透析患者の冠動脈石灰化に関連する最適なリン酸塩コントロール 炭酸ランタン vs. スクロオキシ水酸化鉄(Open-RCT; J Am Soc Nephrol. 2021)

people in park supporting each other 02_循環器系
Photo by Andres Ayrton on Pexels.com
この記事は約5分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

透析患者の冠動脈石灰化を抑制ための血清リン酸値の目標範囲は?

維持透析患者においては、非透析患者と比較して、心血管死亡リスクが著しく高いことが報告されています。この原因は重度の冠動脈石灰化によって一部説明されています。

高リン酸血症は、冠動脈石灰化の重症度と関連することが報告されています。しかし、透析患者における最適な血清リン酸値の管理目標範囲はまだ明らかにされていません。

そこで今回は、2種類の非カルシウム系リン酸塩結合剤(炭酸ランタン投与群スクロオキシ水酸化鉄)と2つの血清リン酸値の管理目標範囲(厳格群:3.5~4.5mg/dL、標準群:5.0~6.0 mg/dL)の冠動脈石灰化進行に対する効果を比較した日本の試験結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

FAS解析には患者115例が含まれていました。

炭酸ランタン投与群とスクロオキシ水酸化鉄投与群の間で、冠動脈石灰化スコアの変化率に有意な差は認められませんでした。

血清リン酸値の管理目標冠動脈石灰化スコアの変化率
厳格群:3.5~4.5mg/dL中央値 8.52、四分位範囲 -1.0~23.9
標準群:5.0~6.0 mg/dL中央値 21.8、四分位範囲 10.0~36.1
P=0.006

一方で、厳格群(中央値 8.52、四分位範囲 -1.0~23.9)は標準群(中央値 21.8、四分位範囲 10.0~36.1、P=0.006)に比べて冠動脈石灰化スコアの変化率が有意に低いことが明らかとなりました。

この効果は、高齢者(65〜74歳)と若年者(20〜64歳)で顕著でした(交互作用のP値=0.003)。また、冠動脈石灰化スコアの絶対的な変化についても同様の結果が得られました。

コメント

維持透析患者において、心血管死亡リスクの高さが報告されており、この一因として冠動脈の石灰化が報告されています。しかし、冠動脈の石灰化と心血管死亡リスクとの関連性については明確になっておらず、これまでに報告された試験の結果は一貫していません。

さて、本試験結果によれば、炭酸ランタン投与群とスクロオキシ水酸化鉄投与群の間で、冠動脈石灰化スコアの変化率に有意な差は認められませんでした。いずれも非カルシウム系リン酸塩結合剤であることからか、薬物治療による差はないようです。一方、血清リン酸値の管理目標について、厳格群(3.5~4.5mg/dL)は標準群(5.0~6.0 mg/dL)に比べて冠動脈石灰化スコアの変化率が有意に低いことが明らかとなりました。

とはいえ、冠動脈石灰化の進行抑制が、心血管死亡リスクを低下させられるのかについては明らかになっていません。そもそも日本人の透析患者は、欧米人と比較して心血管死亡リスクが低いことも報告されています。血清リン酸値の管理目標について、厳格にすることの益がどの程度得られるのか検証した方が良いと考えられます。

photo of gray cat looking up against black background

✅まとめ✅ 血清リン酸値の厳格な管理は、標準的な管理と比較して、維持血液透析を受けている患者の冠動脈石灰化の進行を遅らせることが期待できる。

根拠となった試験の抄録

背景:維持透析患者では、心血管死亡リスクが著しく高く、これは重度の冠動脈石灰化(CAC)によって一部説明される。高リン酸血症は、CACの重症度と関連することが報告されている。しかし、透析患者における最適なリン酸塩濃度の範囲はまだ明らかにされていない。本研究では、2種類の非カルシウム系リン酸塩結合剤と2つのリン酸塩目標範囲のCAC進行に対する効果を比較することを計画した。

方法:ランダム化、非盲検、多施設共同、介入試験を2×2の要因計画で実施した。透析を受けている成人160例を登録し、血清リン酸値を2つの目標値(厳格群:3.5~4.5mg/dL、標準群:5.0~6.0 mg/dL)まで低下させることを目的として、スクロオキシ水酸化物(ピートル®️)群と炭酸ランタン(ホスレノール®️)群にランダムに割り付けた。
主要評価項目は、12か月間の治療期間中のCACスコアの変化率であった。

結果:FAS解析には患者115例が含まれていた。炭酸ランタン投与群とスクロオキシ水酸化鉄投与群の間で、CACスコアの変化率に有意な差は認められなかった。一方で、厳格群(中央値 8.52、四分位範囲 -1.0~23.9)は標準群(中央値 21.8、四分位範囲 10.0~36.1、P=0.006)に比べてCACスコアの変化率が有意に低かった。この効果は、高齢者(65〜74歳)と若年者(20〜64歳)で顕著だった(交互作用のP値=0.003)。また、CACスコアの絶対的な変化についても同様の結果が得られた。

結論:より大きなサンプルサイズのさらなる研究が必要であるが、リン酸塩の厳格な管理は、維持血液透析を受けている患者のCACの進行を遅らせることが期待できる。

臨床試験の登録名と登録番号:Evaluate the New Phosphate Iron-Based Binder Sucroferric Oxyhydroxide in Dialysis Patients with the Goal of Advancing the Practice of EBM(EPISODE),jRCTs051180048

キーワード:冠状動脈石灰化、透析、高リン酸血症、リン酸塩結合剤

引用文献

Optimal Phosphate Control Related to Coronary Artery Calcification in Dialysis Patients
Yoshitaka Isaka et al. PMID: 33547218 PMCID: PMC7920180 (available on 2022-03-01) DOI: 10.1681/ASN.2020050598
J Am Soc Nephrol. 2021 Mar;32(3):723-735. doi: 10.1681/ASN.2020050598. Epub 2021 Feb 5.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33547218/

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました