Comparison of Outcome Adjudication by Investigators and by a Central Endpoint Committee in Heart Failure Trials: Experience of the SHIFT Heart Failure Study
Benoît Tyl et al.
Circ Heart Fail. 2020 Jun 25; CIRCHEARTFAILURE119006720. doi: 10.1161/CIRCHEARTFAILURE.119.006720. Online ahead of print.
PMID: 32580655
DOI: 10.1161/CIRCHEARTFAILURE.119.006720
Registration: URL: https://www.clinicaltrials.gov; Unique identifier: NCT02441218. URL: http://www.isrctn.com/ISRCTN70429960; Unique identifier: ISRCTN70429960.
Keywords: cardiovascular disease; heart failure; hospitalization; ivabradine.
背景
心不全(HF)試験では、中央エンドポイント委員会(CEC)による判定の有用性はあまり評価されていない。我々は、SHIFT試験(Systolic HF Treatment With the If Inhibitor Ivabradine Trial)のアウトカムへの影響を評価することを目的とした。
方法
SHIFT試験は、駆出率が低下した収縮期HF患者6,505例を対象に、イブラジンの効果を検討するランダム化プラセボ対照試験であった。
研究者(全循環器内科医)が特定の症例報告書を用いて報告したエンドポイントには、全死因および特定の死亡原因と入院が含まれていた。
主要エンドポイントは、心血管疾患による死亡またはHFの悪化による入院の複合であった。
事前に指定されたエンドポイントの判定について、治験責任医師による判定とCECによる判定を比較した。
結果
・7529例のエンドポイントが同定され、そのうち6793例がCECで確認された。心血管系死亡が98.1%、全入院が88.6%、HF悪化による入院が84.4%であった。
・これらの違いは試験結果に有意な影響を与えなかった。
・主要複合エンドポイントのハザード比:治験責任医師 0.83(95%CI 0.76〜0.91)vs. CEC 0.82(95%CI 0.75〜0.90)であり、主要複合エンドポイントの各構成要素についても同様の結果が得られた。
★心血管系死亡のハザード比:0.92 vs. 0.91
★HF悪化の入院のハザード比:0.78 vs. 0.74
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結論
SHIFT試験におけるCECによる中央判定は、循環器専門医が評価した心血管死亡とHF悪化の入院のほとんどを確認したが、最終的な結果は治験責任医師の判定と比較して有意な変化をもたらさなかった。このような背景から、盲検化されたHF試験におけるCECの有用性は再考されるべきである。
コメント
中央エンドポイント委員会(CEC)による中央判定は、盲検化試験において重要な役割を担っています。特にソフトエンドポイントの判定においては、バイアスが入り込みやすいため、第三者機関によるエンドポイント判定が必須です。
さて、今回の試験結果によれば、心不全患者を対象としたSHIFT試験において、主要エンドポイント(心血管疾患による死亡またはHFの悪化による入院の複合)および各構成要素のCECによる中央判定、循環器専門医による中央判定に差は認められませんでした。
ここからは推測になりますが、今回の結果から2つの可能性が得られます。
1つ目は、そもそも盲検化の効果がない(限りなく小さい)可能性です。事実、近年の研究報告において盲検化の効果はない可能性が報告されています(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31964641/)。
そして2つ目は、CECによる中央判定が機能していなかった可能性です。ハードエンドポイントに差がないことは明白であり、ここに疑問の余地はありません。一方、ソフトエンドポイントにおいては、前述の通りバイアスが入り込みやすく、したがって、介入者による判定とCECによる判定に差が認められることが一般的です。しかし、今回の研究結果では、差が認められていません。多施設共同、サンプルサイズの観点から違和感が残ります。
改めてSHIFT試験を読んでみようと思います。
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