中等度から重度のアトピー性皮膚炎の青年期および成人期におけるウパダシチニブとコルチコステロイド外用薬の併用療法の有効性・安全性は?(DB-RCT; AD Up試験; Lancet 2021)

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アトピー性皮膚炎に対する経口JAK阻害薬の効果はどのくらいか?

アトピー性皮膚炎に対する薬物療法において、ステロイド外用薬は、抗炎症外用薬として第一選択薬として使用されることが多く、小児および成人を対象に使用されています(推奨度1・エビデンスレベルA;アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018)。

アトピー性皮膚炎では炎症が軽快して一見正常に見える皮膚においても、組織学的には炎症細胞が残存しており、再び炎症を引き起こしやすい状態にあり、この潜在的な炎症をステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬を定期的に使用継続することによって、炎症の再燃を予防することが可能になることが多いとされています。しかし、この炎症症状のコントロールは困難なケースが多く、しばしば再燃することが報告されています。

JAK阻害薬は、炎症に関与するJAK/STAT経路を阻害し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善することが明らかとなっています。

そこで今回は、JAK2阻害薬であるウパダシチニブと副腎皮質ステロイド外用剤の併用療法の効果を検証したAD Up試験の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

2018年8月9日から2019年12月20日の間に、患者901例を、ウパダシチニブ15mg+副腎皮質ステロイド外用剤(n=300)、ウパダシチニブ30mg+副腎皮質ステロイド外用剤(n=297)、またはプラセボ+副腎皮質ステロイド外用剤(n=304)の投与にランダム割り付けされました。

16週目の時点で、EASI-75を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ15mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(194/300例[65%])およびウパダシチニブ30mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(229/297例[77%])で、プラセボ群(80/304例[26%])よりも有意に高いことが明らかとなりました。
EASI-75 奏効率の調整済み対プラセボ差は、ウパダシチニブ15mg群が38.1%[95%CI 30.8〜45.4]、ウパダシチニブ30mg 群が50.6%[43.8〜57.4]、両用量とも p<0.0001。

副腎皮質ステロイド外用剤の併用下16週目においてEASI-75を達成した患者の割合vs. プラセボ差
[95%CI]
ウパダシチニブ15mg194/300例[65%]38.1%
[30.8〜45.4]
p<0.0001
ウパダシチニブ30mg229/297例[77%]50.6%
[43.8〜57.4]
p<0.0001
プラセボ80/304例[26%]

16週目にvIGA-AD反応が得られた患者の割合は、ウパダシチニブ15mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(119例[40%])およびウパダシチニブ30mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(174例[59%])で、プラセボ群(33例[11%])よりも有意に高かった。vIGA-AD反応のプラセボに対する調整済み差は、ウパダシチニブ15mg群で28.5%[22.1〜34.9]、ウパダシチニブ30mg群で47.6%[41.1〜54.0]、両用量ともp<0.0001。

副腎皮質ステロイド外用剤の併用下16週目においてvIGA-AD反応が得られた患者の割合vs. プラセボ差
[95%CI]
ウパダシチニブ15mg119例[40%]28.5%
[22.1〜34.9]
p<0.0001
ウパダシチニブ30mg174例[59%]47.6%
[41.1〜54.0]
p<0.0001
プラセボ33例[11%]

二重盲検期間中、ウパダシチニブ15mgおよび30mgは、外用コルチコステロイドとの併用で良好な忍容性を示しました。最も頻繁に報告された治療上の有害事象(いずれの治療群でも5%以上)は、ニキビ、鼻咽頭炎、上気道感染、口唇ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ値の上昇、頭痛、アトピー性皮膚炎でした。ニキビの発生率は、ウパダシチニブ15mg群(30/300例[10%])およびウパダシチニブ30mg群(41/297例[14%])で、プラセボ群(6/304例[2%])よりも高いことが明らかとなりました。
試験薬の中止に至った有害事象(ウパダシチニブ15mg+副腎皮質外用剤群で4例[1%]、ウパダシチニブ30mg+副腎皮質外用剤群で4例[1%]、プラセボ+副腎皮質外用剤群で7例[2%])および重篤な有害事象(7例[2%]、4例[1%]、9例[3%])の発生率は、治療群間で同等でした。死亡例はいずれの治療群でも報告されませんでした。

