心血管(CV)イベントに対するダパグリフロジンの有効性は併用薬により影響を受けるのか?
ダパグリフロジンは、2型糖尿病患者における心血管(CV)および腎臓の転帰を抑制することが示されました。しかし、2型糖尿病患者におけるCV治療薬との併用による効果や安全性との関係についてはデータが限られています。
2型糖尿病患者において、心不全(HF)および腎臓病に対して一般的に使用されるCV薬のバックグラウンド使用の有無にかかわらず、ダパグリフロジンの心腎系の有効性および安全性が一致するかどうかを評価したランダム化比較試験の事後解析の結果をご紹介します。
本試験は、2型糖尿病で動脈硬化性疾患またはCV疾患の複数の危険因子を有する患者17,160例を対象にダパグリフロジン対プラセボのランダム化試験を行ったDECLARE-TIMI 58の事前規定による2次解析です。患者は、ベースラインのCV治療薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ACEI/ARB)、β遮断薬、利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の使用により層別化されました。本試験は2013年5月から2018年9月まで実施され、本解析のためのデータ評価は2021年2月から2022年5月まで実施されました。
本試験で対象としたアウトカムは、CV死亡またはHFによる入院(HHF)の複合、HHF単独、腎臓特異的複合アウトカム(推定糸球体濾過量[eGFR]の持続的40%以上の減少、末期腎不全、腎臓関連死亡)でした。
試験結果から明らかになったことは?
ベースライン時の17,160例中、ACEI/ARBを13,950例(81%)、β遮断薬を9,030例(53%)、利尿薬を6,205例(36%)、MRAを762例(4%)が使用していました。
ダパグリフロジンの48ヵ月後の血圧とeGFRの変化は、プラセボと比較して、併用療法にかかわらず差がありませんでした(プラセボ補正後の変化 -1.6mmHg [95%CI -4.2 〜 1.0] 〜 -2.6mmHg [95%CI -3.3 〜 -2.9]; それぞれの交互作用のP>0.05)。
CV死亡/HHF、HHF単独、腎臓特異的複合転帰の発生リスク (ハザード比 HRの範囲) | ||
全体(17,160例) | HR 0.50、95%CI 0.39〜0.63 交互作用のP>0.05 | HR 0.82、95%CI 0.72〜0.95 交互作用のP>0.05 |
ACEI/ARBs+β遮断薬+利尿薬投与患者(4,243例) | ハザード比 HR |
CV死亡/HHFの発生リスク | HR 0.76、95%CI 0.62〜0.93 |
腎臓特異的転帰の発生リスク | HR 0.62、95%CI 0.44〜0.87 |
ダパグリフロジンは、選択した薬剤のバックグラウンド使用にかかわらず、CV死亡/HHF、HHF単独、腎臓特異的複合転帰のリスクを一貫して低下させました(ハザード比[HR] 0.50、95%CI 0.39〜0.63; HR 0.82、95%CI 0.72〜0.95; それぞれの交互作用のP>0.05)。
ACEI/ARBs+β遮断薬+利尿薬投与患者(4,243例)において、ダパグリフロジンはCV死亡/HHFのリスクを24%(HR 0.76、95%CI 0.62〜0.93)、腎臓特異的転帰のリスクを38%(HR 0.62、95%CI 0.44〜0.87)それぞれ低下させました。
体積減少、急性腎障害、高カリウム血症の有害事象については、併用したCV薬との有意な治療相互作用は認められませんでした(範囲:HR 0.12、95%CI 0.02〜0.99; HR 1.04、95%CI 0.83〜1.32; それぞれの交互作用のP>0.05)。
コメント
SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンは、2型糖尿病患者の心血管(CV)リスクを低減しますが、併用薬の違いによって得られる利益が異なるのかについては明らかとなっていません。
さて、本試験結果によれば、ダパグリフロジンは、様々なCVイベント治療薬のバックグラウンドでの使用にかかわらず、主要な安全性イベントに対する治療交互作用なしに、CVおよび腎臓の転帰のリスクを一貫して減少させました。
つまり、ダパグリフロジンの有効性は、併用薬による影響を受けない、ということになります。ただし、ACEI/ARBs+β遮断薬+利尿薬を併用している患者集団においては、ダパグリフロジンによりCV死亡/HHFリスク、腎臓特異的転帰のリスクをより低減させることが示されました。
あくまでも事後解析であることから、仮説生成的な結果です。追試や他試験の追加解析が求められます。
続報に期待。
✅まとめ✅ ダパグリフロジンは、様々な心血管(CV)イベント治療薬のバックグラウンドでの使用にかかわらず、主要な安全性イベントに対する治療交互作用なしに、CVおよび腎臓の転帰のリスクを一貫して減少させた。
