フォーミュラリーとは?(Am J Health Syst Pharm. 2008)

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ASHP guidelines on the pharmacy and therapeutics committee and the formulary system.

Tyler LS, et al.

Am J Health Syst Pharm. 2008.

PMID: 18589893

Formularyの定義

“A formulary is a continually up-dated list of medications and related information, representing the clinical judgment of physicians, pharmacists, and other experts in the diagno- sis, prophylaxis, or treatment of disease and promotion of health. A formulary includes, but is not limited to, a list of medications and medication-associated products or devices, medication-use policies, important ancillary drug information, decision-support tools, and organizational guidelines.”

フォーミュラリーとは、常に最新の薬と関連情報のリストであり、医師、薬剤師、および病気の診断、予防、または治療および健康増進における他の専門家の臨床判断を表す。処方には、薬物および薬物関連製品またはデバイスのリスト、薬物使用ポリシー、重要な補助薬情報、意思決定支援ツール、および組織ガイドラインが含まれるが、これらに限定されない。


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✅まとめ✅ フォーミュラリーとは「有効性、安全性および経済性を考慮した医薬品の使用指針」

【コメント】

海外では費用対効果検証(指標:QALYを用いたICER算出など)の結果をもとにフォーミュラリーを作成するのが主流のようです。

フォーミュラリーについて、よく誤って認識されていることは、①医師の処方権を侵害する、②経済性(価格あるいは薬価)のみで評価する、③特定の製薬メーカーの製品を推奨する、以上の3点でしょうか。

ちなみに日本におけるフォーミュラリーの定義は今のところありません。強いてあげるならば、聖マリアンナ医科大学病院の院内フォーミュラリーの定義がこれに当たるかもしれません。

“院内フォーミュラリーとは、有効性、安全性および経済性を考慮した医薬品の使用指針です。”

聖マリアンナ医科大学病院・薬剤部のページより引用;
https://www.marianna-u.ac.jp/hospital/kanja/sinryou2/sinryou_02/

①医師の処方権を侵害する? について

まず大前提として、処方権を侵害することはありません。中医協でよく話題にあがっていますが、そもそも処方権とは何でしょうか。

これは医師法22条のことだと考えられます。

さて、アメリカにおける定義では、フォーミュラリーは様々な情報をもとに同薬効群についての “医薬品の推奨” を策定したリストです。つまり絶対的に従う必要はそもそもないのです。

概念や目的としては、診療ガイドライン(Clinical Practice Guidelines, CGPs)に近く、CGPsが疾患や症状に対する診断、治療方針の決定に用いられるリストであるならば、フォーミュラリーは、治療に際して医薬品や医療機器を決定するためのリストに他なりません。

②経済性(価格あるいは薬価)のみで評価する? について

どんなに安くても効かない薬を推奨するのは困難です。他薬に比べて効果が優れている場合は、先発医薬品しかない薬剤でも推奨されます。ただし、効果が変わらず、かつある疾患に対して薬効に差がない場合、後発医薬品がある医薬品を推奨するのは当たり前だと思います。

③特定のメーカーの医薬品を推奨する? について

フォーミュラリーにおいて、基本的に医薬品は一般名表記です。薬価を計算する際に先発医薬品の商品名(後発品しか存在しなければ、一般名+屋号)は出てきますが、悪戯に特定の製薬メーカーの製品を推奨することはありません。したがって、特定のジェネリック医薬品を推奨することもありません。中立であることこそがフォーミュラリー作成の前提です。

【参考情報】

医師法

[処方せんの交付義務]

第22条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当っている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当っている者が処方せんを必要としない旨を申し出た場合及び次の各号の一に該当する場合においては、この限りでない。

  • 一 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
  • 二 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与えその疾病の治療を困難にするおそれがある場合
  • 三 疾病の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
  • 四 診断又は治療方法の決定していない場合
  • 五 治療上応急の措置として薬剤を投与する場合
  • 六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
  • 七 覚せい剤を投与する場合
  • 八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合

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