透析未導入のCKD患者におけるダプロデュスタットの安全性は?
ダプロデュスタットは、経口の低酸素誘導因子プロリル水酸化酵素(HIF-PH)阻害剤です。透析を受けていない慢性腎臓病(CKD)患者において、従来の赤血球造血刺激因子製剤(ESA)であるダルベポエチン アルファと比較した場合のダプロダスタットの有効性および安全性は不明です。
ESAはCKD患者の貧血症状の改善に用いられていますが、血栓リスクを増加することから、米国や英国の医薬品規制機関では心血管疾患の安全性について検証することを製薬メーカーに求めており、これが承認申請の条件となっています。貧血症状を改善するHIF-PH阻害薬についても、ESAと同様に、心血管安全性が承認申請の条件となっています。これまでに公開されている情報によれば、HIF-PH阻害薬のうち、ロキサデュスタットでは心血管リスクがESAと変わらない、バダデュスタットではESAよりも心血管リスクの増加が報告されています。
今回は、ランダム化非盲検第3相試験で、心血管アウトカムの盲検判定を行い、透析を受けていないCKD患者の貧血治療において、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファを比較したASCEND-ND試験の結果をご紹介します。本試験の主要評価項目は、ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン値の平均変化量と、主要有害心血管イベント(MACE:あらゆる原因による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生でした。
試験結果から明らかになったことは?
全体で3,872例の患者がダプロダスタットまたはダルベポエチン アルファの投与にランダムに割り付けられました。ベースラインのヘモグロビン値の平均(±SD)は両群で同程度でした。
ダプロダスタット群 | ダルベポエチン アルファ群 | 群間差あるいはHR (95%CI) | |
ベースラインから28~52週目までの Hb値の平均変化(±SE) | 0.74±0.02g/dL | 0.66±0.02g/dL | 差 0.08g/dL (0.03~0.13) ※非劣性マージン:-0.75g/dL |
MACEの初回発生 (追跡期間:中央値1.9年) | 19.5% (378/1,937例) | 19.2% (371/1,935例) | HR 1.03 (0.89~1.19) ※非劣性マージン:1.25 |
主要評価項目であるベースラインから28~52週目までのヘモグロビン(Hb)値の平均変化(±SE)は、ダプロダスタット群で0.74±0.02g/dL、ダルベポエチン アルファ群で0.66±0.02g/dL(差 0.08g/dL、95%信頼区間(CI) 0.03~0.13)であり、事前に規定した非劣性マージンの-0.75g/dLを満たしていました。
追跡期間(中央値)1.9年の間に、MACEの初回発生は、ダプロダット群では1,937例中378例(19.5%)、ダルベポエチン アルファ群では1,935例中371例(19.2%)であり(ハザード比 1.03、95%CI 0.89~1.19)、事前に規定した非劣性マージンである1.25を満たしていました。
有害事象が発生した患者の割合は、両群で同程度であった。
コメント
HIF-PH阻害薬の安全性に関する検証が進んでいます。これまでにロキサデュスタット、バダデュスタットの心血管アウトカム試験が実施されています。また透析患者におけるダプロデュスタットの結果も示されています。
さて、透析未導入のCKD患者を対象に行われた試験結果によれば、ベースラインからのヘモグロビン値の変化、および心血管アウトカムに関して、ダルベポエチンアルファに対して非劣性が示されました。有料文献であるため詳細は確認できていませんが、有害事象の発生に差はなさそうです。おそらく、これまでのデータをもって英国や米国での承認申請が行われると考えられます。HIF-PH阻害薬の中では、有効性・安全性の検証において、ロキサデュスタットおよびダプロデュスタットが先行しています。
今後は、どのような患者でESAとHIF-PH阻害薬を使い分けるのか、またHIF-PH阻害薬の中で、どの薬剤を選択するのか注目されるのではないでしょうか。国内外の診療ガイドラインの改定にも注視していきたいと思います。
✅まとめ✅ 貧血を呈する非透析CKD患者において、ダプロダットは、ベースラインからのヘモグロビン値の変化、および心血管アウトカムに関して、ダルベポエチンアルファに対して非劣性であった。
根拠となった試験の抄録
背景:ダプロデュスタットは、経口の低酸素誘導因子プロリル水酸化酵素(HIF-PH)阻害剤です。透析を受けていない慢性腎臓病(CKD)患者において、従来の赤血球造血刺激因子製剤であるダルベポエチンアルファと比較した場合のダプロダスタットの有効性および安全性は不明である。
方法:ランダム化非盲検第3相試験で、心血管アウトカムの盲検判定を行い、透析を受けていないCKD患者の貧血治療において、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファを比較した。
主要評価項目は、ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン値の平均変化量と、主要有害心血管イベント(MACE:あらゆる原因による死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生であった。
結果:全体で3,872例の患者がダプロダスタットまたはダルベポエチン アルファの投与にランダムに割り付けられた。ベースラインのヘモグロビン値の平均(±SD)は両群で同程度であった。
ベースラインから28~52週目までのヘモグロビン値の変化の平均(±SE)は、ダプロダスタット群で0.74±0.02g/dL、ダルベポエチン アルファ群で0.66±0.02g/dL(差 0.08g/dL、95%信頼区間(CI) 0.03~0.13)であり、事前に規定した非劣性マージンの-0.75g/dLを満たしていた。追跡期間(中央値)1.9年の間に、MACEの初回発生は、ダプロダット群では1,937例中378例(19.5%)、ダルベポエチン アルファ群では1,935例中371例(19.2%)であり(ハザード比 1.03、95%CI 0.89~1.19)、事前に規定した非劣性マージンである1.25を満たしていた。有害事象が発生した患者の割合は、両群で同程度であった。
結論:透析を受けていないCKDおよび貧血患者において、ダプロダットは、ベースラインからのヘモグロビン値の変化、および心血管アウトカムに関して、ダルベポエチンアルファに対して非劣性であった(資金提供:グラクソ・スミスクライン社。ASCEND-ND ClinicalTrials.gov番号:NCT02876835)。
引用文献
Daprodustat for the Treatment of Anemia in Patients Not Undergoing Dialysis – PubMed
Ajay K Singh et al. PMID: 34739196 DOI: 10.1056/NEJMoa2113380
N Engl J Med. 2021 Nov 5. doi: 10.1056/NEJMoa2113380. Online ahead of print.
— Read on pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34739196/
関連記事
【貧血を呈する透析患者におけるダプロデュスタットの有効性・安全性はどのくらい?(Open-RCT; ASCEND-D試験; N Engl J Med. 2021)】
【保存期CKD患者の貧血に対するHIF-PH阻害剤はエポエチンやダルベポエチンより優れていますか?(RCTのNWM; Pharmacol Res. 2020)】
【Up To Date for HIF-PH阻害薬】HIF-PH阻害薬の比較(ナラティブレビュー; 最終年月:2021年5月)
コメント