【私的背景】
イグザレルト®️(リバーロキサバン)を検討したPIONEER-AFやROCKET-AF等の過去の臨床試験結果において、ワーファリン®️(ワルファリン)と比べて、より新しい抗凝固薬であるDirect Oral AntiCoagulants(DOACs)の有益性が示唆されている。
だがいずれの試験も対照薬であるワルファリンに不利となるような因子がある。例えばPIONEER-AFでは患者背景にバラツキがあり、ワルファリン群に不利となる条件だった。またROCKET-AFでは、プロトロンビン時間国際標準比(Prothrombin Time-International Normalized Ratio, PT-INR)を測定する機器(Point-Of-Care Warfarin Monitoring)にリコールがあった。
しかしリコールと非リコールでのサブグループ解析でも結果は同じ、つまり問題はないとされた(BMJ)。
個人的にはサブグループ解析はあくまで仮説生成であり,結果に差があろうとなかろうと情報の信頼度は低いと考えている.本当にDOACsはワルファリンよりも優れていると結論付けて良いのか?この部分を明らかにしていくために本コホート研究を読んでみた。
ちなみにイグザレルト®️はバイエル薬品から発売されている。バイエル薬品といえば、過去に個人情報のコンプライアンス違反や副作用についての虚偽報告をした件があり、厚生労働省から改善指導がなされている(厚生労働省)。
そこで今回は、アピキサバン、ワルファリン、リバーロキサバンを比較検討したイギリス人口ベースコホート研究の結果をご紹介します。
【試験の目的】
直接経口抗凝固薬(DOAC)と出血のリスク、虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症との関連性を調査すること、そしてすべてがワルファリンと比較して死亡率を引き起こすこと。
【試験デザイン】
前向きオープンコホート研究
【試験の設定】
QResearchまたはClinical Practice Research Datalinkに貢献している英国の一般診療。
【試験参加者】
研究参加前12ヶ月間の抗凝固剤処方のない132,231人がワルファリン、7,744人がダビガトラン、37,863人がリバロキサバン、そして18,223人がアピキサバンの使用者だった。
【主要評価項目と測定】
サブグループ解析では、2011年から2016年の間に心房細動患者103,270人および心房細動のない患者92,791人に分類された。
重大な出血による入院または死亡。特定部位の出血および全死亡についても検討した。
【結果】
・心房細動患者におけるアピキサバン使用は、ワルファリンと比較して、大出血リスク(調整ハザード比 adjusted Hazard Ratio =0.66, 95%信頼区間 Confidence Interval 0.54〜0.79)および頭蓋内出血リスク(aHR =0.40, 95%CI 0.25〜0.64 )の減少と関連していた。
・リバーロキサバン服用患者(1.19, 1.09〜1.29)または低用量アピキサバン(1.27, 1.12〜1.45)により、全死亡リスク増加が観察された。
・心房細動のない患者におけるアピキサバン使用は、ワルファリンと比較し、大出血リスク(0.60, 0.46〜0.79)、全消化管出血リスク(0.55, 0.37〜0.83)、そして上部消化管出血リスク(0.55, 0.36〜0.83)低下と関連していた。
・リバーロキサバン使用は、頭蓋内出血リスク(0.54, 0.35〜0.82)低下と関連していた。
・リバーロキサバン使用(1.51, 1.38〜1.66)および低用量アピキサバン使用(1.34, 1.13〜1.58)により全死亡リスク増加が認められた。
【結論】
全体的にアピキサバンはワルファリンと比較して、重大な、頭蓋内、そして消化管出血のリスクが低く、最も安全な薬であることが明らかとなった。しかし、リバーロキサバンおよび低用量アピキサバンは、ワルファリンと比較し全死亡リスク増加と関連していた。
【コメント】
アブストのみ。
本解析結果によると、リスクベネフィットはアピキサバン > ワルファリン > リバーロキサバン or 低用量アピキサバンとのこと。
患者背景にもよりますが、少なくともワルファリンが劣っている訳ではなさそうですね。あくまで観察研究の結果ですが。
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