睡眠不足は脂肪を減らすための食事療法の効果を台無しにするかもしれない(小規模ランダム化クロスオーバー試験; Ann Intern Med. 2010)

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肥満者におけるカロリー制限食の効果に対する睡眠不足の影響は?

哺乳類の睡眠は、生体のエネルギーバランスの調節や代謝的生存と密接に関連しています(PMID: 16251951)。げっ歯類の睡眠不足による強力な異化作用に比べ(PMID: 8447493PMID: 19692662)、睡眠不足のヒトにおけるエネルギー消費量の増加ははるかに小さいことが報告さています(PMID: 3782471PMID: 19056602)。それにもかかわらず、新しいデータでは、十分な睡眠の欠如が、食物摂取量の減少に対するヒトの神経内分泌反応を修正し、カロリー制限の代謝効果に悪影響を与える可能性があることを示唆しています。

睡眠時間が短いボランティアと長いボランティアを比較した研究によると、試験期間中のカロリー摂取を〜20kcal/kg/day(5g/kg/24hのグルコース静注)に制限すると、睡眠短縮に伴って空腹感が増し、外食ホルモンであるグレリンの循環濃度が高く、食欲不振ホルモンであるレプチン濃度が減少することが示されました。今日、多くの人が過体重、あるいは肥満であり、食事による体重減少は、過剰な脂肪に関連する健康リスクを軽減するための戦略として広く用いられています。しかし、カロリー制限中の睡眠抑制に伴う神経内分泌の変化(PMID: 15583226)は、十分な睡眠がとれていないことが、そのような人々において一般的に用いられる食事介入の有効性を損なう可能性を提起しています(PMID: 19846546)。例えば、グレリン濃度の上昇は脂肪の蓄積を促進する可能性があり(PMID: 11057670PMID: 18448790PMID: 19238155)、空腹感の増大はカロリー制限の遵守を危うくする可能性があります。

そこで今回は、過体重者において、反復的な睡眠制限は、過剰脂肪率に対する低カロリー食の効果を減弱し、主観的空腹感を増強し、24時間血清レプチンおよびアシル化グレリン濃度を修正するという仮説を検証したランダム化クロスオーバー試験の結果をご紹介します。

睡眠不足は、基質利用の制御に関わる複数の神経内分泌シグナルに影響を与えると考えられるため、本試験では循環コルチゾール、エピネフリン、ノルエピネフリン、甲状腺および成長ホルモン濃度についても変化を検討しました。

試験結果から明らかになったことは?

睡眠時間8.5時間群睡眠時間5.5時間群体重減少の割合
脂肪体重-1.4kg-0.6kg
P=0.043
55%減少
無脂肪体重-1.5kg-2.4kg
P=0.002
60%増加

睡眠時間の短縮により、脂肪として減少した体重の割合は55%減少し(8.5時間 vs. 5.5時間の睡眠機会でそれぞれ1.4kg vs. 0.6kg;P=0.043)、無脂肪体重の減少が60%増加しました(1.5kg vs. 2.4kg;P=0.002)。

このことは、カロリー制限に対する神経内分泌適応の増強、空腹感の増大、および相対的基質利用がより少ない脂肪の酸化にシフトすることを示すマーカーを伴っていました。

コメント

過体重あるいは肥満患者においては、しばしば食事療法と運動療法が実施されます。食事療法としては、カロリー制限の他、摂取時間帯の指定が行われることがあります。これはヒトにおけるホルモン分泌サイクルを踏まえた戦略です。しかし、これらの食事療法における睡眠時間の長短との関連性については充分に検討されていません。

さて、本試験結果によれば、低カロリー食かつ睡眠時間が5.5時間の場合、低カロリー食かつ睡眠時間8.5時間と比較して、脂肪減少効果の低下が認められました。さらに、無脂肪体重の減少、つまり筋肉量の低下が示されました。

小規模なランダム化クロスオーバー試験の検討ではあるものの、睡眠時間が短いと、食事療法による体重減少効果が減弱することが示され、さらに筋肉量も減少(死亡率が増加)することが示されました。とはいえ、より大規模な前向き試験による追試が求められます。

続報に期待。

man wearing blue long sleeve shirt lying on ground during daytime

✅まとめ✅ 小規模なランダム化クロスオーバー試験の結果によれば、低カロリー食かつ睡眠時間が5.5時間の場合、低カロリー食かつ睡眠時間8.5時間と比較して、脂肪減少効果の減弱および筋肉量の減少が示された。

根拠となった試験の抄録

背景:睡眠不足はエネルギー摂取量とエネルギー消費量を変化させる。

目的:睡眠制限が過剰脂肪率に対するカロリー低減食の効果を減弱させるかどうかを明らかにすること。

試験デザイン:ランダム化、2期間、2条件のクロスオーバー試験

試験設定:大学の臨床研究センターおよび睡眠研究所

患者:平均年齢 41歳(SD 5)、平均体格指数 27.4kg/m²(SD 2.0)の過体重非喫煙成人10例(女性3例、男性7例)。

介入:14日間の適度なカロリー制限と8.5時間または5.5時間の夜間睡眠機会

測定方法:主要測定項目は、脂肪および無脂肪体重の減少であった。副次的測定は、基質利用、エネルギー消費、空腹感、および24時間代謝ホルモン濃度の変化であった。

結果:睡眠時間の短縮により、脂肪として減少した体重の割合は55%減少し(8.5時間 vs. 5.5時間の睡眠機会でそれぞれ1.4kg vs. 0.6kg;P=0.043)、無脂肪体重の減少が60%増加した(1.5kg vs. 2.4kg;P=0.002)。このことは、カロリー制限に対する神経内分泌適応の増強、空腹感の増大、および相対的基質利用がより少ない脂肪の酸化にシフトすることを示すマーカーを伴っていた。

試験の限界:研究の性質上、期間とサンプルサイズに制限があった。

結論:ヒトの睡眠時間は、エネルギー摂取量が減少したときの無脂肪体量の維持に寄与している。十分な睡眠時間の不足は、減量および関連する代謝リスク低減のための典型的な食事介入の有効性を損なう可能性がある。

主な資金源:米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)

引用文献

Insufficient sleep undermines dietary efforts to reduce adiposity
Arlet V Nedeltcheva et al. PMID: 20921542 PMCID: PMC2951287 DOI: 10.7326/0003-4819-153-7-201010050-00006
Ann Intern Med. 2010 Oct 5;153(7):435-41. doi: 10.7326/0003-4819-153-7-201010050-00006.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20921542/

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