コメント

アトピー性皮膚炎の治療法は病態に応じて「薬物療法」、「皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア」、「悪化因子の検索と対策」、これら3点が基本となっており、個々の患者ごとに症状の程度や背景などを勘案して適切に組み合わせることとされています(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018)。このうち、現時点でのアトピー性皮膚炎の薬物治療としては、抗炎症外用薬のステロイドおよびタクロリムス(プロトピック®️)が中心的治療薬と位置付けられており、有効性と安全性について多くの臨床研究で検討されてきました。これらの中心的治療薬を使用しても効果不十分なアトピー性皮膚炎に対し、2018年4月よりヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ(デュピクセント®️)が、皮下注製剤として臨床使用されています。

JAK阻害薬であるデルゴシチニブ(コレクチム®️軟膏)は、ステロイド外用薬でコントロール不充分なアトピー性皮膚炎患者を対象としていますが、ステロイド外用薬やタクロリムス(プロトピック®️)との比較は行われていません。さらにJAK阻害薬と副腎皮質ステロイド外用剤との併用効果についても、明らかとなっていませんでした。

今回のAD Up試験の結果から、ウパダシチニブ(リンヴォック®️)15mgあるいは30mgを副腎皮質ステロイド外用剤と併用したところ、プラセボと副腎皮質ステロイド外用剤の併用と比較して、16週目にvIGA-AD反応が得られた患者の割合、EASI-75を達成した患者の割合が有意に高いことが示されました。また忍容性も示されたようです。

気にかかる点は有害事象ですが、最も頻繁に報告された治療上の有害事象(いずれの治療群でも5%以上)は、ニキビ、鼻咽頭炎、上気道感染、口唇ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ値の上昇、頭痛でした。血栓症や重篤な感染症は報告されなかったようです。しかし、ウパダシチニブ30mgを使用した場合、前述のリスクが増加する可能性がありますので、より長期的な安全性データの蓄積が待たれるところです。

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✅まとめ✅ 副腎皮質ステロイド外用剤の併用下、ウパダシチニブ群は、プラセボ群よりも忍容性が高く、優れていた。

根拠となった試験の抄録

背景:中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療には、通常、全身療法と局所のコルチコステロイドが併用される。ウパダシチニブは、JAK2、JAK3、チロシンキナーゼ2よりもJAK1に対する阻害力が高い経口のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤で、アトピー性皮膚炎を対象とした臨床試験が行われている。我々は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の治療において、ウパダシチニブと局所コルチコステロイドの併用療法の有効性と安全性を、プラセボと比較して評価することを目的とした。

方法:ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、第3相試験(AD Up)において、中等度から重度の慢性アトピー性皮膚炎(≥患部の体表面積が10%以上、EASIスコアが16点以上、有効なInvestigator’s Global Assessment for atopic dermatitis [vIGA-AD]スコアが3点以上、ベースライン時の週平均のWorst Pruritus Numerical Rating Scaleスコアが4点以上)を有する成人(18~75歳)および青年(12~17歳)を対象とした。
アジア太平洋地域、欧州、中東、北米、オセアニアの22ヵ国、171の臨床施設において、中等度の慢性アトピー性皮膚炎(体表面の10%以上が湿疹面積・重症度指数[EASI]スコア16以上、有効なアトピー性皮膚炎の治験担当医師によるグローバル評価[vIGA-AD]スコア3以上、ベースライン時の週平均最悪の痒み数値評価スケールスコア4以上)の患者が登録された。
患者は、ウパダシニブ15mg、ウパダシニブ30mg、またはプラセボを1日1回、いずれも外用コルチコステロイドと併用して16週間投与する群にランダムに割り付けられた(1:1:1)。ランダム化は、ベースラインの疾患の重症度、地理的地域、年齢によって層別され、対話型応答技術システム(IRTS)を用いて行われた。治験責任医師、治験実施施設の担当者、および患者は、治験の治療法についてマスキングされた。
主要評価項目は、16 週目にEASIスコアがベースラインから75%以上低下した患者の割合(EASI-75)と、viga-AD反応(viga-ADスコアが 0[clear、なし]または 1[almost clear、軽度]でベースラインから 2グレード以上改善した患者と定義)を達成した患者の割合でした。有効性はintention-to-treat集団で分析され、安全性は試験薬を少なくとも1回投与されたすべての患者で分析された。本試験はClinicalTrials.gov(NCT03568318)に登録されており、活動中であるが、募集は行っていない。

