DOACの適応外低用量は標準用量と比較して全死亡および心血管複合イベントのリスクを増加させる?(コホート研究のSR&MA; Int J Cardiol. 2022)

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心房細動患者におけるDOACの適応外低用量の使用は全死亡や心血管複合イベントへどのような影響を与えるのか?

心房細動は、高齢者に最も多くみられる不整脈であり、血栓塞栓症との関連が指摘されています。中でも虚血性脳卒中のリスクが高いことが報告されています。

直接経口抗凝固薬(DOAC)は、ビタミンK拮抗薬であるワルファリンに代わり、ほとんどの患者で選択される治療法ですが、その使用に際して標準的な投与量では出血などのリスクを伴う可能性があります。そのため、特に高齢者や出血リスクの高い患者においては、適応外となりますが標準用量よりも低い用量が用いられます。しかし、DOACを低用量で使用した場合の影響については、未だ不明な点が多く、結果の一貫性は示されていません。

そこで今回は、心房細動患者におけるDOACの適応外低用量使用の影響を評価するため、コホート研究の系統的レビューとメタ解析を行った試験の結果をご紹介します。

本試験では、MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PsycINFOデータベース、EMBASEを検索し、心房細動患者における標準用量投与と比較して、適応外投与された患者の転帰を評価する観察的縦断研究が組み入れられました。ランダム効果メタ解析により、プールされたハザード比(HR)と95%Cisが推定されました。

試験結果から明らかになったことは?

237,533例の心房細動患者を評価した18件のコホート研究が含まれました。

DOACの適応外低用量
(vs. 標準用量)
全死亡HR 1.27
(95%CI 1.09〜1.48
心血管複合アウトカムHR 1.32
(95%CI 1.08〜1.62

DOACの適応外低用量の使用は、標準用量使用と比較して、全死亡[HR 1.27(95%CI 1.09〜1.48)] および心血管複合アウトカム[HR 1.32(95%CI 1.08〜1.62)] の高いリスクと関連していました。

血栓塞栓イベント[HR 1.14(95%CI 1.00〜1.31)]、大出血[HR 1.02(95%CI 0.91〜1.15)]、虚血イベントと出血イベントの複合[HR 1.22(95%CI 0.79〜1.88)] における効果は統計的に有意ではありませんでした。いずれもエビデンスの確実性は低いか非常に低いものでした。

コメント

DOACはビタミンK拮抗薬と異なり、モニタリングできる項目は明確ではありません。そのため、細やかな用量調節ができないのが現状です。臨床経験に基づいたDOACの適応外低用量の使用に関する検証は充分ではありません。

さて、本試験結果によれば、DOACの適応外低用量の使用は、標準用量と比較して、全死亡および心血管複合アウトカムの高いリスクと関連している可能性が示されました。ただし、本試験はコホート研究のメタ解析の結果であり、あくまでも相関関係が示されたに過ぎません。また、ハザード比は約1.3と、個人的にはそこまで大きな値ではないと捉えています。とはいえ、出血リスクに差がないことから、適応外低用量を使用する意義はありません。基本的にはDOACの標準用量を使用した方が良いと考えられます。

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✅まとめ✅ DOACの適応外低用量の使用は、標準用量と比較して、全死亡および心血管複合アウトカムの高いリスクと関連しているかもしれない。

根拠となった試験の抄録

背景:心房細動は、高齢者に最も多くみられる不整脈であり、血栓塞栓症との関連が指摘されている。直接経口抗凝固薬(DOAC)は、ほとんどの患者で選択される治療法であるが、その使用には標準的な投与量ではリスクが伴う可能性がある。しかし、DOACを低用量で使用した場合の影響については、未だ不明な点が多い。

目的:心房細動患者におけるDOACの適応外低用量使用の影響を評価するため、系統的レビューとメタ解析を行った。

方法:MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PsycINFOデータベース、EMBASEを検索し、心房細動患者における標準用量投与と比較して、適応外投与された患者のアウトカムを評価する観察的縦断研究を探した。ランダム効果メタ解析により、プールされたハザード比(HR)と95%Cisを推定した。

結果:237,533例の心房細動患者を評価した18件のコホート研究が含まれた。DOACの適応外使用は、標準用量使用と比較して、全死亡[HR 1.27(95%CI 1.09〜1.48)] および心血管複合アウトカム[HR 1.32(95%CI 1.08〜1.62)] の高いリスクと関連している。血栓塞栓イベント[HR 1.14(95%CI 1.00〜1.31)]、大出血[HR 1.02(95%CI 0.91〜1.15)]、虚血イベントと出血イベントの複合[HR 1.22(95%CI 0.79〜1.88)] における効果は統計的に有意ではなかった。エビデンスの確実性は低いか非常に低いものであった。

結論:DOACの適応外低用量の使用は、標準用量と比較して、全死亡および心血管複合アウトカムの高いリスクと関連する。

キーワード:心房細動、DOAC、適応外低用量(Off label underdose)、系統的レビュー

引用文献

Clinical effects of off-label reduced doses of Direct Oral Anticoagulants: A systematic review and meta-analysis
Mariana Q Pereira et al. PMID: 35513121 DOI: 10.1016/j.ijcard.2022.04.062
Int J Cardiol. 2022 May 2;S0167-5273(22)00580-0. doi: 10.1016/j.ijcard.2022.04.062. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35513121/

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