妊娠高血圧症の既往は出産後の慢性高血圧症の発症リスク増加と関連する(フランス人口ベースコホート研究; CONCEPTION試験; Eur Heart J. 2021)

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妊娠高血圧症候群は出産後にも影響を与えるのか?

妊娠高血圧症候群(Hypertensive disorders of pregnancy, HDP)とは、妊娠時に高血圧を発症した状態です。妊娠より以前から高血圧を認める場合、または妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠と呼びます。しかし近年では、妊産婦の高齢化に伴い高血圧合併妊娠の頻度が上昇していることから、妊娠前からの高血圧症の存在を無視できなくなり、妊娠より以前から高血圧を認める場合も内包して、HDPと呼ばれるようになりました。

HDPの定義として、収縮期血圧 140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧 90mmHg以上(重症では110 mmHg以上)とされています。

HDPは、母体および胎児の合併および死亡リスクの主要な原因であることが報告されています。

そこで今回は、出産後数年間の初産婦における慢性高血圧症の発症にHDPがどのような影響を与えるか推定するために実施されたCONCEPTION試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

フランス国民健康データシステム(SNDS)のデータを使用した全国規模のコホート研究では、2010年から2018年の間に出産した慢性高血圧症の既往のない適格な初産婦すべてが対象となりました。主要アウトカムは、慢性高血圧症の診断でした。

患者数
(率)
全体2,663,573例
 妊娠高血圧症候群(HDP)180,063例
(6.73%)
 ・子癇前症(PE)66,260例
(2.16%)
 ・妊娠高血圧(GH)113,803例
(4.27%)

全体として、2,663,573例の女性が対象となり、平均追跡期間は3.0年でした。そのうち、180,063例(6.73%)がHDPを有していました。

HDPの内訳として、66,260例(2.16%)が子癇前症(PE)、113,803例(4.27%)が妊娠高血圧(GH)でした。

慢性高血圧症リスク
完全調整後のハザード比
(vs. HDPを有していなかった女性)
妊娠高血圧(GH)6.03
(95%CI 5.89〜6.17
子癇前症(PE)8.10
(95%CI 7.88〜8.33
早期PE12.95
(95%CI 12.29〜13.65
重度PE9.90
(95%CI 9.53〜10.28
GH後のPE13.17
(95%CI 12.74〜13.60

HDPを有していなかった女性と比較した慢性高血圧症の発症に対する完全調整後のHRは、GHが6.03(95%信頼区間(CI)5.89〜6.17)、PE(全種類)が8.10(95%CI 7.88〜8.33)、早期PEが12.95(95%CI 12.29〜13.65)、重度PEが9.90(95%CI 9.53〜10.28)、GH後のPEが13.17(95%CI 12.74〜13.60)でした。

妊娠期の高血圧性障害は、すべてのPEサブグループにおいて、慢性的な高血圧の追加的な危険因子であることが示されました。HDPの女性は、一般開業医または循環器専門医に相談する頻度が高く、また相談時期も早いことが示されました。

コメント

妊娠時に発症した高血圧症である妊娠高血圧症候群は、発症の原因が不明です。患者背景によっては、チルドパ、ヒドララジン、アテノロール、ニカルジピン、あるいはラベタロールなどの降圧薬を使用します。

出産後の高血圧症について問題視されることは少ないですが、妊娠高血圧症の既往がある女性と、既往を有していない女性における出産後の慢性高血圧症リスクについて検証した研究報告は充分になされていません。

さて、本試験結果によれば、妊娠高血圧症候群の既往は、既往のない女性と比較して、出産後数年間(平均3年間)の慢性高血圧症のリスクを大きく高めました。特に子癇前症の既往を有している場合に、慢性高血圧症リスクが高くなる可能性が示されました。

今回の研究はフランス人口ベースのコホート研究ですので、日本人においても同様の傾向が認められるのかは不明です。とはいえ、子癇前症は母体と胎児、そして出生児の合併症リスクや死亡リスクに影響することは共通しています。

今後は、妊娠高血圧症候群に対する治療戦略により様々なリスクが低下するのかについて検証が求められます。続報に期待。

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✅まとめ✅ 妊娠高血圧症候群の既往を有する女性では、出産後数年間の慢性高血圧症のリスクが大きく高まるかもしれない

根拠となった試験の抄録

目的:妊娠高血圧症候群(HDP)は、母体および胎児の罹患率および死亡率の主要な原因である。本研究では、出産後数年間の初産婦における慢性高血圧症の発症にHDPが与える影響を推定することを目的とした。

方法:この全国規模のコホート研究では、フランス国民健康データシステム(SNDS)のデータを使用した。2010年から2018年の間に出産した慢性高血圧症の既往のない適格な初産婦をすべて対象とした。女性は産後6週間から、高血圧の発症、心血管イベント、死亡、または研究終了日(2018年12月31日)まで追跡調査を行った。主要アウトカムは、慢性高血圧症の診断でした。Coxモデルを用いて、すべてのタイプのHDPの慢性高血圧のハザード比(HR)を推定した。

結果:全体として、2,663,573例の女性が対象となり、平均追跡期間は3.0年であった。そのうち、180,063例(6.73%)がHDPを有していた。具体的には、66,260例(2.16%)が子癇前症(PE)、113,803例(4.27%)が妊娠高血圧症候群(GH)であった。HDPを有していなかった女性と比較した慢性高血圧症の完全調整後のHRは、GHが6.03(95%信頼区間(CI)5.89〜6.17)、PE(全種類)が8.10(95%CI 7.88〜8.33)、早期PEが12.95(95%CI 12.29〜13.65)、重度PEが9.90(95%CI 9.53〜10.28)、GH後のPEが13.17(95%CI 12.74〜13.60)であった。妊娠暴露期間の高血圧性障害は、すべてのPEサブグループにおいて、慢性的な高血圧の追加的な危険因子であった。HDPの女性は、一般開業医または循環器専門医に相談する頻度が高く、また相談時期も早かった。

結論:妊娠高血圧症候群への曝露は、出産後数年間の慢性高血圧症のリスクを大きく高めた。

キーワード:血圧、疫学、妊娠高血圧症候群、高血圧症、子癇前症、妊娠中の合併症

引用文献

Hypertensive disorders of pregnancy and onset of chronic hypertension in France: the nationwide CONCEPTION study
Pauline Boucheron et al. PMID: 34643681 DOI: 10.1093/eurheartj/ehab686
Eur Heart J. 2021 Oct 13;ehab686. doi: 10.1093/eurheartj/ehab686. Online ahead of print.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34643681/

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