虚血性脳卒中患者におけるLDLコレステロール値の目標はどのくらいが良さそうですか?(Open-RCT; Treat Stroke to Target; NEJM 2019)
A Comparison of Two LDL Cholesterol Targets after Ischemic Stroke.
Amarenco P, et al.
N Engl J Med. 2019.
Funded by the French Ministry of Health and others
ClinicalTrials.gov number, NCT01252875.
PMID: 31738483
【背景】
一時的な虚血性発作(TIA)とアテローム性動脈硬化症による虚血性脳卒中後では、スタチン薬による集中的な脂質低下療法の使用が推奨されている。
しかし脳卒中後の心血管イベントを減らすための低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの目標レベルは十分に研究されていない。
【方法】
フランスと韓国で実施された本並行群間試験では、過去3ヶ月に虚血性脳卒中または過去15日以内にTIAを有する患者を、70 mg/dL(1.8 mmol/L、低ターゲット群)または90 mg〜110 mg/dL(2.3〜2.8 mmol/L、高ターゲット群)の2群にランダム割付した。
すべての患者は脳血管または冠動脈のアテローム性動脈硬化の証拠があり、スタチン、エゼチミブ、またはその両方による治療を受けた。
主要な心血管イベントの複合的主要エンドポイントには、虚血性脳卒中、心筋梗塞、緊急の冠動脈または頸動脈の血行再建につながる症状、または心血管の原因による死が含まれた。
【結果】
・合計2,860人の患者が登録され、中央値3.5年間追跡された。
・2,860人のうち1,430例は各LDLコレステロールのターゲット群に割り当てられた。
・ベースライン時の平均LDLコレステロール値は135 mg/dL(3.5mmol/L)であり、達成されたLDLコレステロールの平均値は、低ターゲット群で65 mg/dL(1.7mmol/L)および高ターゲット群で96 mg/dL(2.5mmol/L)だった。
・385のエンドポイントイベントが予想され、そのうち277が発生した後、試験は管理上の理由で停止された。
・複合プライマリエンドポイントは、低値ターゲット群の121人(8.5%)および高値ターゲット群の156人(10.9%)で発生した。
★調整ハザード比 =0.78; 95%信頼区間0.61〜0.98; P = 0.04、NNT =42
・頭蓋内出血と新たに診断された糖尿病の発生率は、2つのグループ間で有意差はなかった。
【結論】
虚血性脳卒中またはアテローム性動脈硬化の証拠を伴うTIAの後、70 mg/dL未満の目標LDLコレステロール値を有する患者は、90 mg〜110 mg/dLの目標範囲を有する患者よりもイベント後の心血管イベントリスクが低かった。
【コメント】
LDLコレステロール高値目標群では、低値目標群に比べて原因不明の脳卒中イベントが多い印象。イ
ベントの細かな定義が本文から読み取れないため、どんなイベントを不明としたのか分からなかった。
LDLコレステロール70mg/dLを治療目標とした群では、原因不明の突然死および非致死性の冠動脈症候群についても減らしている。
おそらくマスキングされていないが、血行再建術などソフトエンドポイントについては両群とも差がない。
しかし、過去の同様な臨床試験の結果とは相反する結果であると考えられる。虚血性と出血性で異なるのかもしれない。
また試験は早期中止されたため、結果を課題解釈する可能性が高い。
ただオープンRCTで、なんとなく怪しく思えてしまう試験。関連試験の結果も追っていきたい。
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