心不全のない急性心筋梗塞患者におけるβ遮断薬の効果はどのくらいですか?(韓国 人口ベース コホート研究; Eur Heart J. 2020)

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Long-term β-blocker Therapy and Clinical Outcomes After Acute Myocardial Infarction in Patients Without Heart Failure: Nationwide Cohort Study

Jihoon Kim et al.

Eur Heart J. 2020 Jun 15;ehaa376. doi: 10.1093/eurheartj/ehaa376. Online ahead of print.

PMID: 32542362

DOI: 10.1093/eurheartj/ehaa376

目的

急性心筋梗塞(AMI)後の心不全(HF)を伴わない患者におけるβ遮断薬の長期投与と臨床転帰との関連を検討する。

方法

2010年から2015年の間に、退院時にβ遮断薬を処方されたAMIに対する冠動脈血行再建術を受け、死亡、心筋梗塞(MI)再発、HFが1年間イベントフリーであった患者28,970例が、韓国の全国医療保険データから登録された。

主要アウトカムは全死亡であった。

副次的アウトカムは、MI再発、新規HFによる入院、および複合アウトカム(全死亡、MIの再発、新規HFによる入院)であった。

結果

・MIインデックスから1年後におけるランドマーク解析を用いて、1年以上のβ遮断薬治療(N = 22,707)と1年未満のβ遮断薬治療(N = 6,263)の間でアウトカムを比較した。

・1年未満のβ遮断薬治療を受けた患者と比較して、1年以上β遮断薬治療を受けた患者では、全死亡のリスク(調整後ハザード比(HR)=0.81、95%信頼区間(CI)0.72〜0.91)および全死亡、MI再発、新規HFによる入院の複合リスク(調整後HR =0.82、95%CI 0.75〜0.89)は有意に低かったが、MI再発および新規HFによる入院リスクは低かった。

・β遮断薬の持続投与に関連した全死亡リスクの低下は、MI後2年を超えて観察された(修正HR =0.86;95%CI 0.75〜0.99)が、3年を超えては観察されなかった(修正HR =0.87、95%CI 0.73〜1.03)。

結論

この全国規模のコホートにおいて、心筋梗塞後1年以上のβ遮断薬治療は、HFを伴わないAMI患者における全死亡の減少と関連していた。

コメント

心不全を伴わない急性心筋梗塞(AMI)患者におけるβ遮断薬の効果は明らかとなっていません。

さて、今回の研究結果によれば、心不全を有さない、かつ冠動脈血行再建術を受けたAMI患者において、β遮断薬の1年以上の使用は、全死亡および複合アウトカム(全死亡、MI再発、新規HFによる入院)のリスクを低下させました。

 全死亡リスク:調整後ハザード比(HR)=0.81、95%信頼区間(CI)0.72〜0.91

 全死亡、MI再発、新規HFによる入院の複合リスク:調整後HR =0.82、95%CI 0.75〜0.89

一方で、MI再発および新規HFによる入院リスクは低下させませんでした。全死亡の内訳が気になるところです。またAMI後、3年を超えるリスク低下は認められていません。解釈が難しいところですが、AMI後に冠動脈血行再建術を受けた患者においては、1年超のβ遮断薬使用を考慮しても良いかもしれません。

ただし、本研究はコホート研究であるため、あくまでも仮説生成的な結果であることには注意が必要です。そもそもβ遮断薬を使用した方が良い患者で死亡リスクが低下していた可能性もあります。

また今回のようなケースに使用できるのは、アテノロール、ビソプロロール、ニプラジロールでしょうか。保険適応にするためには、症状名として狭心症を記載する必要がありそうですね。

続報を待ちたい。

✅まとめ✅ 心不全を有さない冠動脈血行再建術を受けたAMI患者における1年以上のβ遮断薬の使用は、全死亡リスクを2〜3年ほど低下させるかもしれない

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