遅発性ジスキネジアに対するバルベナジンの効果はどのくらいですか?(DB-RCT; KINECT3; Am J Psychiatry. 2017)

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ジスキネジアとは?

ジスキネジアとは、自分では止めらない、または止めてもすぐに出現するおかしな動きをまとめた呼び名です。他の人から見ると、自分で勝手に動いているのか、止められないで困っているのか分からないような動きです。

ジスキネジアの頻度の高い状態が二つあります。
一つは、遅発性ジスキネジアと言って、抗精神病薬などを長期間使用していると出現するものです。もう一つは、パーキンソン病治療薬などドパミン作動薬を投与中に出現するジスキネジア・舞踏運動・ジストニアなどの混ざったものです。

しばしば見られる症状としては、繰り返し唇をすぼめる・舌を左右に動かす・口をもぐもぐさせる・口を突き出す・歯を食いしばる・目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている・勝手に手が動いてしまう・足が動いてしまって歩きにくい・手に力が入って抜けない・足が突っ張って歩きにくい等です。さらに、人によっては、じっとしていられず同じ動きをくりかえしていることがあります(アカシジア)。足を組んだりはずしたり・手の回内回外(ドアノブを回すような動き)を繰り返したり・椅子から立ったり座ったり等と同じ動きを繰り返さずにはいられないという症状があらわれることがあります。

発症までの経過として、遅発性ジスキネジアは薬剤を投与してから、一般的に3ヵ月以上経ってから、症状が出現すると報告されています。ただし、長く内服していると発症頻度がどんどん上がっていくとされているため、投与後5年で症状が出ることも 10 年で出ることもあります(重篤副作用疾患別対応マニュアル ジスキネジアより)。

遅発性ジスキネジアへの特徴、対処、課題

遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬や制吐薬などのトドパミン受容体遮断薬に慢性的に曝されることで、しばしば持続的かつ障害的な症状を呈します。特徴的な症状として、顔、体幹、四肢の不随意運動が挙げられます。当初、第二世代(非定型)抗精神病薬は遅発性ジスキネジアのリスクが低いと予想されていましたが、現在では、第一世代、第二世代ともに遅発性ジスキネジアの有意なリスクがあることが示唆されています。抗精神病薬を慢性的に服用している患者の約20〜30%が遅発性ジスキネジアを発症すると推定されています(PMID: 21172575PMID: 23858394)。

遅発性ジスキネジアの対処法としては、抗精神病薬の投与を中止するか、投与量を減らすことが挙げられますが、抗精神病薬の中止は遅発性ジスキネジアの症状を悪化させたり、精神状態に悪影響を及ぼす可能性があるため、必ずしも実行可能な方法ではありません。また、休薬や減量を行っても、遅発性ジスキネジアの症状が持続することがあります(PMID: 23858394PMID: 25374768)。

小胞性モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤とは?

現在、米国食品医薬品局(FDA)から遅発性ジスキネジアの治療薬として承認されている薬剤はありませんが、様々な薬剤が研究され、適応外で使用されていますが、これらの治療法のエビデンスは限られています。運動障害の治療に期待されている薬剤の一つに、小胞性モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤があります。

VMAT2阻害剤は、シナプス前でのドーパミンのプレパッケージングとシナプスへの放出を調節することで、抗精神病薬や他のドーパミン受容体遮断薬の運動関連の副作用を相殺することができると考えられています。VMAT2阻害剤であるテトラベナジンは、ハンチントン病の不随意運動(コリア)の治療薬として承認されており、その他の多動性運動障害(遅発性ジストニア、トゥレット症候群のチックなど)の患者にも良好な効果が認められています(PMID: 9040721)。

バルベナジン(NBI-98854)は、新規かつ高選択的なVMAT2阻害剤であり、1日1回の投与で良好な薬物動態プロファイルを示します。第2相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験において、バルベナジン(25mg/日から最大75mg/日まで増量)は、ビデオ録画された検査結果のAIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale)による盲検中心評価、および治験責任医師と患者が評価するグローバル評価において、遅発性ジスキネジアの重症度を有意に減少させることが示されましたが、より大規模な臨床試験による検証が必要です。

そこで今回は、成人の遅発性ジスキネジア患者を対象に、バルベナジンの固定用量の有効性、安全性および忍容性を評価した第3相試験(KINECT 3)の結果をご紹介します。

試験結果から明らかになったことは?

