治療抵抗性高血圧患者における降圧薬の第4選択薬は何が良いのか?
高血圧治療ガイドライン2019によれば、積極的適応がない場合の高血圧に対しては、最初に投与すべき降圧薬として、Ca拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬のなかから選択するよう記載されています。これは臨床試験の結果、心血管イベント発生の抑制効果が示されているためです。
治療抵抗性高血圧は、利尿薬を含むクラスの異なる3剤の降圧薬を用いても血圧が目標まで下がらないものと定義されています。したがって、一般的な治療薬としてCa拮抗薬、ACE阻害薬/ARB、利尿薬を使用している状態であると考えられます。そして、治療コントロールのために4剤目の降圧薬の使用が求められます。治療抵抗性高血圧患者における降圧薬の第4選択薬としてのアルドステロン拮抗薬とβ遮断薬の長期有効性と安全性については、限られたエビデンスしか存在しません。
そこで今回は、リアルワールドデータを用いて、アルドステロン拮抗薬とβ遮断薬の有効性と安全性を比較検討した後向きコホート研究の結果をご紹介します。
本試験では、IBM MarketScanの商業クレームとMedicare Supplementalクレーム(2007~2019)を用いられました。治療抵抗性高血圧患者は、アルドステロン拮抗薬またはβ遮断薬のいずれかを新たに開始した時点でコホートに組み入れられました(インデックス日)。本試験の有効性アウトカムは主要な有害心血管イベント、安全性アウトカムは、高カリウム血症、女性化乳房、腎機能悪化でした。
試験結果から明らかになったことは?
治療抵抗性高血圧患者80,598例(平均年齢61歳、男性51%)を同定し、そのうち4剤目の降圧剤としてアルドステロン拮抗薬開始したのが6,626例、β遮断薬を開始したのが73,972例でした。
調整ハザード比 aHR | |
主要有害心血管イベント | aHR 0.77 (95%CI 0.50〜1.19) |
高カリウム血症 | aHR 3.86 (95%CI 2.78〜5.34) |
女性化乳房 | aHR 9.51 (95%CI 5.69〜15.89) |
腎機能悪化 | aHR 1.63 (95%CI 1.34〜1.99) |
治療抵抗性高血圧患者において、第4選択降圧剤としてアルドステロン拮抗薬を開始しても、β遮断薬を開始した場合と比較して主要有害心血管イベントリスクは有意に減少しませんでした(aHR 0.77、95%CI 0.50〜1.19)。
一方、アルドステロン拮抗薬を使用すると、高カリウム血症(aHR 3.86、95%CI 2.78〜5.34)、女性化乳房(aHR 9.51、95%CI 5.69〜15.89)、および腎機能悪化(aHR 1.63、95%CI 1.34〜1.99)リスクが大幅に増加しました。
コメント
治療抵抗性高血圧患者に対する4剤目の降圧薬として、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を含むアルドステロン拮抗薬を使用した方が良いのか、β遮断薬を使用した方が良いのかについて、結論が得られてません。
さて、本試験結果によれば、治療抵抗性高血圧患者において、第4選択降圧剤としてアルドステロン拮抗薬を開始しても、β遮断薬を開始した場合と比較して主要有害心血管イベントリスクは有意に減少しませんでした。したがって、どちらを使用しても良さそうですが、有害事象あるいは副作用として、高カリウム血症、女性化乳房、そして腎機能悪化リスクが示されました。
本試験結果からだけでは結論づけられませんが、治療抵抗性高血圧患者における4剤目の降圧薬としてはβ遮断薬を使用する方が有用であると考えられます。β遮断薬は徐脈や低血糖をマスクすることがあるため、併存疾患によりアルドステロン拮抗薬を使用した方が良い場合もあると考えられます。
ただし、本試験は後向きコホート研究であることから、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。
続報に期待。
✅まとめ✅ 治療抵抗性高血圧症に対する4剤目の降圧薬としては、アルドステロン拮抗薬よりもβ遮断薬を使用した方が良いのかもしれない。併存疾患による使い分けが求められる。
根拠となった試験の抄録
背景:治療抵抗性高血圧患者における降圧薬の第4選択薬としてのアルドステロン拮抗薬とβ遮断薬の長期有効性と安全性については、限られたエビデンスしか存在しない。我々は、アルドステロン拮抗薬とβ遮断薬の有効性と安全性を比較検討した。
方法:IBM MarketScanの商業クレームとMedicare Supplementalクレーム(2007~2019)を用いて、実世界の後方視的コホート研究を実施した。治療抵抗性高血圧患者は、アルドステロン拮抗薬またはβ遮断薬のいずれかを新たに開始した時点でコホートに組み入れられた(インデックス日)。
有効性アウトカムは主要な有害心血管イベントとした。
安全性アウトカムは、高カリウム血症、女性化乳房、腎機能悪化とした。
潜在的な交絡は、傾向スコアに基づく安定化逆確率治療重み付け(SIPTW)によりベースライン特性を調整することで対処された。SIPTWを用いたCox比例ハザード回帰により、アルドステロン拮抗薬群とβ遮断薬群の転帰リスクを比較する調整済みハザード比(aHR)および95%CIを算出した。
結果:治療抵抗性高血圧患者80,598例(平均年齢61歳、男性51%)を同定し、そのうち4剤目の降圧剤としてアルドステロン拮抗薬開始したのが6,626例、β遮断薬を開始したのが73,972例でした。治療抵抗性高血圧患者において、第4選択降圧剤としてアルドステロン拮抗薬を開始しても、β遮断薬を開始した場合と比較して主要有害心血管イベントリスクは有意に減少しなかった(aHR 0.77、95%CI 0.50〜1.19)。一方、高カリウム血症(aHR 3.86、95%CI 2.78〜5.34)、女性化乳房(aHR 9.51、95%CI 5.69〜15.89)、および腎機能悪化(aHR 1.63、95%CI 1.34〜1.99)リスクを大幅に増加させた。
結論:抵抗性高血圧の第4選択薬としてのアルドステロン拮抗薬のリスクとベネフィットのトレードオフを理解するためには、主要な心血管有害事象を評価するための動力を備えた長期臨床試験が必要である。
キーワード:アドレナリンβ拮抗薬、アルドステロン拮抗薬、比較効果研究、高血圧症、安全性
引用文献
Comparative Safety and Effectiveness of Aldosterone Antagonists Versus Beta-Blockers as Fourth Agents in Patients With Apparent Resistant Hypertension
Raj Desai et al. PMID: 35880517 DOI: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19280
Hypertension. 2022 Oct;79(10):2305-2315. doi: 10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.19280. Epub 2022 Jul 26.
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