シスプラチン化学療法を受けた固形がん小児患者における発熱性好中球減少症エピソードに対する経口マグネシウム補給の有効性と安全性は?(Open-RCT; Cancer Chemother Pharmacol. 2020)

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シスプラチン投与により低マグネシウム血症が引き起こされるが…

低マグネシウム血症とは、血清マグネシウム濃度が1.8mg/dL(0.70mmol/L、重度の場合1.25mg/dL、0.50mmol/L)を下回った状態です。低マグネシウム血症の症状としては、食欲不振、悪心、嘔吐、嗜眠、筋力低下、人格変化、テタニー(例:Trousseau徴候またはChvostek徴候が陽性、または自発性の手足の攣縮、反射亢進)、振戦、筋肉の線維束性収縮など、様々な症状があげられます。

シスプラチンベースの化学療法(CDDPBC)時には、主に腎からの排泄亢進と消化管毒性により、低マグネシウム血症が高頻度に発現することが知られています(がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016)。また、CDDPBCを受けている小児患者において、低マグネシウム血症と発熱性好中球減少症(FN)発症との関連性が示されています。

そこで今回は、CDDPBCを受けている固形癌の小児患者において、経口マグネシウムの補給がFNエピソードを減少させるかどうかを検証したランダム化比較試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

このランダム化臨床試験は、メキシコシティのHospital Infantil de Mexico Federico Gomezにおいて、非盲検、単施設、並行群、優越性デザインで行われました。

CDDPBC投与を予定している固形癌の小児患者(9歳以上)が試験に参加しました。CDDPBCの各サイクルにおいて、マグネシウムの経口補給(250mg/日)を受ける群と受けない群(対照群)にランダムに割り付けられました。CDDPBC 101サイクルが解析されました(経口マグネシウム補給群50例 vs. 対照群51例)。ベースラインの臨床特性は両群間で同様でした。

経口マグネシウム補給群は対照群と比較してFNエピソード発生数を有意に減少させました。
☆RR 0.53、95% CI 0.32〜0.89、NNT=4

経口マグネシウム補給群では、FNに起因する敗血症性ショックの発生が少なく(RR 0.43、95%CI 0.02〜0.94、NNT=6)、FNは平均5日後に発生しました(p=0.031)。

低マグネシウム血症のエピソードと有害事象は両グループで同様でした。

コメント

CDDPBCを受けている小児患者において、低マグネシウム血症と発熱性好中球減少症(FN)発症との関連性が報告されていますが、ランダム化比較試験による検証は充分になされていません。

さて、本試験結果によれば、CDDPBCを受けている固形癌の小児患者におけるマグネシウム経口補給(250mg/日)は、対象群と比較して、FNエピソード発生数を有意に減少させました(NNT=4)。小規模かつ単施設の研究結果ですので、有効性の結果は割り引いて捉えた方が良いと考えられます。とはいえ、マグネシウム250mgはサプリメントで補給できる量です。価格も3ヵ月で1,000円未満のものが市販されていますので、費用対効果は高いと考えられます。あとはマグネシウム摂取による消化器系の副作用が気になるところですが、有料文献であるため詳細を確認できていません。他の研究結果も参照した方が良いでしょう。

ちなみに、国内の診療ガイドライン(がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016)において、シスプラチンによる腎障害の予防にマグネシウムの投与が推奨されています(推奨グレード:行うことを弱く推奨する(提案する))。この診療ガイドライン作成時には、質の高い研究が報告されておらず、推奨グレードは提案にとどまっています。

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✅まとめ✅ マグネシウムの経口補給は、CDDPBCを受けた固形癌の小児患者のFNエピソード好中球減少を減少させる。

根拠となった試験の抄録

目的:低マグネシウム血症は、シスプラチンベースの化学療法(CDDPBC)を受けている小児患者の発熱性好中球減少症(FN)と関連している。本試験の主な目的は、CDDPBC治療を受けている固形癌の小児患者において、経口マグネシウムの補給がFNエピソードを減少させるかどうかを明らかにすることであった。

方法:このランダム化臨床試験は、メキシコシティのHospital Infantil de Mexico Federico Gomezにおいて、非盲検、単施設、並行群間、優越性デザインで行われた。9歳以上でCDDPBCの投与を予定している固形がんの小児が参加しました。CDDPBCの各サイクルで、マグネシウムの経口補給(250mg/日)を受ける群と受けない群(対照群)にランダムに割り付けた。
有効性は、相対リスク(RR)と95%信頼区間(95%CI)、および治療に必要な数(NNT)で判定した。両群の安全性を評価するために積極的なモニタリングが行われた。解析はintention to treatで行われた。
ClinicalTrials.gov番号:NCT03449693

結果:CDDPBC 101サイクルが解析された(経口マグネシウム補給群50例 vs. 対照群51例)。ベースラインの臨床特性は両群を比較して同様であった。経口マグネシウム補給群は対照群と比較してFNエピソードを減少させた(RR 0.53、95% CI 0.32〜0.89、NNT=4)。経口マグネシウム補給群では、FNに起因する敗血症性ショックの発生が少なく(RR 0.43、95%CI 0.02〜0.94、NNT=6)、FNは平均5日後に発生した(p=0.031)。低マグネシウム血症のエピソードと有害事象は両グループで同様であった。

結論:マグネシウムの経口補給は、CDDPBCを受けた固形癌の小児患者のFNエピソード好中球減少を減少させる。

キーワード 小児;シスプラチン;発熱性好中球減少症;マグネシウム;敗血症ショック;固形腫瘍

引用文献

Efficacy and safety of oral magnesium supplementation in reducing febrile neutropenia episodes in children with solid tumors treated with cisplatin-based chemotherapy: randomized clinical trial
Osvaldo D Castelán-Martínez et al.
Cancer Chemother Pharmacol. 2020 Nov;86(5):673-679. doi: 10.1007/s00280-020-04155-4. Epub 2020 Oct 8.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33030582/

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