【批判的吟味】心不全患者の心血管および腎関連アウトカムに対するSGLT-2阻害薬 エンパグリフロジンの効果はどのくらいですか?(DB-RCT; EMPEROR-reduced trial; NEJM 2020)

2型糖尿病 Type 2 diabetes mellitus T2DM diabetic

Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure

Milton Packer et al.

N Engl J Med. 2020 Aug 29. doi: 10.1056/NEJMoa2022190. Online ahead of print.

PMID: 32865377

DOI: 10.1056/NEJMoa2022190

試験概要

概要図

論文の抄録

抄録については過去の記事をご参照ください

PICOTSL

  • Patients  :左室駆出率が40%以下の慢性心不全(NYHA II、III、またはIV)患者 3,730例
  • すべての患者は、利尿薬、レニン-アンジオテンシン系およびネプリリジン系の阻害薬、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、および必要に応じて心臓装置を含む心不全に対する適切な治療を受けていた。
  • Intervention:標準治療へのエンパグリフロジン(10mg/日)追加 1,863例
  • Comparison:標準治療へのプラセボ追加 1,867例
  • Outcome  :心血管死または心不全による入院の複合(最初のイベントまでの時間)
  • Type    :治療・予後、DB-RCT
  • Setting   :20ヵ国の520施設、追跡期間:中央値 16ヵ月
  • Limitation :複合アウトカム、ソフトアウトカムが含まれている。喫煙に関するデータがない。

選択基準

主要組入基準

  1. スクリーニング時の年齢≧18歳(日本のみ年齢≧20歳)
  2. 男性または女性。妊娠可能な女性は、ICH M3(R2)に基づく非常に効果的な避妊方法で、一貫して適正に使用されている場合には、年間の避妊失敗率が1%未満であることが必要である。
  3. 慢性心不全と診断された患者で、訪問1日前に少なくとも3ヶ月間診断され、現在NYHA機能クラスII、IIIまたはIVの状態にある患者
  4. 左室駆出率(LVEF)が低下している慢性心不全で、局所的な読影値(心エコー、放射性心室造影、侵襲的血管造影、MRI、または CT により安定した状態で得られた LVEF が 40%以下と定義されるもの)。LVEFは、1回目の試験開始前6ヶ月以内に測定されたものであれば履歴値を用いてもよいし、試験の同意を得た後に測定してもよい。LVEFはランダム化前に公式報告書に記載されていた。
  5. EFによる分類
    1. EF36%以上40%未満の場合:心房細動なしの患者で来院1回目≧2500pg/mlのNT-proBNP上昇、又は心房細動ありの患者で5000pg/ml以上のNT-proBNP上昇、 中央検査室で分析
    2. EF31%以上35%未満の場合:心房細動なしの患者で来院1回目≧1000pg/mlのNT-proBNP上昇、又は心房細動ありの患者で2000pg/ml以上のNT-proBNP上昇、 中央検査室で分析、
    3. EF≦30%の場合:心房細動なしの患者では来院時 NT-proBNP上昇 1 ≧600pg/ml、または心房細動ありの患者では≧1200pg/ml、中央検査室で分析
    4. EF≦40%で心不全による入院が記録されている場合、来院時 NT-proBNP上昇≧600pg/ml、心房細動なしの患者では≧600pg/ml、心房細動ありの患者では≧1200pg/ml、中央検査室で分析。
  6. 心不全に対する薬物療法(ACEi、ARB、β遮断薬、経口利尿薬、MRA、ARNI、イブラジンなど)の適切な投与量は、一般的な国内及び国際的なガイドラインに沿ったものであり、訪問1(スクリーニング訪問)の少なくとも1週間前から訪問2(ランダム化訪問)までのスクリーニング期間中は安定していること。 利尿薬の投与量は、2 回目の訪問の 1 週間前から安定していなければならない。治験責任医師は、患者がローカルガイドラインに従って目標用量を投与されていない理由を文書化しなければならない。
  7. 除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)などの医療機器を国内または国際的なガイドラインに沿って適切に使用すること(除外項目#29も参照のこと
  8. 訪問1(スクリーニング訪問)における体格指数(BMI)<45kg/m2
  9. 臨床試験への参加に先立ち、臨床試験実施基準(GCP)および現地規制に基づいたICF(インフォームドコンセント)に署名、日付を記入。

