The effects of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors on kidney outcomes
Daniel V O’Hara et al.
Diabetes Obes Metab. 2020 Dec 2.
doi: 10.1111/dom.14281. Online ahead of print.
PMID: 33269512
DOI: 10.1111/dom.14281
Keywords: DPP-4 inhibitors; diabetes mellitus; kidney outcomes.
目的
2型糖尿病(T2DM)患者の腎臓転帰に対するジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤の効果に関するランダム化比較試験(RCT)のエビデンスをまとめる。
方法
Medline、EMBASE、Cochraneデータベースを検索し、2型糖尿病患者を対象にDPP-4阻害薬とプラセボ、実薬対照、あるいは標準治療とを比較したRCTを500人・年以上追跡調査し、腎アウトカムを報告した。
治療効果はランダム効果メタアナリシスを用いて要約した。
結果
・患者 47,955例を含む試験 10件が対象となった。
ベースライン:平均推定糸球体濾過率 71mL/min/1.73m2
1試験あたりの平均追跡期間 10,762人・年
・DPP-4阻害薬をプラセボ(5試験)、実薬対照(3試験)、標準治療(2試験)と比較した。
・全体的に、DPP-4阻害薬による治療は比較対照薬よりもeGFRの低下が大きかった。
★ 加重平均差 -1.12mL/min/1.73m2、95%信頼区間[CI] -1.61 〜 -0.62;確実性の高いエビデンス
・血清クレアチニンの倍増率(リスク比[RR]1.10、95%信頼区間[CI]0.90〜1.34;確実性の高いエビデンス)、末期腎疾患(RR 0.97、95%CI 0.77〜1.23;確実性の高いエビデンス)、腎関連死(RR 1.81、95% CI 0.67〜4.93;確実性の低いエビデンス)、または全死亡(RR 1.01、95% CI 0.95〜1.09;確実性の高いエビデンス)に対するDPP-4阻害薬の検出可能な効果は認められなかった。
・DPP-4阻害薬は、代替腎アウトカムである新規アルブミン尿(RR 0.88、95%CI 0.8〜0.98;確実性が中等度のエビデンス)とアルブミン尿の悪化(RR 0.88、95%CI 0.82〜0.94;確実性が中等度のエビデンス)のリスクを有意に減少させた。
・急性腎障害の安全性アウトカムに差はなかった(RR1.04、95%CI 0.57〜1.87;確証性の高いエビデンス)。
結論
ジペプチジルペプチダーゼ-4阻害薬は、アルブミン尿の発症と進行を抑制するにもかかわらず、eGFRの低下がより大きくなることと関連しており、他の主要な腎アウトカムには明確な影響を与えていない。
コメント
DPP-4阻害薬は、心血管アウトカムに影響を与えないことが報告されています。一方で、腎関連アウトカムについては、リナグリプチンでイベント発生率が低くなる可能性が示唆されています。しかし、DPP-4阻害薬としてのクラスエフェクトが得られるかは不明です。
さて、患者 47,955例を含む試験 10件が対象となった本試験によれば、血清クレアチニンの倍増率、末期腎疾患、腎関連死、全死亡に影響はありませんでした。一方、代替腎アウトカムである新規アルブミン尿及びアルブミン尿悪化のリスクを有意に減少させましたが、比較対照薬よりもeGFR低下が大きかったようです。ただし、このeGFR低下は-1.12(-1.61 〜 -0.62)ですので、実臨床でそこまで影響があるとは言えないと考えます。
評価できるとすれば、新規アルブミン尿及びアルブミン尿悪化のリスクを有意に減少させることでしょうか。薬価を考慮すると、DPP-4阻害薬を優先して使用するケースは少ないように考えます。
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