Pitolisant for Daytime Sleepiness in Patients With Obstructive Sleep Apnea Who Refuse Continuous Positive Airway Pressure Treatment. A Randomized Trial
Yves Dauvilliers et al.
Am J Respir Crit Care Med. 2020 May 1;201(9):1135-1145. doi: 10.1164/rccm.201907-1284OC.
PMID: 31917607
PMCID: PMC7193861
DOI: 10.1164/rccm.201907-1284OC
Keywords: continuous positive airway pressure; excessive daytime sleepiness; obstructive sleep apnea; pitolisant.
背景
過度の昼間の眠気は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群によくみられる障害症状である。
目的
継続的な陽圧治療(continuous positive airway pressure, CPAP)を拒否した中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome, OSAS)患者における日中の眠気に対する覚醒促進作用を有する選択的ヒスタミンH3受容体拮抗薬であるpitolisantの有効性と安全性を検討する。
方法
多施設共同、二重盲検、ランダム化(3:1)、プラセボ対照、並行デザインの国際共同試験において、Pitolisant(ピトリサント)の用量を最大 20 mg/d、12 週間かけて個別に漸増した。
主要エンドポイントは、Epworth Sleepiness Scaleスコアの変化であった。
主要な副次評価項目は、Oxford Sleep Resistanceテストに基づいて評価された覚醒度の維持、安全性、重症度のClinical Global Impression、患者さんのグローバルな意見、EuroQol quality-of-life questionnaire、Pichot fatigue questionnaireでした。
主な結果
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者268例(男性75%、平均年齢52歳、無呼吸・低呼吸指数49/h、ベースライン眠気スコア15.7)がランダムに割り付けられ(ピトリサント:200例、プラセボ:68例)、intention-to-treatベースで解析された。
・Epworth Sleepiness Scaleスコアは、プラセボ群よりもピトリサント群の方がより低下した。
★Epworth Sleepiness Scaleスコア = -2.8、95%信頼区間 -4.0~ -1.5;P < 0.001
—
・覚醒度維持テスト(Oxford Sleep Resistanceテスト)では改善がみられなかった。
・Pichot fatigue questionnaireにおいては、プラセボ群よりもピトリサント群で低下した。
・ピトリサントの全体的な影響は、医師と患者の両方のアンケートで確認された。
・有害事象の発生率は、主に頭痛、不眠、吐き気、めまいで、ピトリサント群とプラセボ群で同程度(ピトリサント群:29.5%、プラセボ群:25.4%)であり、心血管系やその他の重大な安全性の懸念は認められなかった。
結論
ピトリサントは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)で持続陽圧(CPAP)を拒否している、またはCPAPアドヒアランス不良の日中の眠気を訴える患者において、自己報告された日中の眠気と疲労を有意に減少させ、患者報告されたアウトカムと医師による重症度評価を改善した。
コメント
ヒスタミン受容体は、肥満、注意欠陥多動性障害、アルツハイマー病、統合失調症、心筋虚血、片頭痛、炎症性疾患などに関与しており、これらの治療薬として、多くの製薬会社の関心を集めてきたようです(Leurs R et al. Nat Rev Drug Discov. 2005 Feb;4(2):107-20.)。ヒスタミン受容体は全部で4つあるようです。恥ずかしながら知りませんでした。
主にH1受容体はアレルギー、H2受容体は胃酸分泌に関与しています。一方、H3受容体は、ヒスタミン神経終末部のシナプス前膜に存在し、ヒスタミンの合成および遊離を抑制するようです。また、他の神経系のシナプス前膜にも存在し、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン、グルタミン酸、GABAの遊離を抑制します。作用として注目されているのは覚醒抑制作用であり、したがってH3受容体の作用を抑えることで、覚醒促進作用が期待できます。
さて、本試験結果によれば、CPAPが持続できないOSAS患者において、H3受容体拮抗薬であるPitolisant(ピトリサント)により、プラセボと比較して、日中の眠気症状を有意に改善しました(-2.8、95%信頼区間 -4.0~ -1.5;P < 0.001)。
Epworth Sleepiness Scale(ESS)スコアのMCIDは、過去に報告されており、OSAS患者99例の解析において-2 〜 -3でした(Patel S et al. The Epworth Sleepiness Scale: Minimum Clinically Important Difference in Obstructive Sleep Apnea. Am J Respir Crit Care Med. 2018. PMID: 28961021)。
以上の情報から、本試験結果で認められたピトリサントの効果は、実臨床でも有益そう。日本での承認申請はまだまだ先であると思いますが、注目していきたい薬剤です。
コメント