健康な成人における学業ストレス誘発性睡眠障害に対するヤクルトY1000の効果はどのくらいですか?(DB-RCT; Benef Microbes. 2017)

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ヤクルトY1000の睡眠障害に対する効果はどのくらいか?

2021年に発売された乳製品乳酸菌飲料「Y1000」は、1mL当たり10億個の生きた「乳酸菌シロタ株」を含む乳製品乳酸菌飲料です。本品は機能性表示食品であり、「乳酸菌シロタ株」には、一時的な精神的ストレスがかかる状況における「ストレス緩和」や「睡眠の質向上」の機能があることが報告されています。しかし、実際に得られる効果の程度については不明です。

そこで今回は、Y1000の成分であるLactobacillus casei strain Shirota(LcS)が心理的ストレス下で睡眠の質を向上させるかどうかを検討したプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験の結果をご紹介します。

本試験では学業の試験ストレスにさらされた健康な医学部4年生を対象(2年連続で異なるグループの学生で繰り返され、データはプールされた)に、全国統一試験の8週間前と3週間後に、合計48例と46例の被験者に、それぞれ1日100mLのLcS発酵乳(乳酸菌シロタ株を10億個/mL含有した乳製品。※商品名:Y1000は110mL/本)または非発酵のプラセボ乳製品を摂取させました。

測定項目は、主観的不安、一晩のシングルチャンネル脳波記録、主観的睡眠の質を表す小栗・白川・安曇(OSA)睡眠インベントリースコアなどでした。

試験結果から明らかになったことは?

https://www.yakult.co.jp/company/news/file.php?type=release&id=162925793150.pdfより引用

OSAスコアの合計(主観的睡眠の質を評価)は、試験前日にはベースラインより有意に低く、試験後には回復し、ストレスによる睡眠の質の低下が示唆されました。

LcS群では、起床時の眠気と睡眠時間のOSA因子に対して、有意な正の効果を示した。脳波で測定した睡眠潜時は、プラセボ群では試験が近づくにつれて長くなりましたが、LcS群では有意に抑制されました。ノンレム睡眠(N3)の割合は、プラセボ群では試験が近づくにつれて減少したが、LcS群では試験中も維持されました。睡眠強度の指標として測定される最初の睡眠サイクルのデルタパワーは、試験が近づくにつれLcS群で増加し、プラセボ群に比べ有意に高くなりました。

コメント

ヤクルト1000と同程度の乳酸菌が含まれているY1000においても、睡眠の質を向上する機能を有しているとされ、機能性表示食品に分類されます。しかし、実臨床における効果については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、ヤクルトY1000をストレスが増加する時期の前8週間と後3週間に摂取すると、プラセボと比較して、睡眠の質を維持することができる可能性が示されました。

本試験で用いられたのはOSA睡眠調査票のMA版であり、オリジナルのOSA睡眠調査票と比較して、より客観的な指標とされています。しかし、OSAスコアはベースが主観的な評価であり、バイアス排除が困難であると考えられます。そのため、本試験では脳波が測定されており、その結果はOSAスコアの結果を裏付けるものでした。ただし、OSAスコアのMCID(臨床的に意義のある差異の最小差)は報告されておらず、実臨床における効果は不明です。つまり、スコア約2の群間差が、治療の有効性が得られたと判断できる評価尺度の変化量として充分であるとは言えない、ということです。また、本試験の対象者は医学生であり、ストレスの主要因は大学の試験です。他の年齢層やストレス要因に対する効果については不明です。より大規模かつ堅牢な試験デザインでの検証が求められます。

続報に期待。

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☑まとめ☑ ヤクルトY1000をストレスが増加する時期の前8週間と後3週間に摂取すると、プラセボと比較して、睡眠の質を維持することができるかもしれないが、実臨床における効果は不明である。

根拠となった試験の抄録

背景:本研究では、Lactobacillus casei strain Shirota(LcS)が心理的ストレス下で睡眠の質を向上させるかどうかを検討した。

方法:試験ストレスにさらされた健康な医学部4年生を対象に、プラセボ対照二重盲検試験を実施した。この試験は、2年連続で異なるグループの学生で繰り返され、データはプールされた。全国統一試験の8週間前と3週間後に、合計48例と46例の被験者に、それぞれ1日100mLのLcS発酵乳(乳酸菌シロタ株を10億個/mL含有、商品名:Y1000)または非発酵のプラセボ乳を摂取させた。研究測定は、主観的不安、一晩のシングルチャンネル脳波記録、主観的睡眠の質を表す小栗・白川・安曇(OSA)睡眠インベントリースコアなどであった。

結果:OSAスコアの合計(主観的睡眠の質を評価)は、試験前日にはベースラインより有意に低く、試験後には回復し、ストレスによる睡眠の質の低下が示唆された。LcS群では、起床時の眠気と睡眠時間のOSA因子に対して、有意な正の効果を示した。脳波で測定した睡眠潜時は、プラセボ群では試験が近づくにつれて長くなったが、LcS群では有意に抑制された。ノンレム睡眠(N3)の割合は、プラセボ群では試験が近づくにつれて減少したが、LcS群では試験中も維持された。睡眠強度の指標として測定される最初の睡眠サイクルのデルタパワーは、試験が近づくにつれLcS群で増加し、プラセボ群に比べ有意に高くなった。

結論:これらの結果は、LcSを毎日摂取することで、ストレスが増加する時期に睡眠の質を維持することができる可能性を示唆している。LcS群で観察されたN3睡眠の保持とデルタパワーの増加は、より高い睡眠満足度の知覚に寄与している可能性がある。

キーワード:プロバイオティクス、心理的ストレス、睡眠の質

引用文献

Beneficial effects of Lactobacillus casei strain Shirota on academic stress-induced sleep disturbance in healthy adults: a double-blind, randomised, placebo-controlled trial
M Takada et al. PMID: 28443383 DOI: 10.3920/BM2016.0150
Benef Microbes. 2017 Apr 26;8(2):153-162. doi: 10.3920/BM2016.0150.
— 読み進める pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28443383/

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