調査結果:2018年8月9日から2019年12月20日の間に、患者901例を、ウパダシチニブ15mg+副腎皮質ステロイド外用剤(n=300)、ウパダシチニブ30mg+副腎皮質ステロイド外用剤(n=297)、またはプラセボ+副腎皮質ステロイド外用剤(n=304)の投与にランダム割り付けした。

16週目の時点で、EASI-75を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ15mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(194/300例[65%])およびウパダシチニブ30mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(229/297例[77%])で、プラセボ群(80/304例[26%])よりも有意に高かった。
EASI-75 奏効率の調整済み対プラセボ差は、ウパダシチニブ15mg群が38.1%[95%CI 30.8〜45.4]、ウパダシチニブ30mg 群が50.6%[43.8〜57.4]、両用量とも p<0.0001。
16週目にvIGA-AD反応が得られた患者の割合は、ウパダシチニブ15mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(119例[40%])およびウパダシチニブ30mg+副腎皮質ステロイド外用剤群(174例[59%])で、プラセボ群(33例[11%])よりも有意に高かった。vIGA-AD反応のプラセボに対する調整済み差は、ウパダシチニブ15mg群で28.5%[22.1〜34.9]、ウパダシチニブ30mg群で47.6%[41.1〜54.0]、両用量ともp<0.0001。
二重盲検期間中、ウパダシチニブ15mgおよび30mgは、外用コルチコステロイドとの併用で良好な忍容性を示した。

最も頻繁に報告された治療上の有害事象(いずれの治療群でも5%以上)は、ニキビ、鼻咽頭炎、上気道感染、口唇ヘルペス、血中クレアチンホスホキナーゼ値の上昇、頭痛、アトピー性皮膚炎であった。ニキビの発生率は、ウパダシチニブ15mg群(30/300例[10%])およびウパダシチニブ30mg群(41/297例[14%])で、プラセボ群(6/304例[2%])よりも高かった。試験薬の中止に至った有害事象(ウパダシチニブ15mg+副腎皮質外用剤群で4例[1%]、ウパダシチニブ30mg+副腎皮質外用剤群で4例[1%]、プラセボ+副腎皮質外用剤群で7例[2%])および重篤な有害事象(7例[2%]、4例[1%]、9例[3%])の発生率は、治療群間で同等であった。死亡例はいずれの治療群でも報告されなかった。

結果の解釈:ウパダシチニブ+副腎皮質ステロイド外用剤群は、プラセボ+副腎皮質ステロイド外用剤群よりも忍容性が高く、優れていた。併用療法としてのウパダシチニブは、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の成人および青年において、ベネフィット・リスク・プロファイルが良好であった。

資金提供:AbbVie社。

引用文献

Safety and efficacy of upadacitinib in combination with topical corticosteroids in adolescents and adults with moderate-to-severe atopic dermatitis (AD Up): results from a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial
Kristian Reich et al. PMID: 34023009 DOI: 10.1016/S0140-6736(21)00589-4
Lancet. 2021 Jun 5;397(10290):2169-2181. doi: 10.1016/S0140-6736(21)00589-4. Epub 2021 May 21.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34023009/

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