Cardiovascular and Bleeding Risks Associated With Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs After Myocardial Infarction
Dong Oh Kang et al.
J Am Coll Cardiol. 2020 Aug 4;76(5):518-529. doi: 10.1016/j.jacc.2020.06.017.
PMID: 32731930
DOI: 10.1016/j.jacc.2020.06.017
Keywords: antithrombotic therapy; celecoxib; meloxicam; myocardial infarction; nonsteroidal anti-inflammatory drugs; safety.
背景
心筋梗塞(MI)後に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用した場合の臨床上の有害事象のリスクについては、限られたデータしか得られていない。
目的
本研究の目的は、MI患者における抗血栓薬およびNSAIDsのサブタイプ別に、心血管イベントおよび出血イベントのリスクを検討することであった。
方法
本研究は、2009年から2013年の間に韓国の健康保険審査評価サービスのデータベースから研究集団を登録する全国コホート研究であった。
患者は処方された抗血栓薬に基づいてグループに分けられた。
主要アウトカムおよび副次的アウトカムは、血栓塞栓性心血管系イベントと臨床的に関連する出血イベントであった。
臨床的に有害なイベントのリスクは、進行中のNSAIDs治療とNSAIDsのサブタイプによって評価した。
結果
・初回にMIと診断された108,232例(平均年齢 64.2±12.8歳、男性 72.1%、平均追跡期間 2.3±1.8年)が登録された。
・NSAIDs治療の併用は、NSAIDs治療なしに比べて心血管イベント(ハザード比[HR]:6.96、95%信頼区間[CI] 6.24~6.77;p<0.001)および出血イベント(HR 4.08、95%CI 3.51~4.73;p<0.001)のリスクを有意に増加させた。
・NSAIDサブタイプのうち、心血管イベントおよび出血イベントのリスクは、セレコキシブ使用群(HR 4.65、95%CI:3.17~6.82;p<0.001、HR 3.44、95%CI 2.20~5.39;p<0.001)およびメロキシカム使用群(HR 3.03、95%CI 1.68~5.47;p<0.001、HR 2.80、95%CI 1.40~5.60;p<0.001)で最も低かった。
結論
NSAIDs治療の併用は、MI後の心血管イベントおよび出血イベントのリスクを有意に増加させた。
心筋梗塞後のNSAIDs治療は避けるべきであるが、NSAIDs使用が避けられない症例では、セレコキシブとメロキシカムが代替選択肢として検討される可能性がある。
コメント
NSAIDs使用による心血管リスク増加の報告があります。特にCOX-2選択的阻害薬であるロフェコキシブ(日本未承認、米国では2004年に販売中止)は、プラセボに対する有意なリスク増加、そして同薬剤クラスの高用量セレコキシブについてもリスク増加が報告されています。しかし、非選択的COX阻害薬(ジクロフェナクなど)についても、COX-2選択的阻害薬と同様に心血管リスク増加の可能性が報告されています。
またNSAIDsは、抗血小板薬や抗凝固薬との相互作用が度々問題となります。
さて、本試験結果によれば、心筋梗塞後の抗血栓薬とNSAIDsの併用は、NSAIDsを併用しない場合と比較して、心血管・出血リスクの増加と有意に関連していました。NSAIDsの中では、セレコキシブあるいはメロキシカム使用群でリスクが最小だったようです。
ただし、いずれも仮説生成的な結果です。とはいえ、これまでの研究結果から、心血管リスクが高い患者群における抗血栓薬およびNSAIDs併用は、心血管・出血イベント発生リスクを増加させることは間違いなさそうです。
NSAIDsを使用しないに越したことはありませんが、使用しなければならないケースもあります。その際に、どのような患者で、どのくらい心血管・出血リスクがあるのか、また併用薬を考慮し、どの薬剤を選択した方が良いのか、これらについて考察することが肝要であると考えます。
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