)および90日前(二次曝露)のプロトンポンプ阻害薬の使用および臨床データであり、主要アウトカムは条件付きロジスティック回帰モデルを用いた、PPI用量および時間的リスクウィンドウ(主要アウトカムは30日、副次アウトカムは90日)によるESBL-またはカルバペネマーゼ産生Enterobacterales取得の調整済み発生率比(aIRR)でした。

試験結果から明らかになったことは?

入院患者2,239例(男性 51.1%、平均年齢 60.9[SD 16.7]歳)のうち、374例が症例群(男性 51.6%、平均年齢 61.1[SD 16.5]歳)、1,865例がマッチした対照群(男性 51.0%、平均年齢60.9[SD 16.7]歳)でした。

ESBL-またはカルバペネマーゼ産生Enterobacterales取得のaIRR
(30日時点)
PPI使用aIRR 1.48(95%CI 1.15~1.91
感度分析およびペアマッチ試験の分析aIRR 2.96(95%CI 1.14~7.74

全体のPPI使用のaIRRは、30日時点で1.48(95%CI 1.15~1.91)でした。感度分析およびプロスペクティブに登録された患者を対象としたペアマッチ試験の分析(aIRR 2.96、95%CI 1.14~7.74) でも同様の結果が得られました。結果はサブグループで一貫しており、陰性対照暴露分析で裏付けられました。

微生物学的撹乱剤(microbiome-disturbing agents:細菌叢を変化させることが知られている薬剤である免疫抑制剤など)との関連は認められませんでしたが。下剤と抗生物質は、単独で2倍以上の発症リスク増加と関連していました(抗生物質:aIRR 2.78、95%CI 2.14~3.59]、下剤:aIRR 2.26、95%CI 1.73~2.94)。

コメント

PPI使用が長期化することで薬剤耐性腸内細菌の獲得リスクが上昇することが報告されていますが、より短期的な曝露における影響、関連する交絡因子については充分に検討されていません。

さて、本試験によれば、症例対照研究の結果、PPIの使用は成人入院患者におけるESBLまたはカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌 (Enterobacterales)の獲得リスクの上昇と関連していました。また、細菌叢に影響を与える薬剤として、抗生物質と下剤が示唆されました。

これまでの報告も踏まえると、リスクを過大評価している可能性は低いと考えられます。PPI、抗生物質および下剤、いずれの薬剤も漫然敵に投与する薬剤ではないことから、改めて慎重な投与が求められます。

続報に期待。

person using a pipette

☑まとめ☑ 症例対照研究の結果、PPIの使用は成人入院患者におけるESBLまたはカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌 (Enterobacterales)の獲得リスクの上昇と関連していた。

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