妊婦におけるmRNA COVID-19ワクチン接種と乳児におけるデルタあるいはオミクロンの感染・入院はどのように関連しているのか?(試験陰性症例対照研究; BMJ. 2023)

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妊婦のmRNA COVID-19ワクチン接種と乳児におけるデルタ株・オミクロン株への感染率や入院率との関連性はどのくらいなのか?

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)感染によるCOVID-19患者は世界中から報告されており、感染流行が終息する未来は一向に見えてきません。

妊婦などの特定の背景を有する患者におけるエビデンスは限られていますが、非妊婦と比較して、SARS-CoV-2感染により重症化・重篤化のリスクが増加することが明らかとなっています。そのため基本的な感染予防策の一つとしてワクチン接種が推奨されています。

感染流行株は刻一刻と変化することからワクチンの有効性に関するエビデンスのアップデートが求められます。そこで今回はデルタ株・オミクロン株の流行期間における妊婦を対象に、mRNA COVID-19ワクチン接種の効果を検証した試験陰性症例対照研究(試験陰性デザイン, test negative designとも表現される)の結果をご紹介します。本試験はカナダ、オンタリオ州のコミュニティと病院で行われました。

本試験では、SARS-CoV-2変異株であるデルタとオミクロンに対するワクチンの有効性検証として、妊婦と乳児における感染、感染による入院がアウトカムに設定されました。

試験参加者は、2021年5月7日から2022年3月31日に生まれた生後6ヵ月未満の乳児(2021年5月7日から2022年9月5日の間にSARS-CoV-2の検査を受けた)でした。

本試験の主要アウトカムは乳児における検査で確認されたデルタまたはオミクロンの感染、または入院。多変量ロジスティック回帰により、ワクチン接種および感染に関連する臨床的および社会人口学的特性を調整した上で、ワクチン効果を推定した。

試験結果から明らかになったことは?

デルタ陽性 99例(対照 4,365例)、オミクロン陽性 1,501例(対照 4,847例)を含む、8,809例の乳児が適格基準を満たし試験に参加しました。

(妊婦のワクチン2回接種)乳児における予防効果
(95%CI)
デルタ感染95%(88%~98%
デルタ感染による入院97%(73%~100%
オミクロン感染45%(37%~53%
オミクロン感染による入院53%(39%~64%

母体2回接種による乳児におけるワクチンの効果は、デルタ感染に対して95%(95%信頼区間 88%~98%)、デルタによる乳児入院に対して97%(73%~100%)、オミクロン感染に対して45%(37%~53%)、オミクロンによる入院に対して53%(39%~64%)でした。

(妊婦のワクチン3回接種)乳児における予防効果
(95%CI)
オミクロン感染73%(61%~80%
オミクロン感染による入院80%(64%~89%

ワクチン3回接種の効果は、オミクロン感染に対して73%(61%~80%)、オミクロンによる入院に対して80%(64%~89%)でした。

乳児のオミクロン感染に対するワクチン2回接種の効果は、妊娠の第1期(47%、31%~59%)、第2期(37%、24%~47%)に比べ、第3期(53%、42%~62%)で最も高いことが示されました。

乳児のオミクロン感染に対するワクチン2回接種の効果は、生後8週までは57%(44%~66%)でしたが、生後16週以降は40%(21%~54%)に減少しました。

コメント

mRNAは比較的新しいワクチンであり、安全性評価が求められています。妊婦に対する安全性・有効性評価のエビデンスが集積されてきており、ワクチン接種によりベネフィットがリスクを上回ることは明らかです。一方、母体が妊娠期にワクチンを接種することで、出生後の乳児に対しても効果が認められるのかについては、充分に検証されていません。

妊婦のCOVID-19ワクチン2回接種は、生後6ヵ月の乳児におけるデルタあるいはオミクロン感染と入院に対して高い効果を示しました。2回接種の効果は妊娠3ヵ月目の母体接種で最も高く、生後8週を過ぎると効果は低下しました。3回目のワクチン接種により、オミクロンに対する防御が強化されました。

やはり継続的なワクチン接種を必要とする集団がいる以上、集団免疫を獲得するために国民の半数以上がワクチンを継続的に接種することが求められます。自分自身を守るためだけでなく、傍をも守るために今できることを実践する必要があります。

続報に期待。

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✅まとめ✅ 妊婦のCOVID-19ワクチン2回接種は、生後6ヵ月の乳児におけるデルタあるいはオミクロン感染と入院に対して高い効果を示した。2回接種の効果は妊娠3ヵ月目の母体接種で最も高く、生後8週を過ぎると効果は低下した。3回目のワクチン接種により、オミクロンに対する防御が強化された。

根拠となった試験の抄録

目的:妊娠中の母親によるmRNA COVID-19ワクチン接種の、デルタおよびオミクロンの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)感染および乳児の入院に対する有効性を推定すること。

試験デザイン:テスト・ネガティブ・デザイン研究(試験陰性デザイン, test negative design)

試験設定:カナダ、オンタリオ州のコミュニティと病院

試験参加者:2021年5月7日から2022年3月31日に生まれた生後6ヵ月未満の乳児で、2021年5月7日から2022年9月5日の間にSARS-CoV-2の検査を受けた者

介入:妊娠中の母親によるmRNA COVID-19ワクチン接種

主要アウトカム評価項目:乳児における検査で確認されたデルタまたはオミクロンの感染、または入院。多変量ロジスティック回帰により、ワクチン接種および感染に関連する臨床的および社会人口学的特性を調整した上で、ワクチン効果を推定した。

結果:デルタ陽性 99例(対照 4,365例)、オミクロン陽性 1,501例(対照 4,847例)を含む、8,809例の乳児が適格基準を満たした。母体2回接種による乳児のワクチン効果は、デルタ感染に対して95%(95%信頼区間 88%~98%)、デルタによる乳児入院に対して97%(73%~100%)、オミクロン感染に対して45%(37%~53%)、オミクロンによる入院に対して53%(39%~64%)であった。ワクチン3回接種の効果は、オミクロン感染に対して73%(61%~80%)、オミクロンによる入院に対して80%(64%~89%)であった。乳児のオミクロン感染に対するワクチン2回接種の効果は、妊娠の第1期(47%、31%~59%)、第2期(37%、24%~47%)に比べ、第3期(53%、42%~62%)で最も高かった。乳児のオミクロン感染に対するワクチン2回接種の効果は、生後8週までの57%(44%~66%)から、生後16週以降は40%(21%~54%)に減少した。

結論:妊娠中の母親による2回目のCOVID-19ワクチン接種は、生後6ヵ月間の乳児のデルタ感染およびオミクロン感染と入院に対して高い効果を示し、中等度の効果を示した。3回目のワクチン接種により、オミクロンに対する防御が強化された。2回接種の効果は妊娠3ヵ月目の母体接種で最も高く、生後8週を過ぎると効果は低下した。

引用文献

Maternal mRNA covid-19 vaccination during pregnancy and delta or omicron infection or hospital admission in infants: test negative design study
Sarah C J Jorgensen et al. PMID: 36754426 PMCID: PMC9903336 DOI: 10.1136/bmj-2022-074035
BMJ. 2023 Feb 8;380:e074035. doi: 10.1136/bmj-2022-074035.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36754426/

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