Effect of Aspirin vs Placebo on the Prevention of Depression in Older People: A Randomized Clinical Trial
Michael Berk et al.
JAMA Psychiatry. 2020 Jun 3;e201214. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2020.1214. Online ahead of print.
PMID: 32492080
PMCID: PMC7271558 (available on 2021-06-03)
DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2020.1214
Trial registration: ClinicalTrials.gov Identifier: NCT01038583.
試験の重要性
うつ病は炎症の亢進と関連しており、特に高齢者では発症に先行する可能性がある。
アスピリンの抗うつ効果を示唆する前臨床データもあるが、アスピリンで治療された患者ではうつ病の発症率が低いことを示唆する限られた観察データに裏付けられている。
現在のところ、うつ病の一次予防のためのエビデンスに基づく薬物療法はないようである。
目的
低用量アスピリン(100mg)が健康な高齢者におけるうつ病のリスクを減少させるかどうかを判断する。
試験デザイン、設定、参加者
この二重盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験は、Aspirin in Reducing Events in the Elderly(ASPREE)試験のサブスタディであり、アスピリンが認知症や障害のない生存期間と定義される健康寿命を延長するかどうかを検討した。
副次的転帰はうつ病であった。オーストラリアでは70歳以上のすべての人種/民族、米国では70歳以上の白人、65歳以上の黒人およびヒスパニックが対象となった。
介入
参加者はアスピリン(100mg/日)またはプラセボにランダム割り付けされ、追跡期間中央値(四分位間範囲)は4.7年(3.5~5.6年)であった。
主要アウトカムと測定法
主要アウトカムは、Center for Epidemiologic Studies Depression 10-item(CES-D-10)スケールで8点以上と定義された大うつ病性障害の代理指標であった。
結果
・試験に登録された参加者19,114例のうち、9,525例がアスピリンを投与され、9,589例がプラセボを投与された。
・平均年齢(SD)はアスピリン群で75.2歳(4.0歳)、プラセボ群で75.1歳(4.5歳)、女性は9,531例(56.4%)であった。参加者の人口統計学的特徴とベースライン時の臨床的特徴は両群間で類似していた。
・年間合計79,886回のCES-D-10測定が行われ、参加者1例あたりの平均測定数は4.2回であった。年次訪問時のCES-D-10スコアが8以上の割合には、アスピリン群とプラセボ群の間に有意差はなかった。
・新たなCES-D-10スコアが8以上のイベントの発生率は、アスピリン群で70.4件/1,000人・年、プラセボ群で69.1件/1,000人・年であった。
★ハザード比=1.02、95%CI 0.96~1.08;P=0.54
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結論および関連性
低用量アスピリンは、健康な高齢者を対象としたこの大規模研究において、うつ病の予防にはならなかった。
コメント
低用量アスピリンには様々な効果があり、その1つに抑うつ作用の可能性が報告されています。
さて、本試験結果によれば、大規模な高齢者コホートにおいて、低用量アスピリン使用は、プラセボと比較して、大うつ病性障害の発症を予防しませんでした。
ただし、本試験は、あくまでもサブ解析であるため、仮説生成的な結果です。また設定されたアウトカムは大うつ病性障害の代理的指標であるCES-D-10スケール8点以上です。したがって、大うつ病性障害以外への うつ病を抑制できるのかは不明です。
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