メトホルミン使用は左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)患者の死亡リスクを低下できますか?(観察研究のメタ解析; Cardiovasc Diabetol. 2020)

02_循環器系
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メトホルミンは心不全患者の予後良好と関連しているが、、、

観察研究では、心不全(HF)患者においてメトホルミンの死亡率改善効果が示唆されています。しかし、左室駆出率が維持された心不全(HFpEF)におけるメトホルミンの有用性については充分に検討されていません。

そこで今回は、メトホルミン治療を受けたHF患者において、左室駆出率の差異が死亡率に影響を与えるかどうかを明らかにした系統的レビュー・メタ解析の結果をご紹介します。

本試験では、2019年10月までのMEDLINEおよびEMBASEを検索し、HF患者の死亡率およびベースライン時のEF>50%の患者の割合を報告した観察研究および無作為化試験を対象としました。その他のベースライン変数は、群間の治療成績の異質性を評価するために使用されました。死亡率に関するメトホルミンとサブグループの相互作用を明らかにするために、回帰モデルが用いられました。

試験結果から明らかになったことは?

4件の研究でEFが保たれている患者の割合が報告され、分析されました。

メトホルミンは、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)やβ遮断薬などのHF治療で調整した後、EFが保たれている場合と保たれていない場合の両方で死亡率を減少させました(β=- 0.2、95%CI -0.3 〜 -0.1、p=0.02)。EFが50%を超えると有意に大きな予防効果がみられました(p=0.003)。メトホルミン治療において、インスリン、ACEi、β遮断薬治療との併用においても死亡率を低下させることが示されましたが(インスリン p=0.002; ACEi p<0.001; β遮断薬 p=0.017)、性別としての女性は予後不良と関連していました(p<0.001)

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メトホルミン(商品名:メトグルコ)の添付文書では、以下のように禁忌として心不全の記載があります。これは、乳酸アシドーシスのリスクが増加するために設定されていますが、ベースのメトホルミンによる乳酸アシドーシス発生リスクは低く、実際、心不全患者においても使用されています。しかし、左室駆出率の違いによる検証は充分ではありません。

「心血管系、肺機能に高度の障害(ショック、心不全、心筋梗塞、肺塞栓等)のある患者及びその他の低酸素血症を伴いやすい状態にある患者」 - メトグルコ添付文書より

さて、本試験結果によれば、メトホルミン投与はHFpEF患者の死亡率低下と関連していました。しかし、本試験は観察研究4件のメタ解析の結果であること、研究間の異質性が中程度(I2=58%)であることから、今後の試験結果によっては、得られる解析結果が変わる可能性があります。

メトホルミンは実臨床で50年以上の長期間に渡り使用されている薬剤であることから、新たな安全性の懸念はほぼなく、糖尿病に合併する様々な疾患に対してハードアウトカム発生リスクを低下できる可能性があることから、まだまだ研究材料となっているようです。

続報に期待。

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✅まとめ✅ メトホルミン投与はHFpEF患者の死亡率低下と関連していたが、観察研究4件のメタ解析の結果であること、研究間の異質性が中程度であることから、得られる結果が覆る可能性がある。

根拠となった試験の抄録

背景:観察研究では、心不全(HF)患者においてメトホルミンの死亡率改善効果が示唆されている。しかし、駆出率が維持された心不全(HFpEF)におけるメトホルミンの有用性についてはまだ検討されていない。我々は、メトホルミン治療を受けたHF患者において、駆出率のばらつきが死亡率に影響を与えるかどうかを明らかにするために、系統的レビューとメタ解析を実施した。

方法:2019年10月までのMEDLINEおよびEMBASEを検索した。HF患者の死亡率およびベースライン時のEF>50%の患者の割合を報告した観察研究および無作為化試験を対象とした。その他のベースライン変数は、群間の治療成績の異質性を評価するために使用した。死亡率に関するメトホルミンとサブグループの相互作用を明らかにするために、回帰モデルを使用した。

結果:4件の研究でEFが保たれている患者の割合が報告され、分析された。メトホルミンは、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)やβ遮断薬などのHF治療で調整した後、EFが保たれている場合と保たれていない場合の両方で死亡率を減少させた(β=- 0.2、95%CI -0.3 〜 -0.1、p=0.02)。EFが50%を超えると有意に大きな予防効果がみられた(p=0.003)。メトホルミン治療において、インスリン、ACEi、β遮断薬治療との併用においても死亡率を低下させることが示されたが(インスリン p=0.002; ACEi p<0.001; β遮断薬 p=0.017)、女性の性別は予後不良と関連していた(p<0.001)。

結論:メトホルミン投与はHFpEF患者の死亡率低下と関連する。

キーワード:糖尿病、駆出率、心不全、メトホルミン

引用文献

Metformin treatment in heart failure with preserved ejection fraction: a systematic review and meta-regression analysis
Amera Halabi et al. PMID: 32758236 PMCID: PMC7409497 DOI: 10.1186/s12933-020-01100-w
Cardiovasc Diabetol. 2020 Aug 5;19(1):124. doi: 10.1186/s12933-020-01100-w.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32758236/

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