ビタミンB12で軽度の歌唱関連症状が改善する?
歌手や声楽の専門家の3分の1は、ビタミンB12注射で軽度の歌唱関連症状(例:スタミナの低下、声帯疲労、努力の低下)を改善する効果を経験したと報告しています。
しかし、いずれも症例報告であり、客観的なエビデンスは充分とは言えません。
そこで今回の研究では、ビタミンB12の効果について、プラセボ対照クロスオーバー試験で検証しています。
結果は?
歌手 20例を対象に、ビタミンB12(シアノコバルミン1,000μg)またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム)の筋肉内(三角筋)注射を実施したところ、ビタミンB12注射による歌手の自己申告による声の測定値の改善は、プラセボと比較して意味のある差を示さないことが明らかになりました。
小規模な検討結果ではありますが、試験デザインは問題ないと考えます。現在のところ、経験的なビタミンB12注射を推奨できません。
✅まとめ✅ 発声に関連する症状を改善するためにビタミンB12を経験的に注射した後、歌手の自己申告による声の測定値の改善はプラセボと比較して意味のある差を示さないことが明らかになった
根拠となった論文の抄録
試験の重要性:歌手や声楽の専門家の3分の1は、経験的なビタミンB12注射で軽度の歌唱関連症状(例:スタミナの低下、声帯疲労、努力の低下)を改善する効果を経験したと報告している。しかし、これらの主張を支持したり、反論したりする客観的な証拠はありません。
目的:歌手の声楽パフォーマンスに対する経験的ビタミンB12注射の効果の有無とその大きさを評価すること。
試験デザイン、設定、および参加者:ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験を、2017年11月7日から2018年11月30日まで、アカデミックボイスセンターにおいて、発声障害はないが軽度の発声症状を有する活動的な成人歌手20例を対象に実施した。ビタミンB12欠乏症が知られているか疑われているか、またはビタミンB12の治療を受けているか最近受けたかのいずれかの個人は除外された。分析はプロトコルごとに行われた。
介入:参加者は、ビタミンB12(シアノコバルミン1,000μg)またはプラセボ(0.9%塩化ナトリウム)の筋肉内(三角筋)注射を受けるようにランダムに割り付けられた。少なくとも4週間のウォッシュアウト期間の後、参加者は反対側の注射を受けるためにクロスオーバーされた。研究者と参加者は、注射の順番を盲検化した。
主なアウトカムと測定方法:参加者は、各注射前と注射後1時間、3時間、24時間、72時間、1週間の間隔で、歌声ハンディキャップ指数10(SVHI-10)、声の疲労指数(VFI)、歌いやすい能力評価(EASE)を記入した。主要タイムポイント評価は注射後72時間後で、SVHI-10スコアを主要転帰尺度とした。
結果:歌手 20例(男性 10例;年齢中央値 22歳[範囲 19~42歳])が登録された。プラセボまたはビタミンB12注射後の改善は互いに同等であった。ビタミンB12注射後72時間時点でのSVHI-10スコアの差の中央値は、プラセボ投与後が3(95%CI 0~4)であったのに対し、1(95%CI -1~2)であった。プラセボとビタミンB12注射の72時間後の差の中央値は、SVHI-10が1.5(95%CI -2~5)、VFIが1(95%CI -9~9)、EASEが -1(95%CI -3~2)であった。両方の注射後の改善は、推定された臨床的に重要な最小差に達することができなかった。参加者 20例のうち、4例(20%)がビタミンB12とプラセボの両方の注射で72時間後にSVHI-10スコアの臨床的に重要な推定最小差に達した。
結論と関連性:このランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験では、発声に関連する症状を改善するためにビタミンB12を経験的に注射した後、歌手の自己申告による声の測定値の改善はプラセボと比較して意味のある差を示さないことが明らかになった。
引用文献
ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03437824.
— Read on pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33180098/
コメント