関節リウマチ患者における低用量グルココルチコイド使用は重症感染症リスクとなりますか?(後向きコホート研究; Annals of Internal Medicine 2020)

この記事は約4分で読めます。
ランキングに参加しています!応援してもよいよという方はポチってください!

Risk for Serious Infection With Low-Dose Glucocorticoids in Patients With Rheumatoid Arthritis

Michael D. George et al.

Annals of Internal Medicine 22 September 2020

Primary Funding Source: National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases.

背景

低用量のグルココルチコイドは、関節リウマチ(RA)やその他の慢性疾患の管理に頻繁に使用されているが、長期使用の安全性は不明である。

目的

安定した疾患修飾抗リウマチ薬(disease-modifying antirheumatic drug, DMARD)治療を受けているRA患者における低用量グルココルチコイドの長期使用による入院感染のリスクを定量化すること。

試験デザイン

レトロスペクティブコホート研究

試験設定

2006年から2015年までのメディケア請求データとOptumの非同定Clinformatics Data Martデータベース

対象患者

6ヵ月以上安定したDMARDレジメンを受けているRAの成人

測定データ

グルココルチコイド投与量(投与なし、5mg/d以下、5~10mg/d以上、10mg/d以上)と入院感染症との関連を逆確率加重分析を用いて評価し、加重モデルから1年間の累積罹患率を予測した。

結果

・メディケアでは患者 172,041例で247,297件の観察が、Optumでは患者44,118例で58,279件の観察が確認された。

・6ヵ月間のDMARDの安定した使用後、メディケア患者の47.1%、Optum患者の39.5%がグルココルチコイドを投与されていた。

・グルココルチコイドを投与していないメディケア患者における1年間の累積入院感染症発生率は、グルココルチコイド1日量5mg以下では8.6% vs. 11.0%(95%CI 10.6%~11.5%)、5~10mg/d以上では14.4%(CI 13.8%~15.1%)、10mg/d以上では17.7%(CI 16.5%~19.1%)であった(いずれもP<0.001 vs. グルココルチコイド非投与)。

・グルココルチコイド非投与のOptum患者における1年間の累積入院感染症発生率は、グルココルチコイド1日量5mg以下で4.0% vs. 5.2%(CI 4.7%~5.8%)、5~10mg/d以上で8.1%(CI 7.0%~9.3%)、10mg/d以上で10.6%(CI 8.5%~13.2%)であった(すべてのP < 0.001 vs. グルココルチコイド非投与)。

試験の限界

残存交絡およびグルココルチコイド投与量の誤分類の可能性。

結論

安定したDMARD療法を受けているRA患者において、グルココルチコイドは用量依存的に重篤な感染症のリスクを増加させ、1日5mg以下の用量でもリスクは小さいが有意であった。

臨床家は、低用量グルココルチコイドの利点とこの潜在的なリスクのバランスをとるべきである。

コメント

関節リウマチ(RA)患者におけるグルココルチコイド使用は、炎症を抑え、症状の緩和、疾患の進行抑制に寄与しています。一方、グルココルチコイドは、その抗炎症作用に加え、免疫抑制作用を有していることから、易感染性リスクを増加させます。

さて、本試験結果によれば、安定したDMARD療法を受けているRA患者において、グルココルチコイド使用は、用量依存的に感染リスクを増加させました。後向きコホート研究であるため、筆者が述べているように検討できていない残存交絡の可能性があります。したがって、グルココルチコイドを使用したことで感染リスクが増加したのか、患者の背景因子によって感染リスクが増加したのか(グルココルチコイドを使用しなければならない背景など)、その他の要因が関連しているのか不明ということです。さらに、グルココルチコイドの使用日数のカットオフ値も不明です。

一方、理論的にも、本後向きコホート研究の結果においてもグルココルチコイド使用による感染リスクの増加はありそうです。RAの増悪時に短期間のグルココルチコイド使用が良いのかもしれませんが、あくまでも推論に過ぎません。今後の検討結果を待ちたい。

✅まとめ✅ 安定したDMARD療法を受けているRA患者において、ルココルチコイドは用量依存的に重篤な感染症のリスクを増加させるかもしれない

コメント

タイトルとURLをコピーしました