治療目的で参加した225例のうち、205例(91.1%)が試験を完了し、参加者の約65%が統合失調症または統合失調感情障害であり、85.5%が抗精神病薬を併用していました。

AIMSジスキネジアスコアのベースラインから6週目までの最小二乗平均変化量は、バルベナジン80mg/日投与群で-3.2であったのに対し、プラセボ投与群では-0.1であり、有意差が認められました。また、バルベナジン40mg/日投与群では-1.9でした。

有害事象の発生率はこれまでの研究と同様でした。

コメント

小胞性モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤という存在を初めて知りました。海外では類薬が既に使用されているようです。

さて、新規VMAT2阻害薬であるバルベナジンは、プラセボと比較して、AIMSジスキネジアスコアを有意に低下させました。

MCIDは最低2ポイントであることが示されていますので、期待の持てる結果です。続報に期待。

MCIDについてはこちら:https://pharmacyebmrozero.com/wp-admin/post.php?post=4814&action=edit

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✅まとめ✅ バルベナジンの1日1回投与は、統合失調症、統合失調感情障害、気分障害を基礎疾患とする患者の遅発性ジスキネジアを有意に改善した。

根拠となった論文の抄録

目的:遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬を含むドパミン受容体遮断薬によって誘発される持続的な運動障害である。バルベナジン(Valbenazine, NBI-98854)は、新規の高選択的小胞性モノアミントランスポーター2阻害剤であり、第2相試験において、遅発性ジスキネジアに対する有効性と忍容性の良好さが示された。今回の第3相試験では、バルベナジンの遅発性ジスキネジアに対する有効性、安全性、忍容性をさらに評価した。

方法:本試験は、中等度または重度の遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、または気分障害の患者を対象とした6週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験である。参加者は、1日1回のプラセボ、バルベナジン40mg/日、バルベナジン80mg/日のいずれかに1:1:1の割合でランダム割り付けされた。
有効性の主要評価項目は、AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale:異常不随意運動評価尺度)のジスキネジアスコア(項目1~7)について、80mg/日投与群とプラセボ投与群のベースラインから6週目までの変化であり、盲検化された中央のAIMSビデオ評価者によって評価された。
安全性の評価は、有害事象のモニタリング、臨床検査、心電図、および精神医学的尺度で行われた。

結果:治療目的で参加した225例のうち、205例(91.1%)が試験を完了した。参加者の約65%が統合失調症または統合失調感情障害であり、85.5%が抗精神病薬を併用していた。
AIMSジスキネジアスコアのベースラインから6週目までの最小二乗平均変化量は、80mg/日投与群で-3.2であったのに対し、プラセボ投与群では-0.1であり、有意差が認められた。また、AIMSジスキネジアスコアは、40mg/日投与群で-1.9であったのに対し、-0.1であった。
有害事象の発生率はこれまでの研究と同様であった。

結論:バルベナジンの1日1回投与は、統合失調症、統合失調感情障害、気分障害を基礎疾患とする患者の遅発性ジスキネジアを有意に改善した。バルベナジンの忍容性はおおむね良好であり、精神状態は安定していた。遅発性ジスキネジア患者におけるバルベナジンの長期的な効果を理解するためには、より長期の試験が必要である。

臨床試験登録:ClinicalTrials.gov NCT02274558

引用文献

KINECT 3: A Phase 3 Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial of Valbenazine for Tardive Dyskinesia
Robert A Hauser et al. PMID: 28320223 DOI: 10.1176/appi.ajp.2017.16091037
Am J Psychiatry. 2017 May 1;174(5):476-484. doi: 10.1176/appi.ajp.2017.16091037. Epub 2017 Mar 21.
— 続きを読む pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28320223/

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