メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下男性における低炭水化物食は勃起機能を改善する?(小規模Open-RCT; BMC Endocr Disord. 2023)

man lying on water and smiling 食事
Photo by Wendy Wei on Pexels.com
この記事は約6分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

低炭水化物食はテストステロンを増加させ性機能を改善できるのか?

メタボリックシンドロームはいくつかの疾患のリスクファクターです。なかでもメタボリックシンドロームと性腺機能低下症との関係はよく知られています。

過去の報告で、テストステロン低下と炭水化物または脂質の摂取量について検証されています。この結果によると、テストステロン低下は、炭水化物または脂質の摂取量多寡との関連ではなく、タンパク質の摂取量が過剰な場合に引き起こされていると考えられます。このメカニズムについては同報告において、高タンパク負荷により発生する高アンモニア血症に対する防御反応として、尿素サイクルがアップレギュレートされるためではないか、と考察されています。しかし、メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下男性における低炭水化物食の影響については充分に検証されていません。

そこで今回は、メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下症の男性において、低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、勃起機能を改善することができるかどうかを評価したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験は、メタボリックシンドロームの性腺機能低下男性を対象に、3ヵ月間、低炭水化物食と対照食を比較するオープンラベルランダム化臨床試験でした。人体計測値、血清総テストステロン値、ADAMおよびAMSスコアによる性腺機能低下症の症状、IIEF-5スコアによる性機能の評価が行われました。

試験結果から明らかになったことは?

合計22例の男性が参加しましたが、そのうち4例は初回訪問後に脱落し、対照群1例、低炭水化物群3例が個人的な問題で脱落しました。したがって、18例(対照群6例、低炭水化物群12例)が試験を完了しました。本研究は、2018年3月から2020年10月まで実施されました。

参加者の平均年齢は約60歳、体重 約97kg、BMI 31kg/m2でした。

IIEF(国際勃起機能)-5スコア*介入前介入後
対照群(6例)12
14.2
P=0.3 vs. 介入前
低炭水化物食群(12例)15.517.9
P=0.01 vs.介入前
*合計点数が21点以下の場合、勃起不全が疑われる。
AMS(男性更年期障害 質問票)スコア*介入前介入後
対照群(6例)41.8
44.7
P=0.3 vs. 介入前
低炭水化物食群(12例)45.9
34.8
P<0.01 vs.介入前
*合計点数が27点以上で更年期障害の疑い。重症度は3段階に分けられる。
対照群(6例)
介入前

介入後
低炭水化物食群(12例)
介入前

介入後
総テストステロン<300ng/dL(%)100
83.3
100
50
P=0.05 vs. 対照群
ADAMスコア*による性腺機能低下症の症状(%)10085.778.621.4
P<0.01 vs. 対照群
*androgen deficiency in aging maleスコア

体格測定は、低炭水化物食グループでのみ改善されました。また、介入群ではIIEF-5スコアが統計的に増加し、AMSとADAMスコアが有意に減少しました(p<0.001)。血清総テストステロン値の増加は、対照群と比較して低炭水化物群で統計的に有意であり、遊離テストステロンの算出値も同様でした(p<0.001)。

コメント

メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下男性において、低炭水化物食の効果は充分に検証されていません。

さて、本試験結果によれば、低炭水化物食は、メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下男性において、テストステロンの血清レベルを上昇させ、勃起機能を改善する可能性が示されました。しかし、低炭水化物食はテストステロンレベルを低下させることも過去に報告されています。また、本試験は18例と小規模な検討結果であることから、より大規模なランダム化比較試験での検証が求められます。

続報に期待。

man raising his right arm

☑まとめ☑ 低炭水化物食は、メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下男性において、テストステロンの血清レベルを上昇させ、勃起機能を改善する可能性がある。しかし、男性性腺機能低下症の治療における低炭水化物食の有効性を強く証明するためには、より大規模な研究が必要である。

根拠となった試験の抄録

目的:メタボリックシンドロームはいくつかの疾患のリスクファクターである。メタボリックシンドロームと性腺機能低下症との関係はよく知られている。我々の目的は、メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下症の男性において、低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、勃起機能を改善することができるかどうかを評価することである。

方法:メタボリックシンドロームの性腺機能低下男性を対象に、3ヵ月間、低炭水化物食と対照食を比較するオープンラベルランダム化臨床試験を実施した。人体計測値、血清総テストステロン値、ADAMおよびAMSスコアによる性腺機能低下症の症状、IIEF-5スコアによる性機能の評価が行われた。

結果:18例の男性が評価された。体格測定は、低炭水化物食グループでのみ改善された。また、介入群ではIIEF-5スコアが統計的に増加し、AMSとADAMスコアが有意に減少した(p<0.001)。血清総テストステロン値の増加は、対照群と比較して低炭水化物群で統計的に有意であり、遊離テストステロンの算出値も同様であった(p<0.001)。

結論:低炭水化物食は、メタボリックシンドロームを有する性腺機能低下男性において、テストステロンの血清レベルを上昇させ、勃起機能を改善する可能性がある。しかし、男性性腺機能低下症の治療における低炭水化物食の有効性を強く証明するためには、より大規模な研究が必要である。

キーワード:勃起不全、性腺機能低下症、低炭水化物ダイエット、メタボリックシンドローム、肥満

引用文献

The effects of a low carbohydrate diet on erectile function and serum testosterone levels in hypogonadal men with metabolic syndrome: a randomized clinical trial
Caio da Silva Schmitt et al. PMID: 36732722 PMCID: PMC9892661 DOI: 10.1186/s12902-023-01278-6
BMC Endocr Disord. 2023 Feb 2;23(1):30. doi: 10.1186/s12902-023-01278-6.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36732722/

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました