SARS-CoV-2感染症およびCOVID-19に対するワクチンの有効期間はどのくらい?(SR&MA; Lancet. 2022)

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COVID-19ワクチンの接種間隔はどのくらいが適切なのか?

COVID-19パンデミックから約2年、いくつかのCOVID-19ワクチンは、ランダム化比較試験によるワクチン有効性の結果に基づいて、規制当局やWHOから緊急使用リストまたは緊急使用認可(EULまたはEUA)を受けました(WHO)。しかし、EULやEUAの時点での有効性の結果は、完全接種後のフォローアップ期間の中央値が2〜3ヵ月しかなく、国家的なワクチン展開の一環として接種された人々のワクチン有効性の推定値は、ワクチン導入後数ヵ月における有効性の結果と同様でした(COVID-19 weekly epidemiological update)。

より長い期間にわたってCOVID-19ワクチンの予防効果を評価するには、継続的なモニタリングが必要です。ワクチンの効果がどの程度低下しているかを知ることは、ブースター投与の必要性、タイミング、ターゲット集団などのワクチン政策の決定に極めて重要です。

COVID-19の有効性・効果に関するシステマティックレビューがいくつか発表されていますが、COVID-19ワクチンの防御期間を評価したものはありません(Euro surveillanceEuro surveillancemedRxiv2021PMID: 34241782medRxiv2021medRxiv2021)。

今回ご紹介するのは、ワクチン接種後の様々な期間におけるワクチンの有効性や効果を評価する研究を評価したシステマティックレビューおよびメタ回帰分析の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

スクリーニングされた13,744件の研究のうち、310件がフルテキストレビューを受け、18件の研究が含まれました。すべての研究は、オミクロン変種株が広く流通し始める前に実施されたものでした。

ランダム化対照試験におけるバイアスリスク2ツールまたは介入に関する非ランダム化研究におけるバイアスリスクツールを用いて確立したバイアスリスクの結果、3件の研究でバイアスリスク低、8件の研究でバイアスリスク中、7件の研究でバイアスリスクが深刻でした。

78のワクチン固有の効果または有効性の評価(Pfizer-BioNTech-Comirnaty、n=38; Moderna-mRNA-1273、n=23; Janssen-Ad26.COV2.S,、n=9; AstraZeneca-Vaxzevria、n=8)が含まれれました。

ワクチンの接種後6ヵ月までにおけるSARS-CoV-2感染に対するワクチンの効果または有効性は、全年齢層で平均21.0%ポイント(95%CI 13.9〜29.8)、高齢者(各研究の定義では50歳以上)で20.7%ポイント(10.2〜36.6)低下しました。

症候性COVID-19では、ワクチンの有効性はすべての年齢層で24.9%ポイント(95%CI 13.4〜41.6)、高齢者では32.0%ポイント(11.0〜69.0)低下しました。

重症のCOVID-19では、ワクチンの有効性はすべての年齢層で10.0%ポイント(95%CI 6.1〜15.4)、高齢者では9.5%ポイント(5.7〜14.6)低下していました。重症例に対するワクチンの有効性の推定値の大部分(81%)は、時間の経過とともに70%以上の有効性を維持していました。

コメント

COVID-19の拡大は収まらず、基本的な感染予防対策の継続的な取り組みが求められます。感染予防対策の一つとしてワクチン接種があり、定期的な接種が求められますが、ワクチンの有効性がどの程度低下するのかについては情報が限られています。

さて、本試験結果によれば、COVID-19に対する有効率は、接種後6ヵ月までにやや低下しましたが、重症化に対する有効率は高い値が維持されていました。一方、感染症や症候性疾患に対する有効率は、6ヵ月後までに20~30%程度低下しました。SARS-CoV-2感染拡大を抑制するには、やはり定期的な接種が求められます。

person getting vaccinated

✅まとめ✅ COVID-19に対する有効率は、接種後6ヵ月までにやや低下したが、重症化に対する有効率は高い値を示した。一方、感染症や症候性疾患に対する有効率は、6ヵ月後までに20~30%程度低下した。

