スマートウォッチであるFitbitは心房細動を精確に検出できるのか?
未診断の心房細動による罹患は、早期発見により予防できる可能性があります。多くの消費者向けウェアラブルには、脈拍を測定するための光電式容積脈波(PPG)センサーが搭載されています。不規則な心拍を検出するPPGベースのソフトウェアアルゴリズムは、ウェアラブルを使用する大規模な集団において診断されていない心房細動を特定する可能性がありますが、偽陽性検出を最小限に抑えることが不可欠です。
そこで今回は、さまざまな手首装着型デバイスから未診断の心房細動を検出するための新しいPPGベースのアルゴリズムを検討するために実施された前向き遠隔臨床試験(Fitbit Heart試験)の結果をご紹介します。
本試験では、互換性のあるウェアラブルFitbitデバイスとAndroidまたはiOSスマートフォンを使用する、心房細動と診断されていない米国の22歳以上の成人が対象となりました。PPGデータは、重なり合う5分間のパルスウィンドウ(タコグラム)を調べる新規アルゴリズムを用いて解析されました。連続11回の不規則タコグラムと定義される不規則心拍検出(IHRD)を行った適格参加者には、テレヘルス訪問の予定を立てるよう案内し、1週間の外来ECGパッチモニターを郵送しました。
本試験の主要アウトカムは、心電図パッチモニター中の最初のIHRDの心房細動併発に対する陽性予測値でした。
試験結果から明らかになったことは?
2020年5月6日から10月1日の間に、合計455,699例が登録されました(年齢中央値 47歳、女性 71%、白人 73%)。
不規則心拍検出(IHRD)は中央値 122日(四分位範囲 110〜134)のIHRDリスク日数の間に、4,728例(1%)の参加者に発生し、65歳以上の2,070例(4%)に発生しました。
不規則心拍検出の陽性予測値 | |
参加者の全体 | 98.2%(95%CI 95.5%~99.5%) |
65歳以上の参加者 | 97.0%(95%CI 91.4%〜99.4%) |
IHRDの通知を受け、その後分析可能なECGパッチモニターを装着した1,057例のうち、340例(32.2%)に心房細動(AF)の存在が確認されました。ECGパッチモニター中に別のIHRDが認められた参加者225例のうち、221例はECGでAFを併発しており、4例は併発していなかったことから、IHRD陽性予測値は98.2%(95%CI 95.5%~99.5%)となりました。65歳以上の参加者では、IHRD陽性予測値は97.0%(95%CI 91.4%〜99.4%)でした。
コメント
スマートウォッチであるアップルウォッチ(Apple Watch)による心房細動の検出・特定を行えることが示され、医療機器として認められています。一方、フィットビット(Fitbit)については、充分に検討されていません。
さて、本試験結果によれば、脈拍測定ソフトウェアアルゴリズムを搭載したスマートウォッチFitbitは、同時心房細動の高い陽性予測値を示し、その後のECGパッチモニタリングで心房細動を有する可能性が高い参加者を特定しました。
参加者の年齢に関わらず、Fitbitも心房細動を検出できるスマートウォッチであることが示されました。
続報に期待。
✅まとめ✅ 脈拍測定ソフトウェアアルゴリズムを搭載したスマートウォッチFitbitは、同時心房細動の高い陽性予測値を示し、その後のECGパッチモニタリングで心房細動を有する可能性が高い参加者を特定した。
根拠となった試験の抄録
背景:未診断の心房細動による罹患は、早期発見により予防できる可能性がある。多くの消費者向けウェアラブルには、脈拍を測定するための光電式容積脈波(PPG)センサーが搭載されている。不規則な心拍を検出するPPGベースのソフトウェアアルゴリズムは、ウェアラブルを使用する大規模な集団において診断されていない心房細動を特定する可能性があるが、偽陽性検出を最小限に抑えることが不可欠である。
方法:さまざまな手首装着型デバイスから未診断の心房細動を検出するための新しいPPGベースのアルゴリズムを検討するために、前向き遠隔臨床試験を実施した。互換性のあるウェアラブルFitbitデバイスとAndroidまたはiOSスマートフォンを使用する、心房細動と診断されていない米国の22歳以上の成人が対象となった。PPGデータは、重なり合う5分間のパルスウィンドウ(タコグラム)を調べる新規アルゴリズムを用いて解析された。連続11回の不規則タコグラムと定義される不規則心拍検出(IHRD)を行った適格参加者には、テレヘルス訪問の予定を立てるよう案内し、1週間の外来ECGパッチモニターを郵送した。
主要アウトカムは、心電図パッチモニター中の最初のIHRDの心房細動併発に対する陽性予測値であった。
結果:2020年5月6日から10月1日の間に、合計455,699例が登録された(年齢中央値 47歳、女性 71%、白人 73%)。IHRDは4,728例(1%)の参加者に発生し、中央値 122日(四分位範囲 110〜134)のIHRDリスク日数の間に65歳以上の2,070例(4%)の参加者に発生した。IHRDの通知を受け、その後分析可能なECGパッチモニターを装着した1,057例のうち、340例(32.2%)にAFが存在した。ECGパッチモニター中に別のIHRDがあった225例の参加者のうち、221例はECGでAFを併発しており、4例は併発していなかったことから、IHRD陽性予測値は98.2%(95%CI 95.5%~99.5%)となった。65歳以上の参加者では、IHRD陽性予測値は97.0%(95%CI 91.4%〜99.4%)であった。
結論:ウェアラブルFitbitデバイスのための新しいPPGソフトウェアアルゴリズムは、同時心房細動の高い陽性予測値を示し、その後のECGパッチモニタリングで心房細動を有する可能性が高い参加者を特定した。ウェアラブルデバイスは、未診断の心房細動患者の特定を容易にする可能性がある。
試験登録:Clinicaltrials: gov; Unique identifier: NCT04380415.
キーワード:心房細動、診断スクリーニングプログラム、デジタル技術、光電式容積脈波、ウェアラブル電子機器
引用文献
Detection of Atrial Fibrillation in a Large Population Using Wearable Devices: The Fitbit Heart Study
Steven A Lubitz et al. PMID: 36148649 PMCID: PMC9640290 DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.122.060291
Circulation. 2022 Nov 8;146(19):1415-1424. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.122.060291. Epub 2022 Sep 23.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36148649/
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