主要除外基準

  1. 心不全とは無関係に、患者の臨床経過の予測不能性を増大させる、または患者の臨床経過を変化させる心血管疾患または治療法
  2. 心筋梗塞(虚血の症状または新たな虚血性心電図変化を伴う心臓酵素の増加)、冠動脈バイパスグラフト手術、またはその他の主要な心臓血管系手術、過去90日以内の脳卒中または一過性の虚血性発作)、心筋梗塞(虚血の症状または新たな虚血性心電図変化を伴う心臓酵素の増加)、冠動脈バイパスグラフト手術、またはその他の主要な心臓血管系手術、脳卒中または一過性の虚血性発作
  3. 心臓移植を受けている患者、または心臓移植の対象となっている患者。現在、左室補助装置を植え込んでいる
  4. 浸潤性疾患(例:アミロイドーシス)、蓄積性疾患(例:ヘモクロマトーシス、ファブリー病)、筋ジストロフィー、可逆性の原因を持つ心筋症(例:ストレス性心筋症)、肥大性閉塞性心筋症、または既知の心膜拘縮に基づく心筋症
  5. 12ヶ月以内に化学療法により誘発された周産期心筋症または心筋症と診断
  6. 試験期間中に手術が必要と思われる重度の(閉塞性または逆流性の)心臓弁膜症があった場合
  7. スクリーニング後 1 週間以内およびランダム化前のスクリーニング期間中に、静脈内利尿剤、血管拡張剤、強心剤、機械的サポートを必要とする急性の除細動性心不全
  8. 心不全の経過または治験薬の忍容性に影響を及ぼす可能性のある心血管系の未治療または未治療の状態
  9. 安静時の心拍数が110bpmを超える心房細動または心房粗動、スクリーニング時の心電図で判明
  10. スクリーニング前3ヶ月以内にICDを持たない入院患者における失神を伴う未治療の心室性不整脈
  11. 適切な場合には、β遮断薬治療の調整後、ペースメーカーを使用せずに無症候性徐脈または第2度、第3度の心ブロックを認める
  12. ランダム化時の収縮期血圧≧180mmHg。収縮期血圧が151~179mmHgの場合は、3種類以上の降圧剤を投与
  13. スクリーニング時またはランダム化時に無症候性の低血圧および/または収縮期血圧が100mmHg未満であること
  14. 心不全とは無関係に、臨床経過に影響を及ぼす可能性のある重大な併存疾患
  15. 在宅酸素療法、経口コルチコステロイド療法、または12ヶ月以内の増悪のための入院を必要とする慢性肺疾患、重篤な慢性肺疾患、または原発性肺動脈性高血圧症
  16. スクリーニング時のトランスアミナーゼまたはアルカリホスファターゼの血清値が正常値の上限の 3 倍以上で定義される急性または慢性の肝疾患
  17. 腎機能が低下しており、eGFR<20mL/min/1.73m2(CKD-EPI)、またはスクリーニング時に透析を必要としていると定義
  18. スクリーニング時のヘモグロビン<9g/dL
  19. 主な手術(治験責任医師の評価による大手術)は、スクリーニング前90日以内に行われたもの、またはスクリーニング後90日以内に予定されている主な選択手術(例:人工股関節置換術)
  20. 試験薬の吸収に支障をきたす可能性のある消化管手術または消化器疾患
  21. ただし、適切に治療された皮膚基底細胞がん、子宮頸部内がん、低リスク前立腺がん(治療前のPSA<10 ng/mL、生検グリソンスコアが6以下、臨床病期がT1cまたはT2aの患者)は除く)
  22. 心不全以外の疾患で余命1年未満のものがある場合(治験責任医師の見解
  23. 患者の安全を脅かしたり、患者の試験への参加を制限したり、試験データの解釈を損なう可能性のある状態
  24. SGLT2 阻害剤または SGLT1 と SGLT2 の併用阻害剤をスクリーニングまたはランダム化前の 12 週間以内に現在使用しているか、または過去に使用したことがあること ・SGLT2 阻害剤または SGLT1 と SGLT2 の併用阻害剤をスクリーニングまたはランダム化前の 12 週間以内に使用したことがあること ・SGLT2 阻害剤または SGLT1 と SGLT2 の併用阻害剤をスクリーニングまたはランダム化前の 12 週間以内に使用したことがあること
  25. SGLT2 阻害剤または SGLT1 と SGLT2 の併用阻害剤をスクリーニングまたはランダム化前の 12 週間以内に使用したことがあること
  26. SGLT2 阻害剤または SGLT1 と SGLT2 の併用阻害剤をスクリーニングまたはランダム化前の 12 週間以内に使用したことがあることがあること
  27. SGLT2 阻害剤または SGLT1 /SGLT2 阻害剤の研究登録目的での中止は許可されない
  28. SGLT2阻害剤に対する既知のアレルギーまたは過敏症
  29. ケトアシドーシスの歴史
  30. 試験の安全な実施に支障をきたす可能性があると考えられる薬剤や制限された薬剤の摂取を継続しなければならない患者、または継続を希望する患者
  31. 現在、他の治験薬または治験薬の試験に登録されている方、または他の治験薬または治験薬の試験終了後30日以内の場合。本試験の治験薬以外の治験薬治療を受けている場合
  32. 慢性的なアルコールまたは薬物の乱用、または治験責任医師の見解では、患者が試験の要件を満たすことができない、または試験を完了することができないと思われる状態
  33. 試験中に妊娠している方、授乳中の方、妊娠を予定している方
  34. この試験への参加中に患者の安全性が損なわれるか、または被験者が試験プロトコールを遵守することができなくなる可能性のあるその他の臨床状態

