動脈硬化性疾患および心不全を有する糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬へのGLP-1RA追加は有益ですか?(後向きコホート研究; AJC 2022)

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SGLT2阻害薬へGLP-1受容体作動薬を追加した場合の有益性は?

2型糖尿病(T2DM)は、米国で約2,600万人が罹患しています(PMID: 33501848)。T2DM患者の約35%が動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有し、そのうち3%が駆出率低下型の心不全(HFrEF)を併発していることが報告されています(PMID: 34154020)。

ナトリウム・グルコース共輸送担体2阻害薬(SGLT2i)およびグルカゴン様ペプチド1受容体作動薬(GLP1a)は、T2DMおよびASCVDを有する患者において、それぞれ心血管イベントリスクを14%減少させ、SGLT2iは心不全による入院(HFH)リスクを31%減少させることが示されています(PMID: 30786725) 。 このため、診療ガイドラインでは、T2DMおよびASCVDを有する患者に対して、これらの薬効の早期開始を推奨しています(PMID: 31497854PMID: 32771263ADA2021)。また、SGLT2iはHFrEF患者における第一選択薬として推奨されています(PMID: 32771263ADA2021)。しかし、両薬剤の使用により、心血管疾患の治療効果が相加的に得られるかどうかは不明であることが報告されています(ADA2021)。

そこで今回は、既にSGLT2iによる治療を受けているHFrEF、T2DM、およびASCVDを有している患者における治療レジメンにGLP1aを追加することにより、さらなる臨床的有用性がもたらされるかどうかを評価した後向きコホート研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

5,576例の患者コホートから、343例が各試験群に傾向マッチされました。

SGLT2i+GLP1aSGLT2i併用によるリスク減少率
主要評価項目
(複合イベントの発生率)
13件
(4%)
39件
(11%)
67%
信頼区間 0.138~0.714
p=0.007

SGLT2iへのGLP1a追加により、SGLT2i治療と比較して複合イベント(HFHと、全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)の1年リスクが67%減少しました(信頼区間 0.138~0.714、p=0.007)。

HFHのリスクは両群間で有意差はありませんでした(p=0.199)。非マッチデータセットでの感度分析でも、これらの知見が確認されました。

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2型糖尿病に対する治療薬は、多くの種類が上市されています。治療クラスのなかでもSGLT2阻害薬(SGLT2i)とGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、心血管イベントの発症抑制効果が示されていることから、欧米の診療ガイドラインにおいて推奨度が高く設定されています。しかし、これらの薬剤を併用した際に得られる有益性については明らかとなっていません。

さて、本試験結果によれば、SGLT2阻害薬へのGLP-1受容体作動薬の追加は、2型糖尿病およびASCVDを有する心不全(HFrEF)患者の複合心血管イベントを減少させる可能性が示されました。

内訳として、SGLT2iとGLP-1aによる併用療法群では、1年以内の死亡リスクはSGLT2iのみの治療群に比べて76%(CI 0.076~0.647; p=0.008)低く、3年時点でも72%(CI 0.171~0.460; p<0.001)とリスク低下が維持されていました。一方、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中のリスク低下については、群間差がありませんでした。

ただし、本試験は後向きコホート研究の結果であることから、あくまでも相関関係が示されたにすぎません。また、併用療法は、心筋梗塞や脳卒中など死亡リスクに影響を与える可能性が高いイベントのリスク低下には影響がなかったことから、死亡リスク低下における交絡因子を特定できていない可能性が考えられます。とはいえ、併用療法による有益性はありそうです。どのような患者集団において、SGLT2iとGLP-1aを併用するとより有益な効果を得られるのかについての検証が求められます。

続報に期待。

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☑まとめ☑ SGLT2阻害薬へのGLP-1受容体作動薬の追加は、2型糖尿病およびASCVDを有する心不全(HFrEF)患者の複合心血管イベントを減少させるが、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中リスクには影響を与えず、主に死亡リスク低下に起因している可能性が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:ナトリウム・グルコース共輸送担体2阻害薬(SGLT2i)は、駆出率低下型心不全(HFrEF)、2型糖尿病(DM2)、動脈硬化性心疾患(ASCVD)を有する患者の心血管イベントおよび心不全による入院(HFH)のリスクを低下させる。これらの患者におけるグルカゴン様ペプチド1アゴニスト(GLP1a)の役割は不明である。我々は、SGLT2i療法にGLP1aを追加することで、HFrEF、DM2、ASCVD患者の転帰が改善されるかどうかを評価するためにこの試験を計画した。

方法:本研究は、全米退役軍人会データベースにおけるDM2、ASCVD、HFrEF患者を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究であった。SGLT2i投与群は、SGTL2i+GLP1a投与群にプロペンシティ(傾向)マッチングされた。主要評価項目は、HFHと、全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合だった。アンバランスなベースライン特性を含むCox回帰モデルにより評価した。

結果:5,576例の患者コホートから、343例が各試験群に傾向マッチされた。GLP1aの追加により、SGLT2iによる治療と比較して複合イベントの1年リスクが67%減少した(信頼区間 0.138~0.714、p=0.007)。HFHのリスクは両群間で有意差はなかった(p=0.199)。非マッチデータセットでの感度分析でも、これらの知見が確認された。

結論:SGLT2iにGLP1aを追加することは、T2DMおよびASCVDを有するHFrEF患者の心血管イベントを減少させるが、心不全による入院リスクには影響を与えないことが示された。

引用文献

Benefits of Adding Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonists to Sodium-Glucose Co-Transporter 2 Inhibitors in Diabetic Patients With Atherosclerotic Disease and Heart Failure
Persio David Lopez et al. Published:August 11, 2022 DOI:https://doi.org/10.1016/j.amjcard.2022.07.012
Am J Cardiol 2022;00:1−7
— 読み進める www.ajconline.org/article/S0002-9149(22)00750-0/fulltext

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