心血管疾患の長期的二次予防において地中海食と低脂肪食どちらが優れているのか?(単施設PROBE; CORDIOPREV試験; Lancet. 2022)

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心血管疾患の長期的二次予防における地中海食 vs. 低脂肪食

地中海食と低脂肪食は心血管系疾患の一次予防に有効であることが報告されています。しかし、心血管疾患の二次予防におけるこれら2つの食事の効果については充分に検討されていません。

そこで今回は、心血管疾患の二次予防における地中海食と低脂肪食を比較検討した長期ランダム化試験であるCORDIOPREV試験の結果をご紹介します。本試験は、スペインのコルドバにあるレイナ・ソフィア大学病院で行われた単施設のランダム化臨床試験です。本試験の対象は、冠動脈疾患が確立している患者(20~75歳)でした。試験参加者はアンダルシア公衆衛生学校により1:1の割合で地中海食または低脂肪食の介入を受けるようランダムに割り付けられ、7年間、追跡調査されました。治験責任医師(医師、治験担当医師、臨床エンドポイント委員会委員)は治療割り付けをマスクされていましたが、参加者はマスクされていませんでした。栄養士チームが食事介入を行いました。

本試験の主要アウトカム(intention to treatで評価)は、心筋梗塞、血行再建、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、心血管死などの主要な心血管イベントの複合でした。

試験結果から明らかになったことは?

2009年10月1日から2012年2月28日までに、低脂肪食群500例(49.9%)、地中海食群502例(50.1%)の合計1,002例が登録されました。平均年齢は59.5歳(SD 8.7)、1,002例中827例(82.5%)が男性でした。

地中海食群低脂肪群
主要エンドポイント
(主要心血管イベントの複合)
87例111例
1,000人・年当たりの粗率28.1%
[95%CI 27.9〜28.3]
ログランクp=0.039
37.7%
[37.5〜37.9]
多変量調整ハザード比(HR)0.669
[95%CI 0.489〜0.915
ログランクp=0.013

主要エンドポイントは198例で発生し、地中海食群87例、低脂肪群111例でした(1,000人・年当たりの粗率:地中海食群28.1%[95%CI 27.9〜28.3] vs. 低脂肪群37.7%[37.5〜37.9]、ログランクp=0.039)。

異なるモデルの多変量調整ハザード比(HR)は、0.719(95%CI 0.541〜0.957)から0.753(0.568〜0.998)となり、地中海食が有利でした。これらの効果は男性でより顕著であり、主要エンドポイントは、地中海食群の男性414例中67例(16.2%)に対して低脂肪食群の男性413例中94例(22.8%)で発生し(多重調整HR 0.669[95%CI 0.489〜0.915]、ログランクp=0.013)、女性175例には群間差がみとめられませんでした。

コメント

オリーブオイル、果物、ナッツ類、野菜やシリアルの豊富な摂取、魚や鶏肉の摂取、食事時の適量のワインなどに特徴づけられる伝統的な地中海食は、種々の観察研究やランダム化比較試験により一貫して心血管疾患に対するリスク抑制効果を示すことが報告されています。一言に地中海食と言っても、その中身は前述の通り様々です。しかし、いずれの場合もカロリー摂取に制限を設けなくとも、心血管イベントの抑制効果が示されています。そのため、地中海食を「冠動脈疾患予防のためのもっとも好ましい食事モデル」としたシステマティックレビューもあります。

さて、本試験結果によれば、心血管疾患の二次予防において、地中海食は低脂肪食に比べ主要な心血管イベントの予防に優れていました。これまでの報告と矛盾しません。本試験の特徴はランダム化比較試験にも関わらず追跡調査期間が7年間と長期な点です。ただし実施されたのはスペインのコルドバにあるレイナ・ソフィア大学病院です。限定された地域の単施設での検討結果であることから、他の国や地域で同様の効果が得られるのかについては不明です。とはいえ、これまでの研究結果を踏まえると、地中海食は、低脂肪食と比較して、心血管イベントの発症リスクが高い集団における心血管イベントのリスク抑制効果が高いと言えそうです。

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✅まとめ✅ 心血管疾患の二次予防において、地中海食は低脂肪食に比べ主要な心血管イベントの予防に優れていた。

根拠となった試験の抄録

背景:地中海食と低脂肪食は心血管系疾患の一次予防に有効である。我々は、心血管疾患の二次予防におけるこれら2つの食事の効果を比較するために、長期ランダム化試験を行った。

方法:CORDIOPREV試験は、スペインのコルドバにあるレイナ・ソフィア大学病院で行われた単施設のランダム化臨床試験である。冠動脈疾患が確立している患者(20~75歳)をアンダルシア公衆衛生学校により1:1の割合で地中海食または低脂肪食の介入を受けるようランダムに割り付け、7年間の追跡調査を行った。治験責任医師(医師、治験担当医師、臨床エンドポイント委員会委員)は治療割り付けをマスクされていたが、参加者はマスクされていなかった。栄養士のチームが食事介入を行った。主要アウトカム(intention to treatで評価)は、心筋梗塞、血行再建、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、心血管死などの主要な心血管イベントの複合であった。本試験はClinicalTrials.gov(NCT00924937)に登録されている。

調査結果:2009年10月1日から2012年2月28日までに、低脂肪食群500例(49.9%)、地中海食群502例(50.1%)の合計1,002例が登録された。平均年齢は59.5歳(SD 8.7)、1,002例中827例(82.5%)が男性であった。主要エンドポイントは198例で発生し、地中海食群87例、低脂肪群111例であった(1,000人・年当たりの粗率:地中海食群28.1%[95%CI 27.9〜28.3] vs. 低脂肪群37.7%[37.5〜37.9]、ログランクp=0.039)。異なるモデルの多変量調整ハザード比(HR)は、0.719(95%CI 0.541〜0.957)から0.753(0.568〜0.998)となり、地中海食が有利であった。これらの効果は男性でより顕著であり、主要エンドポイントは、地中海食群の男性414例中67例(16.2%)に対して低脂肪食群の男性413例中94例(22.8%)で発生し(多重調整HR 0.669[95%CI 0.489〜0.915]、ログランクp=0.013)、女性175例には群間差がみとめられなかった。

解釈:二次予防において、地中海食は低脂肪食に比べ主要な心血管イベントの予防に優れていた。我々の結果は臨床に関連し、二次予防における地中海食の使用を支持するものである。

資金提供:Fundacion Patrimonio Comunal Olivarero、Fundacion Centro para la Excelencia en Investigacion sobre Aceite de Oliva y Salud、local, regional, and national Spanish Governments、European Union(スペイン地方自治体、地方政府、国政府)。

引用文献

Long-term secondary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet and a low-fat diet (CORDIOPREV): a randomised controlled trial
Javier Delgado-Lista et al. PMID: 35525255 DOI: 10.1016/S0140-6736(22)00122-2
Lancet. 2022 May 14;399(10338):1876-1885. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00122-2. Epub 2022 May 4.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35525255/

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