Olanzapine for Prevention of Vomiting in Children and Adolescents Receiving Highly Emetogenic Chemotherapy: Investigator-Initiated, Randomized, Open-Label Trial
Ramavath D Naik et al.
J Clin Oncol. 2020 Sep 15;JCO2000871. doi: 10.1200/JCO.20.00871. Online ahead of print.
PMID: 32931400
DOI: 10.1200/JCO.20.00871
目的
化学療法誘発性の悪心・嘔吐(Chemotherapy-induced nausea and vomiting, CINV)は化学療法の重大な毒性である。
オランザピンは成人患者におけるCINVの予防に推奨されているが、小児ではプロスペクティブな調査は行われていない。
方法
この治験責任医師主導のランダム化非盲検試験では、催吐性の高い化学療法(highly emetogenic chemotherapy, HEC)の第1サイクルを受ける予定の小児(5~18歳)を対象にオランザピンを評価した。
すべての参加者が、化学療法中および化学療法後2日目にアプレピタント、オンダンセトロン、デキサメタゾンを投与された。
試験群の参加者には、化学療法ブロック中および化学療法後3日目にオランザピン0.14mg/kg/日(2.5mg未満四捨五入、最大10mg)の経口投与が追加された。
主な目的は、急性期、遅発期、および全体期の各群間で完全奏効(complete response, CR)率(嘔吐なし、レスキュー薬なし)を比較することであった。
吐き気の比較および安全性の評価はそれぞれ副次的な目的および追加的な目的とした。アウトカムおよび有害事象の収集は、全期間終了まで毎日行った。
結果
・合計240例の患者がランダム化を受けた。231例(対照群 116例、試験群 115例)を対象に修正意図対治療分析を行った。
・オランザピン群では、対照群に比べて急性期(78% vs. 59%;P = 0.001)、遅発期(74% vs. 47%;P < 0.001)、全体期(64% vs. 38%;P < 0.001)でCRを達成した患者の割合が高かった。
・吐気のない患者の割合は、オランザピン群で急性期(74%v 52%;P<0.001)、遅発期(74%v 47%;P<0.001)、全体期(64%v 37%;P<0.001)で有意に高かった。
・グレード1/2の傾眠はオランザピン群で高かった(35% vs. 11%;P < 0.001)。グレード3/4の傾眠は報告されなかった。
結論
オランザピンは、HECの第1サイクルを受けた小児の嘔吐のCR率を有意に改善した。
コメント
化学療法による催吐リスクとは?
がんに対する化学療法においては催吐作用が伴います。各レジメンによる催吐リスクは以下のサイトを参照;
各レジメンによる催吐リスクは5段階ほどに分類され、それらに対する制吐療法も推奨されています。催吐性の高い化学療法においては、制吐療法が充分ではありません。
オランザピンによる制吐効果は?
催吐性の高い化学療法に対する制吐療法において、従来レジメンへのオランザピン追加による制吐効果が示されています。ただし、いずれの試験においても対象は成人であり、小児や青年に対する有効性・安全性は不明です。
今回の試験から明らかになったことは?
5~18歳を対象としたオープンラベルランダム化比較試験において、従来の制吐レジメン(アプレピタント、オンダンセトロン、デキサメタゾン)へのオランザピン追加は、従来レジメンと比較して、急性期、遅発期、全体期における完全奏功率および嘔気のない患者の割合が有意に高いことが示されました。一方、副作用としては、グレード1/2の傾眠が多かったようです。
化学療法のサイクルを重ねることによる長期的なリスクについては不明ですが、成人と同様に、小児および青年に対するオランザピン追加の制吐作用が明らかとなりました。
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