根拠となった試験の抄録
試験の重要性:ダパグリフロジンは、2型糖尿病患者における心血管(CV)および腎臓の転帰を抑制することが示された。しかし、2型糖尿病患者におけるCV治療薬との併用による効果や安全性との関係についてはデータが限られている。
目的:2型糖尿病患者において、心不全(HF)および腎臓病に対して一般的に使用されるCV薬のバックグラウンド使用の有無にかかわらず、ダパグリフロジンの心腎系の有効性および安全性が一致するかどうかを評価すること。
試験デザイン、設定、参加者:本試験は、2型糖尿病で動脈硬化性疾患またはCV疾患の複数の危険因子を有する患者17,160例を対象にダパグリフロジン対プラセボのランダム化試験を行ったDECLARE-TIMI 58の事前規定による2次解析である。患者は、ベースラインのCV治療薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ACEI/ARB)、β遮断薬、利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の使用により層別化された。本試験は2013年5月から2018年9月まで実施され、本解析のためのデータ評価は2021年2月から2022年5月まで実施された。
介入:ダパグリフロジンまたはプラセボ
主要アウトカムと測定方法:対象としたアウトカムは、CV死亡またはHFによる入院(HHF)の複合、HHF単独、腎臓特異的複合アウトカム(推定糸球体濾過量[eGFR]の持続的40%以上の減少、末期腎不全、腎臓関連死亡)であった。
結果:ベースライン時の17,160例中、ACEI/ARBを13,950例(81%)、β遮断薬を9,030例(53%)、利尿薬を6,205例(36%)、MRAを762例(4%)が使用した。ダパグリフロジンの48ヵ月後の血圧とeGFRの変化は、プラセボと比較して、併用療法にかかわらず差がなかった(プラセボ補正後の変化 -1.6mmHg [95%CI -4.2 〜 1.0] 〜 -2.6mmHg [95%CI -3.3 〜 -2.9]; それぞれの交互作用のP>0.05)。ダパグリフロジンは、選択した薬剤のバックグラウンド使用にかかわらず、CV死亡/HHF、HHF単独、腎臓特異的複合転帰のリスクを一貫して低下させた(ハザード比[HR] 0.50、95%CI 0.39〜0.63; HR 0.82、95%CI 0.72〜0.95; それぞれの交互作用のP>0.05)。ACEI/ARBs+β遮断薬+利尿薬投与患者(4,243例)において、ダパグリフロジンはCV死亡/HHFのリスクを24%(HR 0.76、95%CI 0.62〜0.93)、腎臓特異的転帰のリスクを38%(HR 0.62、95%CI 0.44〜0.87)それぞれ低下させた。体積減少、急性腎障害、高カリウム血症の有害事象については、併用したCV薬との有意な治療相互作用は認められなかった(範囲:HR 0.12、95%CI 0.02〜0.99; HR 1.04、95%CI 0.83〜1.32; それぞれの交互作用のP>0.05)。
結論と関連性:ダパグリフロジンは、様々なCV治療薬のバックグラウンドでの使用にかかわらず、主要な安全性イベントに対する治療交互作用なしに、CVおよび腎臓の転帰のリスクを一貫して減少させた。これらのデータは、バックグラウンドの治療にかかわらず、幅広い2型糖尿病患者におけるダパグリフロジンの臨床的有用性と安全性を示している。
臨床試験登録:ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01730534
引用文献
Efficacy and Safety of Dapagliflozin According to Background Use of Cardiovascular Medications in Patients With Type 2 Diabetes: A Prespecified Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial
Kazuma Oyama et al. PMID: 35857296 PMCID: PMC9301591 (available on 2023-07-20) DOI: 10.1001/jamacardio.2022.2006
JAMA Cardiol. 2022 Sep 1;7(9):914-923. doi: 10.1001/jamacardio.2022.2006.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35857296/
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