患者背景(一部抜粋)

                    エンパグリフロジン群 / プラセボ群(means±SDなど)

  • 年齢                  :67.2±10.8歳 / 66.5±11.2歳
  • 男性率                 :76.5% / 75.6%
  • NYHA分類               :Ⅱ_75.1% / 75.0% Ⅲ_24.4% / 24.4% Ⅳ_0.5% / 0.6%
  • BMI                  :28.0±5.5 / 27.8±5.3
  • 収縮期血圧               :122.6±15.9mmHg / 121.4±15.4mmHg
  • 左心駆出率               :27.7±6.0(≦30%:71.8%) / 27.2±6.1(74.6%)
  • NT-proBNP              :1,887pg/mL(≧1,000pg/mL:78.6%) / 1,926pg/mL(79.7%)
  • 心血管既往               
    • 12ヵ月未満の心不全による入院   :31.0% / 30.7%
    • 心房細動             :35.6% / 37.8%
    • 糖尿病              :49.8% / 49.8%
    • 高血圧              :72.4% / 72.3%
  • eGFR                 :61.8±21.7mL/min/1.73m2 / 62.2±21.5
  • 心不全治療薬の使用
    • レニン – アンギオテンシン阻害薬
      • (-)ネプリライシン阻害薬  :70.5% / 68.9%
      • (+)ネプリライシン阻害薬 :18.3% / 20.7%
    • ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬:70.1% / 72.6%
    • β遮断薬             :94.7% / 94.7%
  • 植え込み型心室細動器         :31.0% / 31.8%

DAPA-HFに参加した患者特徴との比較

https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa2022190/suppl_file/nejmoa2022190_appendix.pdf

批判的吟味

ランダム化されているか? ⭕️

ランダム化は隠蔽化(concealment)されているか? ⭕️ 中央割付(IRS)であるためコンシールメントされていると判断

マスキング(盲検化)されているか? ⭕️ 患者、医師、アウトカム判定者

ベースラインは同等か? ⭕️ 同等と判断

検討された調整因子は網羅されているか? 🔺 喫煙歴や心不全による入院回数などを含めても良い気がします

ITT解析か? ⭕️

脱落はどのくらいか?

 両群同程度と判断(Figure S1)

  • 非致死的イベント:158例 / 167例
  • 患者希望    :92例 / 124例
  • その他     :53例 / 44例

https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa2022190/suppl_file/nejmoa2022190_appendix.pdf

症例数は充分か? ⭕️ 3,600例以上と充分。検出力 =90%、両側αレベル =0.05

結果は?

プライマリー複合アウトカム

エンパグリフロジン:19.4%(361/1,863例、15.8イベント/100患者・年)

プラセボ     :24.7%(462/1,867例、21.0イベント/100患者・年)

ハザード比:0.75(95%CI 0.65〜0.86)、P<0.001

群間差:5.3%、NNT =19追跡期間:中央値 16ヵ月、最大810日間)

副次評価項目

心不全による入院

エンパグリフロジン:13.2%(246/1,863例、10.7イベント/100患者・年)

プラセボ     :18.3%(342/1,867例、15.5イベント/100患者・年)

ハザード比:0.69(95%CI 0.59〜0.81

群間差:5.1%、NNT =20

心血管死

エンパグリフロジン:10.0%(187/1,863例、7.6イベント/100患者・年)

プラセボ     :10.8%(202/1,867例、8.1イベント/100患者・年)

ハザード比:0.92(95%CI 0.75〜1.12)

群間差:0.8%、NNT =125

eGFRの変化の傾き

エンパグリフロジン:-0.55±0.23 mL/min/1.73m2/年

プラセボ     :-2.28±0.23 mL/min/1.73m2/年

複合腎アウトカム

エンパグリフロジン:1.6%(30/1,863例、1.6イベント/100患者・年)

プラセボ     :3.1%(58/1,867例、3.1イベント/100患者・年)

※複合腎アウトカムには、慢性透析または腎移植、eGFRの40%以上の低下、ベースラインのeGFRが30mL/min/1.73㎡の患者において、15mL/min/1.73㎡/未満の持続的なeGFRを示した場合、ベースラインのeGFRが30mL/min/1.73㎡未満では、10mL/min/1.73㎡未満の持続的な低下が含まれた。

全死亡

エンパグリフロジン:13.4%(249/1,863例、10.1イベント/100患者・年)

プラセボ     :14.2%(266/1,867例、10.7イベント/100患者・年)

・有害事象は?

             エンパグリフロジン群 / プラセボ群


✅まとめ✅ 左室駆出率が40%以下の慢性心不全患者に対する標準治療へのエンパグリフロジン10mg追加は、プラセボの追加と比較して、複合アウトカムを有意に低下させたが、その大半の効果は心不全による入院を減少させることに起因しているようである

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