根拠となった試験の抄録

背景:COVID-19ワクチンの効果が薄れるかどうかを知ることは、ブースター投与の必要性やタイミングなど、ワクチン政策に反映させるために極めて重要である。我々は、さまざまな臨床結果に対するCOVID-19ワクチンの防御期間に関するエビデンスを系統的にレビューし、接種後の時間の経過に伴うデルタ変異株によるブレークスルー感染の割合の変化を評価することを目的とした。

方法:本研究は、システマティックレビューおよびメタ回帰としてデザインされた。2021年6月17日から2021年12月2日までのプレプリントデータベースと査読付き公開論文データベースを対象にシステマティックレビューを行った。COVID-19ワクチンの有効性に関するランダム化対照試験およびCOVID-19ワクチンの有効性に関する観察研究を対象とした。完全なワクチン接種を受けた人々の離散的な時間間隔におけるワクチン効果または有効性の推定を行い、事前に定義されたスクリーニング基準を満たした研究は、フルテキストレビューを受けた。ランダム効果メタ回帰を用いて、完全接種後1~6ヵ月におけるワクチンの効果または有効性の平均的な変化を推定した。

結果:スクリーニングされた13,744件の研究のうち、310件がフルテキストレビューを受け、18件の研究が含まれた(すべての研究は、オミクロン変種株が広く流通し始める前に実施されたものである)。ランダム化対照試験におけるバイアスリスク2ツールまたは介入に関する非ランダム化研究におけるバイアスリスクツールを用いて確立したバイアスリスクは、3件の研究で低、8件の研究で中、7件の研究で深刻であった。我々は、78のワクチン固有の効果または有効性の評価(Pfizer-BioNTech-Comirnaty、n=38; Moderna-mRNA-1273、n=23; Janssen-Ad26.COV2.S,、n=9; AstraZeneca-Vaxzevria、n=8)を含んでいる。SARS-CoV-2感染に対するワクチンの効果または有効性は、全年齢層で平均21.0%ポイント(95%CI 13.9〜29.8)、高齢者(各研究の定義では50歳以上)で20.7%ポイント(10.2〜36.6)低下した。症状のあるCOVID-19では、ワクチンの有効性はすべての年齢層で24.9%ポイント(95%CI 13.4〜41.6)、高齢者では32.0%ポイント(11.0〜69.0)低下した。重症のCOVID-19では、ワクチンの有効性はすべての年齢層で10.0%ポイント(95%CI 6.1〜15.4)、高齢者では9.5%ポイント(5.7〜14.6)低下していた。重症例に対するワクチンの有効性の推定値の大部分(81%)は、時間の経過とともに70%以上の有効性を維持した。

解釈:COVID-19の有効率は、接種後6ヵ月までにやや低下したが、重症化に対する有効率は高い値を示した。一方、感染症や症候性疾患に対する有効率は、6ヵ月後までに20~30%程度低下した。ワクチンの有効性の低下は、バイアスの影響も否定できないが、少なくとも免疫力の低下が原因であると思われる。今後、COVID-19のワクチン政策を更新するためには、6ヵ月以降のワクチンの有効性を評価することが重要であると思われる。

資金提供:Coalition for Epidemic Preparedness Innovations(疫病対策イノベーション連合)

引用文献

Duration of effectiveness of vaccines against SARS-CoV-2 infection and COVID-19 disease: results of a systematic review and meta-regression
Daniel R Feikin et al. PMID: 35202601 PMCID: PMC8863502 DOI: 10.1016/S0140-6736(22)00152-0
Lancet. 2022 Mar 5;399(10328):924-944. doi: 10.1016/S0140-6736(22)00152-0. Epub 2022 Feb 23.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35202601/

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