アトピー性皮膚炎に対して経口JAK1阻害薬が有効?
インターロイキン4およびインターロイキン13のシグナル伝達を低下させる経口ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害剤abrocitinib(アブロシチニブ)は、アトピー性皮膚炎の治療薬として検討されています。
すでにアトピー性皮膚炎に対して使用されているインターロイキン4受容体に対するモノクローナル抗体デュピルマブなどのバイオ製剤と、アブロシチニブの比較を行った試験データは限られています。
そこで今回は、外用剤に反応しない、または全身療法が必要なアトピー性皮膚炎患者を対象とし、デュピルマブやプラセボとアブロシチニブの有効性・安全性を比較した第3相二重盲検試験JADE COMPAREの結果をご紹介します。
試験結果から明らかになったことは?
外用剤に反応しない、または全身療法が必要なアトピー性皮膚炎患者は、2:2:2:1の割合で、アブロシチニブ200mgまたは100mg(1日1回経口投与)、デュピルマブ300mg(600mgのローディング後、隔週で皮下投与)、またはプラセボにランダムに割り付けられ、全患者に外用剤が使用されました。
合計838例の患者がランダム化を受け、アブロシチニブ200mg群に226例、アブロシチニブ100mg群に238例、デュピルマブ群に243例、プラセボ群に131例が割り付けられました。
アブロシチニブ 200mg群 | アブロシチニブ 100mg群 | デュピルマブ群 | プラセボ群 | |
12週目のIGA反応 | 48.4% (P<0.001 vs. プラセボ) | 36.6% | 36.5% | 14.0% |
12週目のEASI-75反応 | 70.3% (P<0.001 vs. プラセボ) | 58.7% (P<0.001 vs. プラセボ) | 58.1% | 27.1% |
12週目にIGA反応が認められたのは、アブロシチニブ200mg群で48.4%、アブロシチニブ100mg群で36.6%、デュピルマブ群で36.5%、プラセボ群で14.0%でした(P<0. 001)。
12週目のEASI-75反応は、それぞれ70.3%、58.7%、58.1%、27.1%に認められました(P<0.001、アブロシチニブ両投与量 vs. プラセボ)。
2週目の痒みに対する反応については、アブロシチニブ200mg群がデュピルマブ群よりも優れていました。16週目のその他の主要な副次的評価項目の比較では、いずれの用量もデュピルマブとの間に有意差は認められませんでした。
吐き気はアブロシチニブ200mg群で11.1%、アブロシチニブ100mg群で4.2%、ニキビはそれぞれ6.6%、2.9%に発現しました。
コメント
アトピー性皮膚炎に対するJAK阻害薬の開発が進んでいます。日本では、経口薬としてJAK1及びJAK2に選択性の高いバリシチニブ(オルミエント®️)、外用薬としてJAK非選択的なデルゴシチニブ(コレクチム®️)がアトピー性皮膚炎の適応承認を有しています。
JAKファミリーは、これまで4種類が報告されており、特にJAK1がアトピー性皮膚炎に強く関与している可能性が示されています。アブロシチニブはJAK1選択的阻害薬であることから、アトピー性皮膚炎に対する有効性に期待が寄せられています。
さて、JADE COMPARE試験の結果によれば、外用剤に反応しない、または全身療法が必要な中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者において、アブロシチニブはプラセボと比較して、12週目のIGA反応・EASI-75反応を有意に減少させました。一方、モノクローナル抗体であるデュピルマブとは差が認められませんでした。ただし、副次評価項目である2週目の痒みに対する反応は、デュピルマブよりもアブロシチニブ200mgが優れていました。
有害事象は、他のJAK阻害薬と類似しているようですが、抄録からは詳細不明です。また、より長期に使用した場合の安全性も不明です。
非常に有望な結果ではありますが、今後のエビデンス集積が待たれます。続報に期待。
✅まとめ✅ アブロシチニブ100mgまたは200mg用量 1日1回の投与は、12週目および16週目において、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の徴候および症状を、プラセボに比べて有意に減少させた。16週目のその他の主要な副次的評価項目については、いずれの用量もデュピルマブとの間に有意な差は認められなかった。
根拠となった試験の抄録
背景:インターロイキン4およびインターロイキン13のシグナル伝達を低下させる経口ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害剤abrocitinib(アブロシチニブ)は、アトピー性皮膚炎の治療薬として検討されている。JAK1阻害剤と、インターロイキン4受容体をブロックするデュピルマブなどのモノクローナル抗体との比較を行なった試験データは限られている。
方法:第3相二重盲検試験において、外用剤に反応しない、または全身療法が必要なアトピー性皮膚炎患者を、2:2:2:1の割合で、アブロシチニブ200mgまたは100mgを1日1回経口投与、デュピルマブ300mgを隔週で皮下投与(600mgのローディング後)、またはプラセボにランダムに割り付け、全患者に外用剤を投与した。
主要評価項目は、12週目のIGA(Investigator’s Global Assessment)反応(IGAのスコアが「0:クリア」または「1:ほぼクリア」で、ベースラインから2ポイント以上改善したと定義)と、EASI-75(Eczema Area and Severity Index-75)反応(EASIスコアがベースラインから75%以上改善したと定義)であった。主要な副次評価項目は、2週目の痒み反応(Peak Pruritus Numerical Rating Scaleのスコアが4ポイント以上改善したことと定義)、16週目のIGAとEASI-75の反応であった。
結果:合計838例の患者がランダム化を受け、アブロシチニブ200mg群に226例、アブロシチニブ100mg群に238例、デュピルマブ群に243例、プラセボ群に131例が割り付けられた。
12週目にIGA反応が認められたのは、アブロシチニブ200mg群で48.4%、アブロシチニブ100mg群で36.6%、デュピルマブ群で36.5%、プラセボ群で14.0%であった(P<0. 001)。
12週目のEASI-75反応は、それぞれ70.3%、58.7%、58.1%、27.1%に認められた(P<0.001、アブロシチニブ両投与量 vs. プラセボ)。
2週目の痒みに対する反応については、(100mgではなく)アブロシチニブ200mg群がデュピルマブ群よりも優れていた。16週目のその他の主要な副次的評価項目の比較では、いずれの用量もデュピルマブとの間に有意差は認められなかった。
吐き気はアブロシチニブ200mg群で11.1%、アブロシチニブ100mg群で4.2%、ニキビはそれぞれ6.6%、2.9%に発現した。
結論:本試験では、200mgまたは100mg用量を1日1回投与したアブロシチニブは、12週目および16週目において、中等度から重度のアトピー性皮膚炎の徴候および症状を、プラセボに比べて有意に減少させた。第2週目の痒みに対する反応については、200mg用量のアブロシチニブがデュピルマブよりも優れていた。また16週目のその他の主要な副次的評価項目については、いずれの用量もデュピルマブとの間に有意な差は認められなかった(資金提供:Pfizer社、JADE COMPARE、ClinicalTrials.gov番号:NCT03720470)。
引用文献
Abrocitinib versus Placebo or Dupilumab for Atopic Dermatitis
Thomas Bieber et al. PMID: 33761207 DOI: 10.1056/NEJMoa2019380
N Engl J Med. 2021 Mar 25;384(12):1101-1112. doi: 10.1056/NEJMoa2019380.
ー 続きを読む https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33761207/
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