プロトンポンプ阻害剤および併用薬と急性腎障害リスクとの関連性はどのくらいですか?(ネステッドケースコントロール研究; BMJ Open. 2021)

photo of woman looking upwards 04_消化器系
Photo by Jonathan Andrew on Pexels.com

PPI単独よりも併用薬の種類によりAKIリスクが増加する?

これまでの研究で、プロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitors, PPI)の使用と、急性腎障害(acute kidney injury, AKI)、急性尿細管間質性腎炎(acute tubulointerstitial nephritis, AIN)、慢性腎臓病のリスク増加との間に関連性がある可能性が示されています(PMID: 28339835PMID: 28257716)。特に、いくつかの大規模な観察研究では、PPI使用とAKIの病態との相互関係が示唆されています(PMID: 27492273PMID: 26752337PMID: 27080976PMID: 28583827PMID: 30779194PMID: 23865955PMID: 26389094PMID: 29603109

最近では、免疫チェックポイント阻害剤を投与された患者において、PPI使用がAKIの独立した危険因子であることが報告されています(PMID: 31672794PMID: 31896554)。PPIは、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)や抗生物質など、腎毒性を有す可能性のある薬剤と同時に処方されることが多い。しかし、PPI使用者の腎有害事象リスクに対する併用薬の影響については、あまり調査されていません。その結果、NSAIDsはPPI使用者のAKIリスクに影響を与えないことが示唆されましたが、これらの研究は統計的検出力が不十分であること(PMID: 29603109)や選択バイアスの可能性があることで限界がありました(PMID: 22887960)。

これまでの研究では、PPI使用終了からAKI発症までの期間を考慮していなかったり、PPI使用に関連するAKIリスクを90日または120日という比較的広いリスクウィンドウで評価していたりしました。

そこで今回は、PPI(新規使用)、NSAID、抗生物質を1回以上処方され、コホート参加前に腎疾患の既往がない患者を対象としたネステッド症例対象研究の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2005年1月から2017年6月の間に、PPI、NSAID、抗生物質を1回以上処方された患者が対象となリました。PPIの新規使用者であり、コホート参加前に腎疾患の既往がない患者を対象としました(n=219,082)。平均年齢は45歳で、44%が女性でした。

平均2.4(SD 1.7)年の追跡期間中に、317例のAKIが確認されました(発生率 6.1/10,000人・年

現在のPPI使用は、過去のPPI使用と比較してAKIリスクの高さが示されました(未調整OR 4.09、95%CI 3.09~5.44)。

PPIとNSAIDs、セファロスポリン、フルオロキノロンを併用している場合のAKIの未調整ORは、PPIのみを使用している場合と比較して、それぞれ3.92(95%CI 2.40~6.52)、2.57(1.43~4.62)、3.08(1.50~6.38)でした。

未調整オッズ比
(95%CI)
PPI使用reference
 +NSAIDs3.92
(2.40~6.52)
 +セファロスポリン2.57
(1.43~4.62)
 +フルオロキノロン3.08
(1.50~6.38)

コメント

本試験では、適応症による交絡の影響を軽減するために、初めてPPIを使用した患者と使用を再開した患者の集団内で、ネステッド症例対象研究を実施しました。その結果、NSAIDsとPPIの併用は、AKIの発症リスクの上昇と関連しており、感度分析でも一貫していました。さらに、抗生物質(ペニシリン系、マクロライド系、セファロスポリン系、フルオロキノロン系)との併用による影響についても検討しており、セファロスポリン系薬およびフルオロキノロン系薬との併用によるAKIリスク増加が示されました。患者集団の平均年齢は52歳(抄録では45歳だが結果のTable 1では52歳)と、高齢者ではないことから、実臨床において、将来のAKIリスク発生について考慮することは困難であると考えます。

PPI単独使用によるAKI発症については、リスクが増加する、あるいは変わらないとする報告があることから、結論づけられません。あくまでもリスクが増加するかもしれないとする報告にとどまっています。本試験においても相関関係までしか述べられませんが、PPI使用と比較して、PPIとNSAIDs併用、あるいはセファロスポリン系薬やフルオロキノロン系薬との併用によりAKIリスクが増加するかもしれません。どのような交絡因子があるのかについて明らかとなっていません。因果の逆転の可能性は充分にあります。

今後は、どのような患者で、よりリスクが増加するのか検討していく必要があると考えます。

photo of gray cat looking up against black background

✅まとめ✅ NSAIDsとPPIの併用はAKIのリスクを有意に増加させた。さらに、セファロスポリン系薬やフルオロキノロン系薬とPPIの併用はAKI発症リスクの上昇と関連していることが示唆された。

根拠となった論文の抄録

目的:本研究では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)または抗生物質(ペニシリン系、マクロライド系、セファロスポリン系、フルオロキノロン系)との併用が、急性腎障害(AKI)のリスク増加と関連するかどうかを評価することを目的とした。

試験デザイン:ネステッド症例対象研究

試験設定:日本医療データセンターが構築した健康保険請求データベース。

対象者:2005年1月から2017年6月の間に、PPI、NSAID、抗生物質を1回以上処方された患者が対象となった。PPIの新規使用者であり、コホート参加前に腎疾患の既往がない患者を対象とした(n=219,082)。平均年齢は45歳で、44%が女性であった。

介入:現在のPPI、NSAIDsまたは抗生物質の使用状況。

主要評価項目:急性腎障害

結果:平均2.4(SD 1.7)年の追跡期間中に、317例のAKIが確認された(発生率 6.1/10,000人・年)。現在のPPI使用は、過去のPPI使用と比較してAKIのリスクが高かった(未調整OR 4.09、95%CI 3.09~5.44)。PPIとNSAIDs、セファロスポリン、フルオロキノロンを併用している場合のAKIの未調整ORは、PPIのみを併用している場合と比較して、それぞれ3.92(95%CI 2.40~6.52)、2.57(1.43~4.62)、3.08(1.50~6.38)でした。PPIとNSAIDs、セファロスポリン、フルオロキノロンとの併用の影響は、調整後のモデルでも有意に残っていた。AKIの絶対リスクに関する解析では、ネステッドケースコントロール研究の結果が確認された。

結論:NSAIDsとPPIの併用はAKIのリスクを有意に増加させた。さらに、セファロスポリン系薬やフルオロキノロン系薬とPPIの併用はAKI発症リスクの上昇と関連していることが示唆された。

キーワード:急性腎不全、臨床薬理学、疫学、毒性

引用文献

Association of proton pump inhibitors and concomitant drugs with risk of acute kidney injury: a nested case-control study
Keiko Ikuta et al. PMID: 33589451 PMCID: PMC7887345 DOI: 10.1136/bmjopen-2020-041543
BMJ Open. 2021 Feb 15;11(2):e041543. doi: 10.1136/bmjopen-2020-041543.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33589451/

関連記事

【SGLT2阻害薬と他の血糖低下薬を併用した2型糖尿病患者における急性腎障害イベントのリスクはどのくらいですか?(後向きコホート研究; AJKD 2020)】

【COVID-19患者における急性腎障害の関連因子および発生リスクはどのくらいですか?(後向きコホート研究; Clin J Am Soc Nephrol. 2020)】

【成人CKD患者における造影剤CT検査後の急性腎障害予防において、プレハイドレーションを行わない場合と重炭酸ナトリウム投与によるプレハイドレーション、どちらが優れていますか?(Kompas RCT; 非劣性; JAMA Intern Med. 2020)】

コメント

タイトルとURLをコピーしました