透析患者の心血管イベントおよび残存腎機能に対するACE阻害薬/ARBの効果はどのくらい?(RCTのメタ解析; BMC Nephrol. 2017)

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透析患者におけるACE阻害薬/ARBの使用は、心血管イベントおよび残存腎機能に対して有益な作用をもたらすのか?

心血管イベントは、透析患者の主要な死因であり、死亡率は一般人口の7〜30倍であることが報告されています(PMID: 20082919PMID: 14604997)。これまでに行われた透析患者を対象とした観察研究では、残存糸球体濾過量(GFR)の漸次低下と死亡率の上昇との関連が報告されていますが(PMID: 11431186PMID: 21317411)、透析患者の生存率や残存腎機能との因果関係は確立されていません。

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)による治療は、慢性腎臓病(CKD)患者の心血管保護と残存腎機能の維持に大きく貢献していることは多くの報告があります(PMID: 11304102PMID: 17804673PMID: 26597926)。しかし、ほとんどの試験では、維持透析を受けている末期腎不全患者が除外されていたため、透析患者の心血管イベントと残存腎機能に対するACE-I/ARBの有益な効果は充分に検討されていません。透析患者におけるACE-I/ARB療法の効果を検証したいくつかの大規模試験では、一貫性のない結果が得られており、これらの薬剤の保護効果については多くの不確実性が残っています(PMID: 16766543PMID: 16871247PMID: 18653268PMID: 25011693)。

そこで今回は、透析患者における心血管イベントおよび残存腎機能低下に対するACE-IおよびARBの効果を評価したメタ解析の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

試験11件には、透析療法を受けている1,856例が含まれていました。プラセボや他の有効薬群と比較して、ARB療法は、透析患者の血圧を同様に低下させながら、心不全イベントのリスクを33%減少させました(RR 0.67、95%CI 0.47~0.93)。

間接的な比較では、ARB治療中に起こる心血管イベントが少ないことが示唆されました(0.77、0.63〜0.94)。また、心筋梗塞(1.0、0.45~2.22)、脳卒中(1.16、0.69~1.96)、心血管死(0.89、0.64~1.26)、全死亡(0.94、0.75~1.17)の発生頻度については、ACE-I、他の治療法、プラセボとの間に有意な差は認められませんでした。

腎保護作用については、研究5件で報告されており、ACE-I/ARB療法は、残存腎機能(MD 0.93 mL/min/1.73m2、0.38~1.47 mL/min/1.73m2)および尿量(MD 167mL、95%CI 21~357mL)の低下速度を有意に遅らせることが明らかになりました。

薬剤関連の有害事象について、ACE-I/ARBs療法は、対照と比較して、高カリウム血症(1.29、0.76~2.17)、低血圧(1.03、0.73~1.45)、咳嗽(2.63、0.00~39,507)のリスクを増加させませんでした。

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GFRやCCrなどの腎機能低下に対するACE-I/ARBの効果は多くの報告で明らかにされています。一方で、より腎機能が低下し透析導入となった患者における薬剤の効果は明らかとなっていませんでした。今回ご紹介した試験は2017年に報告されたものです。その結果、ACE-Is/ARBs療法が、主に腹膜透析患者の残存腎機能低下を減少させることが示されました。ACE-Is/ARBsは透析患者の心血管イベントを減少させませんでしたが、ARB治療は心不全を含む心血管イベントを減少させることが示されました。また、ACE-I/ARBs療法は、対照と比較して、高カリウム血症、低血圧、咳嗽リスクを増加させませんでした。ただし、個々に解析されていませんので、実際には、ACE-Iによる咳嗽リスクなど、個々の薬剤による有害事象リスクを検証する必要があります。

透析患者の心血管イベントに対するACE-I/ARBの効果検証には、更なるデータ集積が必要であると考えられます。

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✅まとめ✅ ACE-Is/ARBs療法が、主に腹膜透析患者の残存腎機能低下を減少させることが示された。ACE-Is/ARBsは透析患者の心血管イベントを減少させないが、ARBによる治療は心不全を含む心血管イベントを減少させるようである。

根拠となった試験の抄録

背景:アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が、慢性腎臓病患者の心血管イベント(CVE)のリスクを低減し、腎機能を維持する役割を果たしていることは十分に知られている。しかし、透析患者におけるこれらの薬剤の有効性と安全性については、いまだに論争の的となっている。

方法:MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Wanfangでランダム化試験を系統的に検索した。相対的リスク(RR)低下はrandom-effectsモデルを用いて算出した。
主要な心血管イベント、GFRの変化、薬剤関連の有害事象を解析した。

結果:試験11件には、透析療法を受けている1,856例が参加した。プラセボや他の有効薬群と比較して、ARB療法は、透析患者の血圧を同様に低下させながら、心不全イベントのリスクを33%減少させた(RR 0.67、95%CI 0.47~0.93)。間接的な比較では、ARB治療中に起こる心血管イベントが少ないことが示唆された(0.77、0.63〜0.94)。また、心筋梗塞(1.0、0.45~2.22)、脳卒中(1.16、0.69~1.96)、心血管死(0.89、0.64~1.26)、全死亡(0.94、0.75~1.17)の発生頻度については、両治療法の間に有意な差は認められなかった。
腎保護作用については、研究5件で報告されており、ACE-I/ARB療法は、残存腎機能(MD 0.93 mL/min/1.73m2、0.38~1.47 mL/min/1.73m2)および尿量(MD 167mL、95%CI 21~357mL)の低下速度を有意に遅らせることが明らかになった。
薬剤関連の有害事象については、両投与群で差は認められなかった。

結論:本研究では、ACE-Is/ARBs療法が、主に腹膜透析患者の残存腎機能低下を減少させることが示された。全体として、ACE-IsおよびARBは透析患者の心血管イベントを減少させないが、ARBによる治療は心不全を含む心血管イベントを減少させるようである。また、ACE-IsとARBは副作用のリスクを高めるものではない。

キーワード:アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬, ACE-I)、心血管イベント、透析、メタアナリシス、残存腎機能

引用文献

Effects of angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers on cardiovascular events and residual renal function in dialysis patients: a meta-analysis of randomised controlled trials
Youxia Liu et al. PMID: 28666408 PMCID: PMC5493067 DOI: 10.1186/s12882-017-0605-7
BMC Nephrol. 2017 Jun 30;18(1):206. doi: 10.1186/s12882-017-0605-7.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28666408/

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